会計税務の分野で不正行為を絶対にしてはいけない理由|澁谷税理士事務所

目次

結論

そもそも違法行為なのでNGというのは大前提ですが、本コラムでは仮に不正行為をすると、会計書類上・税務書類上どのように表示されるのかを、会計税務に明るくない方向けに解説しています。

まず、会計・税務の分野は、何かすると必ずその痕跡がどこかに残ります

その「何か」が不正行為なのであれば、不正の痕跡が何年も残り続け、見る人が見れば必ずどこかでバレます

会計

具体例

仮に、事業者が金融機関へ融資を申し込むとき審査を有利にしたいという理由で、売上2,000,000円を水増しして計上したとします(まずこの時点で金融機関に対しての偽計なので違法行為です)。

そしてX1年において以下のような会計処理が計上されたとします。

売掛金2,000,000売上2,000,000

BS科目が消し込まれない

この場合、計上された売掛金2,000,000円は、X2年以降も貸借対照表に計上され続けます。

売掛金勘定は、本来であれば以下の仕訳が計上されて消し込まれます。

普通預金2,000,000売掛金2,000,000

が、この例の場合、存在しない売掛金を計上したので、当たり前ですがこれが消し込まれる(2,000,000円が入金される)ことなどあるはずもないので、不審な売掛金が永久に残り続けます。

確定申告時、勘定科目内訳書という書類に売掛金の内訳を記載することになりますが、何年間もずっと消えない不審な2,000,000円が載り続けるので、X1年は逃げおおせたとしても、X2年以降ずっと自ら作った不正の痕跡におびえ続けることになります。

費用に計上したらどうなるか

事業者が、会計上この売掛金2,000,000円を消し込むために以下のような会計処理を計上することを思いついたとします。

貸倒損失2,000,000売掛金2,000,000

会計上、貸倒損失を計上するには要件を満たす必要があるので、通常、貸倒損失が計上されていたらそれを見た会計・税務のプロは、要件を充足しているのか確認するために必ずそこに着目します

が、存在しない売掛金を貸倒損失にしているので要件を満たしているわけもなく2重の意味で目立ちます。

こうやってどんどん嘘に嘘を塗り固めて自ら泥沼にはまっていくことになります

他の費用勘定に計上したらどうなるか

貸倒損失がだめなら他の費用勘定にすればいいのではないかと事業者が思いついたとします。

支払手数料2,000,000売掛金2,000,000

が、この会計処理は、売掛金の相手が支払手数料となっており会計処理として意味不明ですので、貸倒損失よりも目立つでしょう。

キャッシュイン又はキャッシュアウトが伴っていない仕訳は全て目立ちます

「売掛金が費用勘定で消し込まれるとすれば通常は貸倒損失だが、なぜ貸倒損失ではなく他の費用勘定を選んだのか?」という疑念からスタートし、最終的には粉飾決算だったことがバレます。

税務

会計上費用に計上した場合

それでも苦し紛れに、事業者が自分の過去の不正を消し込むために支払手数料や雑損失などの費用勘定で売掛金2,000,000円を消し込んだとします。

これをやると貸借対照表上からは売掛金2,000,000円が消えましたが、今度は確定申告書上でこの2,000,000円を計上しなければなりません。

別表5(1)

法人税の申告書には別表5(1)というものがありますが、そこで以下のように表示することとなります。

法人税法上、無理やり計上した支払手数料2,000,000円は架空の経費ですので、損金(税務上認められる費用)にはならないためです。

区分①期首②減算③加算④期末
売掛金2,000,0002,000,000

本来、別表5(1)に計上された項目は、翌期又は数年後に一定の事由が生じた時点で以下のように処理し、別表5(1)上から消し込まれます。

区分①期首②減算③加算④期末
売掛金2,000,0002,000,000

が、この2,000,000円は存在しない金額なので「一定の事由」が生じるタイミングは永久に訪れません。そのため、別表5(1)上で永久に残り続け、何年間も以下の様に表示され続けることとなります。

区分①期首②減算③加算④期末
売掛金2,000,000

ちなみに「区分」はただの名称ですので「売掛金」という名称でなかったとしても、不審な金額が計上され続けることになる点では変わりないので、別の名称に変えたとしても無駄です。

泥沼にはまることとなる

以上のように、会計・税務の分野で何か不正行為をするとその痕跡が必ずどこかに残ります

それを数年後に正そうとしても嘘に嘘を塗り固めることになりどんどん泥沼にはまるだけです。

そもそも不正行為はしないことが最重要です。

既にしてしまっている場合、自ら招いた結果ですので、不正の痕跡と最後まで付き合い続けるしかありません。

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