返品・値引・割戻・割引の違い。会計処理と消費税、注意点を解説

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返品、値引、割戻、割引など、何となくこれらの言葉を使っている方も多いと思いますが、税法上これらは区別されているので要注意です。

目次

全体像

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種別説明会計処理消費税法
返品商品などを返品すること仕入又は売上から控除対価の返還等
値引品違いや品質などを理由に代金を安くすること仕入又は売上から控除対価の返還等
割戻
(リベート)
一定期間に多量または多額の取引をしたことに伴い、
予め決めた金額分安くすること
仕入又は売上から控除対価の返還等
割引支払期日より前に入金があったことで代金を一部免除すること仕入割引又は売上割引として
営業外損益に計上
対価の返還等

「返品」「値引」「割戻」「割引」すべて、自分が売上側なら「売上に係る対価の返還等」に、自分が仕入側なら「仕入れに係る対価の返還等」にそれぞれ該当します。

国内で行った課税資産の譲渡等に該当する取引に基因して支払われる次のもの(以下「売上げに係る対価の返還等」といいます。)が調整の必要な取引となります。

ただし、輸出取引など消費税が免除される取引に基因して支払われるものを除きます。

(1) 返品

(2) 値引

(3) 事業者がその直接の取引先に支払う割戻

この他、間接の取引先(商品等の卸売業者、製造業者等)に支払う飛越しリベート等とされるもの

(4) 海上運送事業を営む事業者が支払う船舶の早出料

(5) 販売奨励金等のうち、事業者が販売促進の目的で販売奨励金等の対象とされる課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先に対して金銭で支払うもの

(6) 協同組合等が組合員等に支払う事業分量配当金のうち、課税資産の譲渡等の分量等に応じた部分

(7) 課税資産の譲渡等に係る対価をその支払期日より前に支払を受けたこと等を基因として支払われる売上割引

国税庁HP『No.6359 値引き、返品、割戻しなどを行った場合の税額の調整(売上げに係る対価の返還等)』より抜粋

14-1-4 課税資産の譲渡等に係る対価をその支払期日よりも前に支払いを受けたこと等を基因として支払う売上割引は、売上げに係る対価の返還等に該当する。

消費税基本通達 より抜粋

国内で行った課税仕入れに該当する取引に基因して受け取る次のもの(以下「仕入れに係る対価の返還等」といいます。)が調整の必要な取引となります。

(1) 返品

(2) 値引

(3) 事業者がその直接の取引先から受ける割戻し

この他、間接の取引先(商品等の卸売業者、製造業者等)から支払われる飛越しリベート等とされるもの

(4) 海上運送事業を営む事業者から収受する船舶の早出料

(5) 販売奨励金等のうち、事業者が販売促進の目的で販売奨励金等の対象とされる課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先から金銭により支払を受けるもの

(6) 協同組合等から組合員等が収受する事業分量配当金のうち、課税仕入れの分量等に応じた部分

(7) 課税仕入れに係る対価をその支払期日より前に支払ったこと等を基因として支払を受ける仕入割引

(8) 保税地域から引き取った課税貨物に係る消費税額の還付税額

国税庁HP『No.6363 値引き、返品、割戻しなどが行われた場合の税額の調整(仕入れに係る対価の返還等)』より抜粋

12-1-4 課税仕入れに係る対価をその支払期日よりも前に支払ったこと等を基因として支払いを受ける仕入割引は、仕入れに係る対価の返還等に該当する。

消費税基本通達 より抜粋

会計処理

返品・値引・割戻

売上げたとき

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借方科目消費税借方金額貸方科目消費税貸方金額
売掛金550,000売上課税売10%550,000

返品・値引・割戻したとき

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借方科目消費税借方金額貸方科目消費税貸方金額
普通預金539,000売掛金550,000
売上課税売10%11,000
調整の方法

課税標準額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等に係る消費税額を控除します。

ただし、課税資産の譲渡等の金額からその売上げに係る対価の返還等の金額を控除する経理処理を継続して行っているときは、この処理も認められます。

『No.6359 値引き、返品、割戻しなどを行った場合の税額の調整(売上げに係る対価の返還等)』より抜粋
(売上げに係る対価の返還等の処理)

