スキャナ保存要件を満たすと、紙の原本を破棄することができます。
が、一部、紙原本を破棄することによる弊害があるため解説してゆきます。
紙保存と併用が想定される状況
状況 | 目的 |
印紙税の過誤納還付 | 還付を受ける |
保存要件の充足ミス | 青色申告承認の取り消しなどにならないようにする |
上記のような状況になってしまったとき、紙保存も行っていれば、トラブルにならずに済みます。
印紙税の過誤納還付請求
印紙を誤って多い金額で貼付してしまった場合、後日還付請求できる場合がありますが、その際に紙原本が必要となります。
なお、印紙税の納税義務は課税文書を作成したときに成立するものであることから、スキャナ保存される国税関係書類の書面(紙)についても、印紙税の課税文書であれば収入印紙を貼付しなければなりませんが、収入印紙を貼付した後にスキャナで読み取って最低限の同等確認を行った後であれば、収入印紙が貼付された当該書面(紙)を即時に廃棄しても差し支えありません。
『電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】令和5年6月』問3 より
ただし、印紙税の過誤納があった場合の過誤納還付申請については、当該過誤納となった事実を証するため必要な文書(原本)の提示が必要であり、スキャナデータ(又はスキャナデータを出力した文書)に基づいて印紙税の過誤納還付を受けることはできませんのでご注意ください。
個人的には、そもそも印紙を使わなくて済むように電子契約を導入する方が良いように思えますが、いろいろな事情で印紙を使わざるを得ない状況が多い方は、紙保存との併用も検討した方が良いかもしれません。
保存要件の充足ミス
スキャナ保存の要件に従っていたと思っていたが実はできていなかった、という様なケースです。
要件を満たしていなかった場合、消費税における仕入税額控除の否認や青色申告承認の取り消しなどの事態になる可能性がありますが、そういうとき紙原本を取っておくと難を逃れることができます。
スキャナ保存の要件を満たして保存が行われていない電磁的記録については、法第4条第3項後段の規定により保存が行われている場合であっても、その電磁的記録は国税関係書類とはみなされないこととなります(法8①)。
『電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】令和5年6月』問58 より
そのような場合には、各税法に定める保存義務が履行されていないこととなるため、仕入税額控除の否認や、青色申告の承認取消し等の対象となる可能性があります(スキャナ保存に係る国税関係書類(紙原本)の保存がある場合は除かれます。)。
まとめ
ペーパーレスにするためにスキャナ保存を始めたのに、結局、紙原本も保存しなければならない、というのは本末転倒ですが、スキャナ保存もまだ開始して日が浅い制度のため、個人的には、もう少し実務上の事例が出てきてから始めた方が良いと思っています。
参考元情報
No.7130 誤って納付した印紙税の還付|国税庁 (nta.go.jp)
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