一般的に、雇用すると給与を支払うことになりますが、その従業員の社会保険料(折半)の負担だったり、払った給与は課税仕入れにならないので仕入税額控除が取れません。
外注にするとこれらのデメリットが消えますが、「給与」なのか「外注費」なのかの区別は昔から伝統的な論点です。
自分では外注費にしたつもりであっても、税務の世界では「実質」で判定されるので、給与認定されてしまうと悲惨なことになるため、この判定を誤らないようにすることが大切です。
間違えるとダブルパンチ
給与となるはずのものを、外注費と間違えた場合、所得税、消費税、両方でダブルパンチを食らうこととなります。
給与の場合、以下のようになるはずですが、
給与(不課税) | 1,000,000 | 普通預金 | 970,000 |
源泉税預り金 | 10,000 | ||
社会保険料預り金 | 20,000 |
これを誤って外注費と判断してしまうと、以下のようになります。
外注費(10%課税) | 1,000,000 | 普通預金 | 1,100,000 |
仮払消費税 | 100,000 |
取れないはずの消費税の仕入税額控除取っており、かつ、源泉徴収もしていないので2重のペナルティです。
区別の仕方
項目 | 外注費 | 給与 |
他人の代替を容れる | YES | NO |
時間的拘束がある(作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算される) | NO | YES |
進め方などについて指揮監督を受ける | NO | YES |
既に提供した役務に係る報酬の請求できる | NO | YES |
材料又は用具等を供与される | NO | YES |
外注費と給与の区別については、以下の通達があります。
事業所得とは、自己の計算において独立して行われる事業から生ずる所得をいい、例えば、請負契約又はこれに準ずる契約に基づく業務の遂行ないし役務の提供の対価は事業所得に該当する。また、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく役務の提供の対価は、事業所得に該当せず、給与所得に該当する。
したがって、大工、左官、とび職等が、建設、据付け、組立てその他これらに類する作業において、業務を遂行し又は役務を提供したことの対価として支払を受けた報酬に係る所得区分は、当該報酬が、請負契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのか、又は、雇用契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのかにより判定するのであるから留意する。
この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。
(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
(4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
(5)材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。
『大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)』より抜粋
1-1-1 事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
所得税基本通達より
弁護士にもチェックを
客観的に見ても、「雇用契約」ではなく「請負契約」「準委任契約」になっているかどうか、弁護士にもリーガルチェックしてもらいましょう。
参考元情報
第1節 個人事業者の納税義務|国税庁 (nta.go.jp)
大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)|国税庁 (nta.go.jp)
給与等 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)
No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例|国税庁 (nta.go.jp)
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