個人事業主の開業費はいつまで遡れるか。根拠を踏まえて解説

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結論から言えば、開業日からどれくらい前の支出まで遡って開業費計上が可能かという点については、税務上規定がないため、本当に開業のための支出であったことを客観的な形で説明できる状態にしておくことが重要です。

目次

「開業費」は「繰延資産」の一種

「開業費」は「費」とありますが費用ではなく、税務上は「繰延資産」というものに該当し「資産」扱いです。

繰延資産とは以下のものを指します。

  • 不動産所得や事業所得、山林所得、雑所得を生ずべき業務に係るものであること
  • 支出の効果が支出日以後1年以上に及ぶこと
  • 政令で定めるものに該当していること

不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務に関し個人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもので政令で定めるものをいう。

所得税法第2条第1項20号 より抜粋

開業費の定義

前述の「政令で定めるもの」は以下の施行令の条文で定められており、以下のものが「開業費」に該当します。

  • 個人が支出する費用であること
  • 資産の取得価額に算入されるものでないこと
  • 前払費用に該当するものでないこと
  • 不動産所得や事業所得、山林所得を生ずべき事業に係るものであること(=雑所得に係るものはNG)
  • 事業開始までの間に生じたものであること
  • 開業準備のために特別に支出したものであること

つまり、「繰延資産」にはいくつかの種類があり、そのうちの1つが「開業費」ということです。

(繰延資産の範囲)

第七条 (一部省略)(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、個人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。

 開業費(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)

 開発費(一部省略)

 前二号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの

 イ 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用

 ロ 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用

 ハ 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用

 ニ 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用

 ホ イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用

 前項に規定する前払費用とは、個人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出する費用のうち、その支出する日の属する年の十二月三十一日(一部省略)においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。

所得税法施行令 より抜粋

どれくらい前までOKか

前述の条文上、「開業日からどれくらい前の支出まで遡れるか」については記載がありません。

よって、「間違いなく前述の要件に該当すること」を客観的に説明できる状態にしてあり、かつ、関連する客観的資料(領収書や支出した証拠など)を保管さえしていれば、理論上は開業費として計上可能ということになります。

「じゃあ説明さえできれば20年前の支出まで遡れるのか?」というと、常識的なラインというものはやはりあると思いますので、実務上はそのような挑戦的な処理をする方もいないと思われます。「20年前から開業を準備していた」ことを説明するのは結構無理があるかと思います…。

規定や依拠できる情報元が無い以上、このあたりは実務上の肌感触で考えざるを得ないため、「開業日から半年~2年くらい前までの支出ならいける」と言う税理士もいれば、「開業日から2~3か月前までの支出までならOK」という税理士もいたり、まちまちですので、ご自身で「自信をもって説明できるか」が大切です。

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