経理や会社側担当者へ。従業員が退職した場合の書類や手続について解説|澁谷税理士事務所

所得税(国税)の話と、個人住民税(地方税)の話2つありますのでご留意下さい。

目次

「退職所得」の定義

「退職所得」とは「退職手当等」に一定の計算を加えた後の金額のことで、「退職所得」に税率を乗じて税額を算出します。

退職手当等

「退職手当等」とは課税される前の収入金額のことです。

「そもそも『退職手当等』に該当するのかどうか」の判定は実務上重要なポイントになります。

(退職所得)

第三十条 退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」という。)に係る所得をいう。

所得税法 より抜粋

「退職手当等」とみなされるものもあります。

(退職手当等とみなす一時金)

第三十一条 次に掲げる一時金は、(一部省略)退職手当等とみなす。

 国民年金法、厚生年金保険法(一部省略)、国家公務員共済組合法(一部省略)、地方公務員等共済組合法(一部省略)、私立学校教職員共済法(一部省略)及び独立行政法人農業者年金基金法(一部省略)の規定に基づく一時金その他これらの法律の規定による社会保険又は共済に関する制度に類する制度に基づく一時金(一部省略)で政令で定めるもの

 石炭鉱業年金基金法(一部省略)の規定に基づく一時金で同法第十六条第一項(一部省略)又は第十八条第一項(坑外員に関する給付)に規定する坑内員又は坑外員の退職に基因して支払われるものその他同法の規定による社会保険に関する制度に類する制度に基づく一時金で政令で定めるもの

 確定給付企業年金法(一部省略)の規定に基づいて支給を受ける一時金で(一部省略)加入者の退職により支払われるもの(一部省略)その他これに類する一時金として政令で定めるもの

所得税法 より抜粋

政令で定めるもの」については以下にありますが長い…。

(退職手当等とみなす一時金)

第七十二条 法第三十一条第一号(退職手当等とみなす一時金)に規定する政令で定める一時金(一部省略)は、次に掲げる一時金とする。

 国民年金法等の一部を改正する法律(一部省略)第五条(船員保険法の一部改正)の規定による改正前の船員保険法の規定に基づく一時金

 地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律(一部省略)附則の規定に基づく一時金

 厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律(平成十三年法律第百一号)附則第三十条(特例一時金の支給)の規定に基づく一時金(一部省略)

 法第三十一条第二号に規定する政令で定める一時金(これに類する給付を含む。)は、平成二十五年厚生年金等改正法第一条(厚生年金保険法の一部改正)の規定による改正前の厚生年金保険法(以下「旧厚生年金保険法」という。)第九章(厚生年金基金及び企業年金連合会)の規定に基づく一時金で平成二十五年厚生年金等改正法附則第三条第十二号(定義)に規定する厚生年金基金の加入員(次項第五号において「加入員」という。)の退職に基因して支払われるものとする。

 法第三十一条第三号に規定する政令で定める一時金(これに類する給付を含む。)は、次に掲げる一時金とする。

 特定退職金共済団体が行う退職金共済に関する制度に基づいて支給される一時金で、当該制度に係る被共済者の退職により支払われるもの

 独立行政法人勤労者退職金共済機構が中小企業退職金共済法第十条第一項(退職金)、第三十条第二項(退職金相当額の受入れ等)又は第四十三条第一項(退職金)の規定により支給するこれらの規定に規定する退職金

 独立行政法人中小企業基盤整備機構が支給する次に掲げる一時金

 法第七十五条第二項第一号(小規模企業共済等掛金控除)に規定する契約(一部省略)に基づいて支給される小規模企業共済法(昭和四十年法律第百二号)第九条第一項(共済金)に規定する共済金

 小規模企業共済法第二条第三項(定義)に規定する共済契約者で年齢六十五歳以上であるものが同法第七条第三項(契約の解除)の規定により小規模企業共済契約を解除したことにより支給される同法第十二条第一項(解約手当金)に規定する解約手当金

 小規模企業共済法第七条第四項の規定により小規模企業共済契約が解除されたものとみなされたことにより支給される同法第十二条第一項に規定する解約手当金

 法人税法附則第二十条第三項(退職年金等積立金に対する法人税の特例)に規定する適格退職年金契約に基づいて支給を受ける一時金で、その一時金が支給される基因となつた勤務をした者の退職により支払われるもの(一部省略)

 次に掲げる規定に基づいて支給を受ける一時金で、加入員、確定給付企業年金法第二十五条第一項(加入者)に規定する加入者又は確定拠出年金法第二条第八項(定義)に規定する企業型年金加入者(一部省略)の退職により支払われるもの(一部省略)

 平成二十五年厚生年金等改正法附則第四十二条第三項(基金中途脱退者に係る措置)、第四十三条第三項(解散基金加入員等に係る措置)、第四十六条第三項(確定給付企業年金中途脱退者に係る措置)、第四十七条第三項(終了制度加入者等に係る措置)、第四十九条の二第一項(企業型年金加入者であつた者に係る措置)又は第七十五条第二項(解散存続連合会の残余財産の連合会への交付)の規定

