2026年(令和8年)9月24日、日本の税務行政は歴史的な転換点を迎えます。
国税庁の基幹システム「国税総合管理システム」、通称KSK(Kokuzei Sogo Kanri)システムが、約30年ぶりに全面刷新され、「KSK2」へと進化を遂げるからです。
この刷新は、単なるシステムの更新ではありません。AI(人工知能)とビッグデータを駆使した「デジタル徴税」への完全移行を意味します。経営者や個人事業主にとって、税務調査のリスクがどのように変化するのか、今から知っておくべき重要ポイントを解説します。
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KSK2とは?旧システムから何が変わるのか
これまでのKSKシステムは、昭和から平成にかけて構築された「メインフレーム(大型汎用機)」ベースの仕組みでした。情報が税目ごと(法人税、消費税、所得税など)に縦割りで管理されていたため、データの横断的な活用には限界がありました。新システム「KSK2」では、以下の3点が根本的に変わります。
データベースの統合(縦割り解消)
法人税、消費税、源泉所得税などのデータが一元管理され、税目間の不整合が瞬時に検出されます。
紙からデータへ
紙で提出された申告書もAI-OCRで即座にデータ化。インボイス制度や電子帳簿保存法によって蓄積されたデジタルデータと直接紐付けられます。
オープンシステム化
最新のAI技術や外部データとの連携が容易な柔軟な設計へと生まれ変わります。
「調査対象」選定精度はアップ
KSK2の最大の武器は、AIによる異常値検知です。これまでもコンピューターによる選定は行われてきましたが、KSK2では「業界平均との乖離」や「過去の取引パターンからの逸脱」をAIが多角的に分析します。
- 売上と経費の不自然な比率
- 売上と交際費の比率
- 原価率の増減
- 特定の取引先との急激な取引増減
- SNSやECサイトの公開情報との整合性
これらが自動的にスコアリングされ、「調査に行くべき優先順位」が明確化されます。つまり、調査対象事業者を「人間が選ぶ」のではなく、「AIが選ぶ」時代になることが想定されます。
まっとうな税理士と契約する重要度が増す
税務当局は、「どの税理士が誰の顧問をやっているか」という情報をガラス張りで確認できます。当然、AIにも「この事業者の顧問税理士は誰か」「どの税理士が付いている事業者が申告漏れが多いか」といった情報も紐付くことが想定されます。
つまり、以下のような税理士と顧問契約している事業者は、KSK2のAIによって、不利な判定をされる可能性が非常に高くなることが予想できます。
- 無資格者スタッフに丸投げでほぼノールックで決算申告をおこなっている
- 納税意識の低い事業者とばかり顧問契約を締結している
- 適当な内容の書面添付(33の2)をおこなっている
- 実態の伴わない出張旅費規程の導入を推進している
- ひとり社長法人に対して福利厚生費の導入を推進している
「納税者間の矛盾」がバレる自動チェック
KSK2の稼働により、調査官の手を借りずともシステムが自動的にアラートを出すようになることが予想されます。
つまり、取引先のデータ(資料せん)との突合も高速化されます。A社が支払った「外注費」と、B社が計上した「売上」が一致しない場合、双方への確認や調査が以前よりもスムーズに行われることになります。
納税者が準備しておくべき3つのこと
KSK2の始動に向けて、企業が取るべき対策は当然「隠すこと」ではありません。当たり前のことを当たり前にやることで「正確なデータを整えること」に尽きます。
- デジタル対応の徹底: 電子帳簿保存法やインボイス制度への対応は、単なる義務ではなく「税務署との情報格差を埋めるための自衛策」です。
- 月次決算の精度向上: 年に一度の決算で数字を合わせるのではなく、毎月の計上時点で整合性をチェックする体制を構築してください。
- 書面添付制度の活用: 税理士との信頼関係が構築できていれば「書面添付制度」を利用できる可能性があります。AIによる疑念を事前に払拭し、調査の省略や軽減を目指すことがより重要になります。
KSK2時代を生き抜くために
2026年9月のKSK2稼働は、正直に正しく申告している企業にとっては、不公平感をなくす歓迎すべき進化です。しかし、管理がずさんなままでは、意図しない「異常値」としてAIにマークされるリスクが激増します。
結局のところ、「当たり前のことを当たり前にやる」だけで、ずさんな事業者よりも一歩抜きんでることができます。
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