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源泉徴収対象となる取引
源泉徴収しなければならない取引にはいくつか種類がありますが、以下の③については事前にご注意いただかなければならないことがあります。
| 主な源泉徴収対象取引 | 「納期の特例」の適用可否 |
|---|---|
| ①役員や従業員に対する給与 | |
| ②税理士や弁護士、社労士など「個人の士業等」に対する報酬 | |
| ③デザイナーなど「一定の個人」※1に対する報酬 |
- 漫画家や作家
- イラストレーター
- カメラマン
- デザイナー(動画や画像制作、UIデザインなど含む。)
- 作曲家
- 印税収入など著作権の使用料の支払相手
- セミナー講師等
- スポーツ等の監督
- 映画や演劇の脚本家
- 翻訳家や通訳
- 書籍の装丁者
- 金融商品取引法に規定する投資アドバイザー
- プロスポーツ選手やモデル
- 外交員や集金人、検針人
- ホステスやコンパニオン
- その他多数
源泉徴収義務者(主に給与の支払をする者を指します。)に該当する事業者は、例えば上記のような「源泉徴収対象取引」が生じた場合、必ず源泉徴収をおこない納付しなければなりません。
①②については、弊所含め一般的な税理士事務所であればサポート可能です。「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出しその適用を受ける場合、本来毎月10日までに納税しなければならない事務を、年に2回の納税にまとめることで事務負担を軽減できます。
③については、「源泉所得税の納期の特例」の適用対象外となります。つまり、③に該当する可能性がある場合、まず相手方の個人に報酬等を支払う前に「それが③に該当するのかどうか」を判断し、該当する場合、毎月、翌月10日までに源泉徴収した税額を納付しなければなりません。
通常、税理士事務所で③のサポートをおこなうことは現実的になかなか困難な実情がございます。従業員なみにほぼ付きっきりで日々の取引を判断・管理しなければ、漏れが生じてしまう可能性があるためです。
そのため、フリーランス等へ支払いが生じる場合、
「それが③に該当するかどうかの判断」と
「(該当する場合)③の源泉徴収事務(毎月10日までに納付)」を
内製化(=会計事務所サポートなしで貴社内で完結)いただく必要がございます。
実務対応
「③に該当するかどうか」は、主に国税庁資料を常にお手元に置いていただき辞書代わりに使用してご判断いただくことになります。
ただし、「国税庁資料の例示に該当しているのかどうかよく分からない取引」も現実には多数存在するため、「③に該当するかどうかの判断」は非常に難解であり、専門家でも判断に迷うケースも多々ございます。
そのため、経理部門が設置されているような法人でも、「③に該当するかどうかの判断」自体をそもそも避けるために「個人へ発注するときは(念のため)全て源泉徴収しておく」というルールで運用する企業もあれば、「そもそも個人事業主とは取引しない」というスタンスの企業もございます。
つまり、皆さまのご状況に合った進め方(対応策)を決めて頂く必要がございます。
進め方(対応策)の例
進め方A
「③に該当するかどうか」の判断を省略するために、①②以外で個人へ発注するときは、全て一律で源泉徴収する。その上で、源泉徴収事務(毎月10日までに徴収した源泉所得税を納付する)を内製化する。
- この進め方が最も保守的です。
進め方B
フリーランス等へ支払う際は、以下のフローを内製化する。
- 一つ一つの全ての取引について「③に該当するかどうか」をその都度判断する。
- ③に該当する場合、フリーランス等へ源泉徴収する方針である旨を伝え、源泉徴収し毎月10日までに源泉所得税を納付する。
- こちらの国税庁資料を辞書代わりに常にお手元に置いていただき、その都度ご確認頂きます。
- 「③に該当するかどうかの判断」はフリーランス側ではなく皆さま側の義務です。フリーランス側が「源泉徴収は不要」と主張したとしても、実は③に該当していたことが後日発覚した場合、「源泉徴収する側」に罰則が科せられます。
- 「源泉徴収するかどうか自由に選べる」ということではございませんので、国税庁資料をお読み頂くことが困難な場合、進め方Bを選択することはお辞めください。
- 「源泉徴収しない」というご判断をされた取引に関しては、「源泉徴収しないという判断をした理由」を必ず説明できるように記録しておいてください(必須)。税務調査時にご説明頂く場合があります。
- 本来あるべき原則的な進め方ですが、貴社内にベテランの経理担当者が配置されているなど人的リソースが無い場合、事務負担が増えますので予めご認識おき下さいませ。
進め方C
今後は個人に外注先することは避け、別ルートで外注先を調達する(相手も法人であれば通常は源泉徴収不要です)。
または、懇意にしている特定の個人とのみ契約を締結し、業務内容を事前に整理したうえで、「源泉徴収対象取引かどうか」の判断を契約段階で固めてしまう。
進め方D
貴社がご自身で考えた、A~C以外の進め方。以前に弊所にご共有下さいませ。
その他
個人へ外注することはない。
ご選択いただいた方針のご共有
上記のA、B、C、D、その他のうち、どれをご選択されるか決めて頂きましたら、弊所までメールにてご連絡下さいませ。
源泉徴収せずに支払ってしまった場合
相手がいる話ですので基本的にリカバー不可とご認識下さい。
③に該当していたにも関わらず、源泉徴収せずに相手方に報酬等を支払ってしまった場合、「本来源泉徴収しなければならなかった税額」をすぐに相手方から返してもらえる場合は別ですが、相手から返金してもらえない場合、「本来の徴収すべきだった源泉所得税相当額」も相手方への報酬等の一部とされますので、その部分についてもさらに源泉税が課されることとなり、非常に厄介な状況となります。
この場合、イレギュラー業務となりますので追加税理士報酬の対象となりますが、ミスした税額以上の税理士報酬が生じてしまいますので、そもそもそのようなご状況に陥らないよう、何卒、十分にご注意下さいませ。
マイナンバーの提供の依頼
③に該当する場合、相手方のフリーランスに対して、マイナンバーの提供を求める必要があります。
もし、マイナンバーの提供を拒否された場合、以下のリンク先「Q1-2」に則り、経緯を必ず記録してください。
その他
例えばお1人で活動する個人事業主の場合、「源泉徴収義務者」に該当しないため、このような議論も生じませんが、法人を設立するなどしてしまうと、たとえひとり社長であったとしても上記のようなシビアな義務がセットでついてくることとなります。
ご面倒だと感じられるとは思いますが、源泉徴収義務者に該当する以上は避けられないタスクになります。初めての場合ご不安があるかもしれませんが、ご不明点等ございましたらお気軽にご連絡下さいませ。