14-1-8 事業者が、その課税期間において売上げに係る対価の返還等(免税事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等に係るものを除く。以下14-1-8において同じ。)を行った場合において、当該課税期間に国内において行った課税資産の譲渡等の税率の異なるごとの金額から当該売上げに係る対価の返還等につき税率の異なるごとに合理的に区分した金額をそれぞれ控除する経理処理を継続して行っているときは、これを認める。

(注) この場合、当該売上げに係る対価の返還等の金額については、別途法第38条第1項《売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除》の規定の適用はないのであるが、同条第2項に規定する帳簿を保存する必要があることに留意する。

消費税基本通達より抜粋

割引

売上げたとき

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借方科目消費税借方金額貸方科目消費税貸方金額
売掛金550,000売上課税売10%500,000

割引したとき

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借方科目消費税借方金額貸方科目消費税貸方金額
普通預金539,000売掛金550,000
売上割引課税売10%11,000

税務上の注意点

割戻 or 交際費等

割戻の場合、税務上は交際費認定されるリスクがあります。

そうなった場合、一定の要件に該当すると、税務上の費用(経費)として認められなくなります。

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割戻方法交際費等or割戻
金銭で支出割戻
事業用資産を交付割戻
おおむね3,000円以下の少額物品を交付割戻
3,000円超の物品の交付交際費等
旅行・観劇に招待する交際費等
その他
(売上高や売掛金の回収高に比例していないなど)
交際費等
(売上割戻し等と交際費等との区分)

61の4(1)-3 法人がその得意先である事業者に対し、売上高若しくは売掛金の回収高に比例して、又は売上高の一定額ごとに金銭で支出する売上割戻しの費用及びこれらの基準のほかに得意先の営業地域の特殊事情、協力度合い等を勘案して金銭で支出する費用は、交際費等に該当しないものとする。(平6年課法2-5「三十一」、平30年課法2-8「一」により改正)

(注)

1 「得意先である事業者に対し金銭を支出する」とは、得意先である企業自体に対して金銭を支出することをいうのであるから、その金額は当該事業者の収益に計上されるものである。

2 得意先である事業者において棚卸資産若しくは固定資産として販売し若しくは使用することが明らかな物品(以下「事業用資産」という。)又はその購入単価が少額(おおむね3,000円以下)である物品(以下61の4(1)-5までにおいて「少額物品」という。)を交付する場合(その交付の基準が上記の売上割戻し等の算定基準と同一である場合に限る。)におけるこれらの物品を交付するために要する費用についても同様とする。

(売上割戻し等と同一の基準により物品を交付し又は旅行、観劇等に招待する費用)

61の4(1)-4 法人がその得意先に対して物品を交付する場合(61の4(1)-3(注)2の場合を除く。以下61の4(1)-4において同じ。)又は得意先を旅行、観劇等に招待する場合には、たとえその物品の交付又は旅行、観劇等への招待が売上割戻し等と同様の基準で行われるものであっても、その物品の交付のために要する費用又は旅行、観劇等に招待するために要する費用は交際費等に該当するものとする。ただし、物品を交付する場合であっても、その物品が少額物品であり、かつ、その交付の基準が61の4(1)-3の売上割戻し等の算定基準と同一であるときは、これらの物品を交付するために要する費用は、交際費等に該当しないものとすることができる。(昭54年直法2-31「十九」、平6年課法2-5「三十一」、平30年課法2-8「一」により改正)

国税庁HP より抜粋

割戻を認識するタイミング

(売上割戻しを行った日)

14-1-9 課税資産の譲渡等に係る売上割戻しについては、次に掲げる区分に応じ、次に掲げる日に当該売上割戻しを行ったものとする。

(1) その算定基準が販売価額又は販売数量によっており、かつ、当該算定基準が契約その他の方法により相手方に明示されている売上割戻し 課税資産の譲渡等をした日。ただし、事業者が継続して売上割戻しの金額の通知又は支払をした日に売上割戻しを行ったこととしている場合には、これを認める。

