新規開業の個人事業主へ。ロゴマークを発注した場合の会計処理

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事業を開始して自分の個人事業のブランドロゴを用意することがあると思いますが、本コラムでは、その取扱いについて解説しています。

目次

ロゴマーク制作手段

個人事業をはじめたり法人を設立してロゴマークを作る方も多いですが、一般的には以下のルートで用意している方が多いように思います。

  • HP制作の外注先にロゴも併せて作ってもらう
  • ココナラなどで発注する
  • 生成AIで自作する
  • インスタなどで見つけた好みのデザイナーさんに依頼

商標登録の有無によって分かれる

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商標登録取り扱い
する無形固定資産(商標権)
しない繰延資産

商標登録する場合

取得価額に含める項目

商標権(無形固定資産)も減価償却資産のひとつなので、取得価額の計上額は、購入代価だけでなく付随費用も含めることとなります。

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想定される項目取得価額
デザイナーへのデザイン料含める
商標調査費用含める
弁理士報酬含める
登録手数料含める
印紙代含める

法人の場合は、取得価額に含めなくてよい(損金にできる)ものでも、個人事業主の場合は取得価額に含めなければならなりません。

にも関わらずこの区別をせずに、「取得価額に含めなくてよい」という解説も散見されるので要注意です。

会計処理(一例)

5/1 デザイナーへの前払い

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借方科目消費税借方金額貸方科目消費税貸方金額
前払金77,000普通預金77,000

5/31 ロゴ納品

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借方科目消費税借方金額貸方科目消費税貸方金額
建設仮勘定課税10%77,000前払金77,000

「ロゴ」は取得しましたが、この時点では「商標権」は未取得です。

工業所有権の登録は一般的に数か月要します。

期をまたぐ可能性を考慮し、建設工事などの会計処理に倣うならば、一旦建設仮勘定を使用すると良いのではないかと思います(商標権は有形固定資産ではないですが)。このあたりは人によって違う会計処理をしているかもしれません。

「ロゴ制作」という役務提供自体は完了しているので、消費税認識も行いますが、建設工事の処理に倣うならば、商標権取得時に消費税認識をするやり方も想定されます。

6/1 商標調査依頼

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借方科目消費税借方金額貸方科目消費税貸方金額
前払金55,000普通預金55,000

6/15 商標調査報告書の納品

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借方科目消費税借方金額貸方科目消費税貸方金額
建設仮勘定課税10%55,000前払金55,000

6/20 出願

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借方科目消費税借方金額貸方科目消費税貸方金額
建設仮勘定(弁理士報酬)課税10%77,000普通預金107,000
建設仮勘定(印紙代)不課税20,000貯蔵品20,000
建設仮勘定(出願手数料)非課税30,000

翌年1/10 商標権登録完了

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借方科目消費税借方金額貸方科目消費税貸方金額
商標権240,000建設仮勘定240,000

償却期間

商標権は10年で償却します。

ただ、要件を満たせば金額によっては以下の特例を使用することも想定されます。

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取得価額特例
10万円未満支出時に損金or必要経費
10万円以上20万円未満一括償却資産計上できる
20万円以上30万円未満中小企業者特例が使える

根拠

十八 固定資産 土地(土地の上に存する権利を含む。)、減価償却資産、電話加入権その他の資産(山林を除く。)で政令で定めるものをいう。

十九 減価償却資産 不動産所得若しくは雑所得の基因となり、又は不動産所得、事業所得、山林所得若しくは雑所得を生ずべき業務の用に供される建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう。

所得税法第2条より

(減価償却資産の範囲)

第六条 法第二条第一項第十九号(定義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。

(一部省略)

 次に掲げる無形固定資産

 (一部省略)

  商標権

  ソフトウエア

所得税法施行令より
(減価償却資産に係る登録免許税等)

49-3 減価償却資産に係る登録免許税(登録に要する費用を含む。)をその資産の取得価額に算入するかどうかについては、次による。(平17課個2-23、課資3-5、課法8-6、課審4-113、平19課個2-11、課資3-1、課法9-5、課審4-26改正)

(1) 特許権、鉱業権のように登録により権利が発生する資産に係るものは、取得価額に算入する。

(2) 船舶、航空機、自動車のように業務の用に供するについて登録を要する資産に係るものは、取得価額に算入しないことができる。

(3) (1)及び(2)以外の資産に係るものは、取得価額に算入しない。

(注)

1 業務の用に供される資産に係る登録免許税等のうち、取得価額に算入しないものについては、37-5参照

2 業務の用に供されない固定資産に係る登録免許税等については、38-9及び60-2参照

3 上記の減価償却資産には、相続等により取得した減価償却資産を含むものとする。

所得税基本通達より

(少額の減価償却資産の取得価額の必要経費算入)