 平成二十五年厚生年金等改正法附則第六十三条第一項(確定給付企業年金中途脱退者等に係る措置に関する経過措置)の規定によりなおその効力を有するものとされる平成二十五年厚生年金等改正法第二条(確定給付企業年金法の一部改正)の規定による改正前の確定給付企業年金法第九十一条の二第三項(中途脱退者に係る措置)の規定

 平成二十五年厚生年金等改正法附則第六十三条第二項の規定によりなおその効力を有するものとされる平成二十五年厚生年金等改正法第二条の規定による改正前の確定給付企業年金法第九十一条の三第三項(終了制度加入者等に係る措置)の規定

 確定給付企業年金法第九十一条の二十三第一項(企業型年金加入者であつた者に係る措置)の規定に基づいて支給を受ける一時金で、企業型年金加入者の退職により支払われるもの

 確定拠出年金法第四条第三項(承認の基準等)に規定する企業型年金規約又は同法第五十六条第三項(承認の基準等)に規定する個人型年金規約に基づいて同法第二十八条第一号(給付の種類)(同法第七十三条(企業型年金に係る規定の準用)において準用する場合を含む。)に掲げる老齢給付金として支給される一時金

 独立行政法人福祉医療機構が社会福祉施設職員等退職手当共済法(昭和三十六年法律第百五十五号)第七条(退職手当金の支給)の規定により支給する同条に規定する退職手当金

 外国の法令に基づく保険又は共済に関する制度で法第三十一条第一号及び第二号に規定する法律の規定による社会保険又は共済に関する制度に類するものに基づいて支給される一時金で、当該制度に係る被保険者又は被共済者の退職により支払われるもの

所得税法施行令 より抜粋

条文では一応このようになっていますが、以下の国税庁HPの情報の方が上手くまとめられております。

退職所得

これに対し「退職所得」とは、退職所得控除(ざっくり必要経費のようなものとご理解下さい)を考慮するなど一定の計算の後に算出される金額のことで、通常は「退職所得」に対して税率を乗じた金額が源泉徴収されます。

 退職所得の金額は、その年中の退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の二分の一に相当する金額(一部省略)とする。

(一部省略)

所得税法第30条第1項 より抜粋

具体的な計算構造については一旦ここでは割愛致します。

源泉徴収義務

退職手当等の支給があった場合、支払った側が源泉徴収しなければなりません。

(源泉徴収義務)

第百九十九条 居住者に対し国内において(一部省略)退職手当等(一部省略)の支払をする者は、その支払の際、その退職手当等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない

所得税法 より抜粋

ちなみに、退職所得に限らず、源泉徴収の対象となる税金については、仮に徴収漏れがあった場合でも、源泉徴収義務者(退職所得の場合は支払者=会社)が最後まで責任をもって対応しなければなりません。

徴収漏れがあった場合で「そもそも元従業員が負担する税金なんだから、徴収漏れしていた分は元従業員の責任において確定申告してもらうなり勝手に対応してもらえばいいよね」は許されません。

根拠は以下です。

(源泉徴収に係る所得税の徴収)

第二百二十一条 第一章から前章まで(源泉徴収)の規定により所得税を徴収して納付すべき者がその所得税を納付しなかつたときは、税務署長は、その所得税をその者から徴収する

所得税法 より抜粋

必要な書類

退職所得の受給に関する申告書

退職手当等の支給を受ける場合、退職手当等の支払いを受ける時までに、支払者(会社)へ提出するのが「退職所得の受給に関する申告書(兼 退職所得申告書)」です。

支払者(会社)側の対応

「支払者(=会社)を経由して」となっており税務署へ提出するのは従業員ではなく会社になりますので、会社側が責任をもって退職する従業員にアナウンスすべきものです。

(退職所得の受給に関する申告書)

第二百三条 国内において退職手当等の支払を受ける居住者は、その支払を受ける時までに、次に掲げる事項を記載した申告書を、その退職手当等の支払者を経由して、(一部省略)納税地(一部省略)の所轄税務署長に提出しなければならない。(以下省略)

所得税法 より抜粋

従業員側の対応

従業員が会社を退職するとき、通常であれば会社側の人事部などから、「退職所得の受給に関する申告書(兼 退職所得申告書)」の記入を求められますので、言われた通り記入し、退職する従業員がそれを会社へ提出します。

前述の条文の通り、「提出しなければならない」ですので義務であり必ず提出するものになります。

なお、普通のサラリーマンであればあまり無いケースかもしれませんが、仮に、従業員Aさんが何らかの事情があり2つの会社に勤務しており、退職手当等B(勤務先Bから支給されたもの)を貰ったあと、同じ年中に退職手当等C(勤務先Cから支給されたもの)貰っていたとします。

この場合、勤務先Bから発行してもらった「退職所得の源泉徴収票」を、勤務先Cに対して提出する「退職所得の受給に関する申告書」に添付する必要があります。

(退職所得の受給に関する申告書)