(2) (1)に該当しない売上割戻し  その売上割戻しの金額の通知又は支払をした日。ただし、各課税期間終了の日までに、その課税資産の譲渡等の対価の額について売上割戻しを支払うこと及びその売上割戻しの算定基準が内部的に決定されている場合において、事業者がその基準により計算した金額を当該課税期間において未払金として計上するとともに確定申告書の提出期限までに相手方に通知したときは、継続適用を条件に当該課税期間において行った売上割戻しとしてこれを認める。

消費税基本通達より抜粋
(仕入割戻しを受けた日)

12-1-10 資産の譲渡等に係る仕入割戻しについては、次の区分に応じ、次に掲げる日に当該仕入割戻しを受けたものとする。

(1) その算定基準が購入価額又は購入数量によっており、かつ、その算定基準が契約その他の方法により明示されている仕入割戻し  資産の譲渡等を受けた日

(2) (1)に該当しない仕入割戻し  その仕入割戻しの金額の通知を受けた日

消費税基本通達より抜粋

会計ソフトへの入力

消費税計算の前に、日々の会計処理の入力がありますが、会計処理の段階で「対価の返還等」の金額を税率ごとに区分して控除していれば、これが認められます。

ただし、継続してそのような会計処理をしていることが必要です。

(売上げに係る対価の返還等の処理)

14-1-8 事業者が、その課税期間において売上げに係る対価の返還等(免税事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等に係るものを除く。以下14-1-8において同じ。)を行った場合において、当該課税期間に国内において行った課税資産の譲渡等の税率の異なるごとの金額から当該売上げに係る対価の返還等につき税率の異なるごとに合理的に区分した金額をそれぞれ控除する経理処理を継続して行っているときは、これを認める。

(注) この場合、当該売上げに係る対価の返還等の金額については、別途法第38条第1項《売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除》の規定の適用はないのであるが、同条第2項に規定する帳簿を保存する必要があることに留意する。

消費税基本通達より抜粋
(仕入れに係る対価の返還等の処理)

12-1-12 事業者が、課税仕入れ(免税事業者であった課税期間において行ったものを除く。以下12―1―12において同じ。)につき返品をし、又は値引き若しくは割戻しを受けた場合に、当該課税仕入れに係る返品額又は値引額若しくは割戻額につき税率の異なるごとに合理的に区分した金額を、当該課税仕入れの税率の異なるごとの金額からそれぞれ控除する経理処理を継続しているときは、これを認める

(注) この場合の返品額又は値引額若しくは割戻額については、法第32条第1項《仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例》の規定の適用はないことに留意する。 

消費税基本通達 より抜粋

対価の返還等にならないことも…

(一部省略)

また、〔1〕請求人が、相互協力契約書に基づき受け取る一戸当たりの本件受入手数料は、上記(1)のニの請求人が新規顧客宅に配置する薬品の仕入原価の3倍を超えていること、〔2〕本件受入手数料は、相互協力契約書に基づき、課税資産である薬品の仕入れに係る取引の対価の額とは必ずしも対応しない新規顧客獲得戸数を計算基準として算出されて支払われていることからすると、本件受入手数料とA社からの薬品仕入れの対価との間に対応関係は認められない
ロ そうすると、本件受入手数料は、本件通達が定める販売奨励金等には該当せず、むしろ役務の提供の対価として課税資産の譲渡等の対価の額に当たるというべきである。

(一部省略)

国税不服審判所『(平17.3.22裁決、裁決事例集No.69 394頁)』より抜粋

「受け取った金銭」と「仕入れの対価」との間に対応関係がなかったりすると、「仕入れに係る対価の返還等」ではなく通常の「課税売上げ」になることもあります。

「税務上の目線」が大事

本コラムで伝えたかったのは「簿記の知識があるだけでは記帳ができない」という点です。

記帳時点で同時に税務の検討を行うことも多いので「税務の目線で会計処理を考える(一般的に『税務会計』と呼びます)」ことが大切です。

税務の世界では、あとからリカバリーしようとすると余計に事務負担が生じたり税理士報酬が増大したりすることが多いので、入口時点で適切に処理することが非常に大事です。

参考元情報

第1款 売上げに係る対価の返還等の範囲|国税庁 (nta.go.jp)

第1款 対価の返還等の範囲|国税庁 (nta.go.jp)

(平17.3.22裁決、裁決事例集No.69 394頁) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

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