第百三十八条 居住者が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供した減価償却資産(第百二十条第一項第六号及び第百二十条の二第一項第六号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるものを除く。)で、取得価額(第百二十六条第一項各号又は第二項(減価償却資産の取得価額)の規定により計算した価額をいう。次条第一項において同じ。)が十万円未満であるもの(貸付け(主要な業務として行われるものを除く。)の用に供したものを除く。)又は第百八十一条第一号(資本的支出)に規定する使用可能期間が一年未満であるものについては、第四款(減価償却資産の償却)の規定にかかわらず、その取得価額に相当する金額を、その者のその業務の用に供した年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

(一部省略)

(一括償却資産の必要経費算入)

第百三十九条 居住者が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供した減価償却資産で取得価額が二十万円未満であるもの(第百二十条第一項第六号及び第百二十条の二第一項第六号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるもの並びに前条第一項の規定の適用があるものを除く。以下この項において「対象資産」という。)については、その居住者が当該対象資産(貸付け(主要な業務として行われるものを除く。)の用に供したものを除く。)の全部又は特定の一部を一括したもの(以下この項及び次項において「一括償却資産」という。)の取得価額の合計額をその業務の用に供した年以後三年間の各年の費用の額とする方法を選択したときは、第四款(減価償却資産の償却)の規定にかかわらず、当該一括償却資産につき当該各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、当該一括償却資産の取得価額の合計額(次項及び第三項において「一括償却対象額」という。)を三で除して計算した金額とする。

(一部省略)

所得税法施行令より

(中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例)

第二十八条の二 中小事業者(一部省略)が、平成十八年四月一日から令和八年三月三十一日までの間に取得し、又は製作し、若しくは建設し、かつ、当該中小事業者の不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の用に供した減価償却資産で、その取得価額が三十万円未満であるもの(その取得価額が十万円未満であるもの及び第十九条第一項各号に掲げる規定の適用を受けるものその他政令で定めるものを除く。以下この条において「少額減価償却資産」という。)については、所得税法第四十九条第一項の規定にかかわらず、当該少額減価償却資産の取得価額に相当する金額を、当該中小事業者のその業務の用に供した年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、当該中小事業者のその業務の用に供した年分における少額減価償却資産の取得価額の合計額が三百万円(当該業務の用に供した年がその業務を開始した日の属する年又はその業務を廃止した日の属する年である場合には、これらの年については、三百万円を十二で除し、これにこれらの年において業務を営んでいた期間の月数を乗じて計算した金額。以下この項において同じ。)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち三百万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額を限度とする。

租税特別措置法より
(無形減価償却資産の事業の用に供した時期)

7-1-6 令第13条第8号《無形減価償却資産の範囲》に掲げる無形減価償却資産のうち、漁業権、工業所有権及び樹木採取権については、その存続期間の経過により償却すべきものであるから、その取得の日から事業の用に供したものとして取り扱う。(昭55年直法2-8「十九」、令2年課法2-17「五」により改正)

法人税基本通達より

※所得税基本通達には↑にあたる通達が見当たりませんが、わざわざ所得税で異なる取り扱いをする意味もないと思われるので、これを準用すると仮定します。

対象税目

消費税

概要

建設工事の場合は、通常、工事の発注から完成引渡しまでの期間が長期に及ぶため、一般的に、工事代金の前払金または部分的に引渡しを受けた工事代金や経費(設計料、資材購入費等)の額を一旦建設仮勘定として経理し、これを目的物の全部が引き渡されたときに、固定資産などに振り替える処理を行っています。

消費税法においては、建設仮勘定に計上されている金額であっても、原則として物の引渡しや役務の提供があった日の課税期間において課税仕入れに対する税額の控除を行うことになりますから、当該設計料に係る役務の提供や資材の購入等の課税仕入れについては、その課税仕入れを行った日の属する課税期間において仕入税額控除の対象とすることになります。

ただし、建設仮勘定として経理した課税仕入れについて、物の引渡しや役務の提供または一部が完成したことにより引渡しを受けた部分をその都度課税仕入れとしないで、工事の目的物のすべての引渡しを受けた日の属する課税期間における課税仕入れとして処理する方法も認められます。

対象者または対象物

事業者(免税事業者を除く)

『No.6483 建設仮勘定の仕入税額控除の時期』より

商標登録しない場合

20万円未満

ネット上で、「商標権登録しないロゴマークの場合、『開発費』となる。20万円未満であれば支出時に損金にしてOK」という解説を見かけますがこれは完全に誤りです。

「20万円未満であれば支出時に損金にしてOK」なのは「均等償却を行う繰延資産」限定の話ですが、商標登録しないロゴマークを「開発費」と考える場合、「任意償却の繰延資産」ですので、20万円未満かどうかは無関係です。

根拠

(繰延資産となる費用のうち少額のものの必要経費算入)

第百三十九条の二 居住者が支出する第七条第一項第三号(繰延資産の範囲)に掲げる費用のうちその支出する金額が二十万円未満であるものについては、前款(繰延資産の償却)の規定にかかわらず、その支出する金額に相当する金額を、その者のその支出する日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

所得税法施行令より

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