第二百三条 (一部省略)この場合において、(一部省略)支払済みの他の退職手当等がある旨を記載した申告書を提出するときは、当該申告書に当該支払済みの他の退職手当等につき第二百二十六条第二項(源泉徴収票)の規定により交付される源泉徴収票を添付しなければならない。

所得税法 より抜粋

支払済の他の退職手当等」=勤務先Bから支給されたもの ということです。

支払明細書

会社側は退職する従業員に支払明細書を交付することが義務付けられています。

第二百三十一条 居住者に対し国内において(一部省略)退職手当等(一部省略)の支払をする者は、(一部省略)必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない

所得税法 より抜粋

ちなみに、義務を果たさなかった場合、刑事罰も規定されているためご注意下さい。

第二百四十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。ただし、第三号の規定に該当する者が同号に規定する所得税について第二百四十条(源泉徴収に係る所得税を納付しない罪)の規定に該当するに至つたときは、同条の例による。

 第二百三十一条第一項(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)に規定する支払明細書を同項に規定する支払を受ける者に(一部省略)交付をせず、若しくはこれに偽りの記載をして当該支払を受ける者に交付した者(一部省略)

所得税法 より抜粋

源泉徴収票

会社は源泉徴収票を作成し交付する必要があります。

第二百二十六条

 居住者に対し国内において(一部省略)退職手当等(一部省略)の支払をする者は、(一部省略)その年において支払の確定した退職手当等について、その退職手当等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票二通を作成し、その退職の日以後一月以内に、一通を税務署長に提出し、他の一通を退職手当等の支払を受ける者に交付しなければならない。(一部省略)

所得税法 より抜粋

上記には「退職する従業員と税務署長両方に交付しなければならない」とありますが、以下の施行規則により、役員以外の人(普通の従業員)に支払う退職所得に関しては、源泉徴収票を税務署に提出しなくてよいこととなっています。

第九十四条

 (一部省略)法人がその(一部省略)役員に対して支払う退職手当等以外の退職手当等については、前項の源泉徴収票は、税務署長に提出することを要しない

所得税法施行規則 より抜粋

個人住民税との関係

前述の内容は所得税(国税)について解説しましたが、個人住民税(地方税)についても規定があります。

退職金を貰った年に課税される

個人住民税(所得割)については、通常は「X1年1月からX1年12月までの所得に基づいて計算された税額」を、X2年において納税することとなります。

しかし、退職所得については退職所得の生じた年(X1年)に課税されます。

(退職所得の課税の特例)

第五十条の二 (一部省略)退職手当等(一部省略)の支払を受ける場合には、当該退職手当等に係る所得割は、(一部省略)当該退職手当等に係る所得を他の所得と区分し、(一部省略)当該退職手当等の支払を受けるべき日の属する年の一月一日現在におけるその者の住所所在の道府県において課する。

地方税法 より抜粋

退職所得申告書の提出

前述の所得税の場合と同じく、支払者(=会社)を経由して、市区町村長に提出しなければなりません。

(退職所得申告書)

第三百二十八条の七 退職手当等の支払を受ける者は、その支払を受ける時までに、次に掲げる事項を記載した申告書を、その退職手当等の支払者を経由して、その退職手当等の支払を受けるべき日の属する年の一月一日現在における住所所在地の市町村長に提出しなければならない。この場合において、第二号に規定する支払済みの他の退職手当等がある旨を記載した申告書を提出するときは、当該申告書に当該支払済みの他の退職手当等につき第三百二十八条の十四の規定により交付される特別徴収票を添付しなければならない。

(一部省略)

 前項の場合において、退職所得申告書がその提出の際に経由すべき退職手当等の支払者に受理されたときは、その申告書は、その受理された時に同項に規定する市町村長に提出されたものとみなす

地方税法 より抜粋

特別徴収票の交付

原則

所得税に係る源泉徴収票の交付義務と同じく、個人住民税(地方税)については特別徴収票というものを交付する義務が支払者(≒会社)側に課せられています。

特別徴収票とはざっくり申し上げますと、地方税バージョンの源泉徴収票ようなイメージです。

(特別徴収票)

第三百二十八条の十四 第三百二十八条の五第一項に規定する特別徴収義務者は、総務省令で定めるところにより、その年において支払の確定した退職手当等について、その退職手当等の支払を受ける者の各人別に特別徴収票二通を作成し、その退職の日以後一月以内に、一通を市町村長に提出し、他の一通を退職手当等の支払を受ける者に交付しなければならない。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。

地方税法 より抜粋

例外

ただし、特別徴収票の交付は、退職手当等を受け取る側が「法人の取締役、監査役、理事、監事、清算人その他の役員等」以外(例えば役職のない従業員など)である場合には、その受け取る人に交付するだけで良く、市区町村長への提出は要しないこととされています。

役員などに退職手当等を支払った場合には、支払者(≒会社)は、その役員と市区町村長両方に特別徴収票を交付しなければなりません。

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