税金を納期限までに払えず、督促状が届いた、あるいは差し押さえを受けた。
そうした状況でも、税務署に申請して認められれば、財産の売却を待ってもらい、分割で納められる可能性があります。ただし、申請できるのは納期限から6か月以内に限られ、申請の進め方を誤ると認められず、同じ税金で出し直すことも難しくなるリスクがあります。
この記事では、税金の滞納で差し押さえが迫っている個人事業主・経営者の方に向けて、申請期限、条件、担保、認められないケースを説明します。
滞納から換価までの全体像
何もしないと進む流れ
左から右へ、段階が重くなります
納期限
この日までに国税を納める。
未納=延滞税がかかる
納期限までに納付しないと、納付するまでの日数に応じて延滞税がかかる。
督促状が届く
税務署から督促状が送られてくる。
財産の差押え
督促状を受けてもなお納付しないと、差押えなどの「滞納処分」を受けることがある。
猶予で止められる場合あり換価(売却)
差し押さえられた財産が売却される。
猶予で止められる場合あり出典:税務署「猶予の申請の手引」(令和8年4月)1ページ
税金を一度に払えないときの分割納付
税務署に申請して認められれば、差し押さえた財産の売却を待ってもらい、税金を分割で納められる、「換価の猶予」という手続きがあります。「換価」とは、差し押さえた財産を売ってお金に換え、税金に充てることを指します。
対象は、所得税・消費税・法人税など、税務署に納める税金(国税)です。申請書の名前にも「換価の猶予」と書かれているため、名前だけは覚えておくと手続で迷いません。
換価の猶予の効果
分割納付が認められると、すでに差し押さえられている財産の売却が待ってもらえます。差し押さえを受けていても、財産が売られる前であれば、申請する余地があります。
差し押さえによって事業を続けることや生活することが難しくなるおそれがある財産は、差し押さえを待ってもらえたり、解除されることがあります。
ただし、税務署長が必要と認めた場合に限られます。すべての財産の差し押さえが止まるわけではありません。
分割納付が認められている期間中の延滞税(納付が遅れた日数に応じて追加でかかる税金)は、軽くなる可能性があります。督促状(早く納めるよう求める通知)は止まりません。申請している間も、認められた後も送られてきます。督促状が届いたからといって、申請が断られたわけではありません。
申請期限は納期限から6か月以内
分割納付を申請できるのは、その税金の納期限から6か月以内です。
督促状が届いた日からではなく、もともとの納期限から数えます。気付いたときには残りわずか、ということも起こり得ます。
6か月を過ぎると、自分から申請して分割納付を求めることはできません。法律上は、税務署長の判断で財産の売却を待つ仕組みも別にありますが、納税者が申請して求める制度ではありません。
分割納付が認められる条件
次の5つをすべて満たす必要があります。
- 税金を一度に納めると、事業を続けることや生活することが難しくなるおそれがある
- 税金を納める意思がきちんとある
- 申請する税金のほかに、税務署に納める税金の滞納がない(ほかの税金も同時に申請している場合などを除きます)
- 納期限から6か月以内に申請書を出している
- 原則として、分割にしてほしい金額に見合う担保(納められなくなったときに備えて差し出す財産や保証人)を出す
「事業を続けることが難しくなるおそれ」とは、事業に不要な資産を売るなどして経営を見直しても、なお一度に納めると事業をやめざるを得なくなるおそれがある状態を指します。「生活することが難しくなるおそれ」とは、一度に納めると、必要最低限の生活費程度の収入も残らなくなる状態を指します。「納める意思がきちんとある」とは、その税金をほかの支払いより優先して納める意思があると、税務署長が認められることです。
つまり、ご自身の状況を税法上の規定に照らし合わせて判断する必要があります。
担保がいらないケース
次のいずれかに当てはまれば、担保は不要です。
- 分割にしてほしい金額が100万円以下(まだ金額が決まっていない延滞税を含みます)
- 分割で納める期間が3か月以内
- 担保として出せる財産がないなど、特別な事情がある
担保が必要な場合は、国債、土地、保証人など、法律で決められた種類の中から出すことになります。
申請書類は金額100万円が分かれ目
申請書に付ける書類は、分割にしてほしい金額が100万円以下か、100万円を超えるかで変わります。
- 100万円以下:換価の猶予申請書、財産収支状況書
- 100万円超:換価の猶予申請書、財産目録、収支の明細書
どちらの場合も、手元の預貯金、今後の毎月の収入と支出、売掛金や借入金の状況などを書き込みます。書いた数字をもとに、毎月いくら納めるかの計画(分割納付計画)を立てます。
分割納付が認められないケース
申請時点で納められるお金の未納付
申請書を出す時点の預貯金などのうち、おおむね1か月以内に必要な事業の資金や生活費を除いた金額は、すぐに納めるよう求められます。
この金額を納めないと、分割納付が認められない場合があります。
税務署の質問・帳簿確認への非協力
審査では、税務署の職員が事情や財産、収支について質問したり、帳簿を確認したりすることがあります。
当たり前ですが、「質問に答えない」「帳簿の確認を拒む」「うその帳簿を出す」といった場合は、認められません。
色々とご事情はあるかと思いますが、滞納状態の時点で、マイナス地点からスタートしているという認識を持つ必要があります。
- 自暴自棄になってしまい、喧嘩腰に接してしまう。
書類の手直しの期限切れ
書類の不足や誤りを直すよう求める通知(補正通知書)が届いた場合、届いた日の翌日から20日以内に直さないと、申請を取り下げたものとみなされます。
同じ税金についての再申請
認められなかった後や、取り下げたとみなされた後に、同じ税金について再び申請することは、申請が誠実にされたものでないとして、認められない理由に当たるとされています。
1回目の申請で書類をそろえ切ることが重要です。
認められた後の納付の遅れ・新たな滞納
決められた分割納付計画どおりに納めない場合や、分割中に新たに納めるべき税金を滞納した場合は、分割納付が取り消されたり、期間が短くされたりすることがあります。
予想できなかった事情など、やむを得ない理由がある場合は除かれます。
分割できる期間と毎月の納付額
分割できる期間は1年以内で、財産や収支の状況から、最も早く全額を納め終えられると認められる期間に限られます。
原則として、その期間中の毎月に分けて納めます。
審査の結果、希望した金額の一部だけ、希望より短い期間、希望と違う分割納付計画で認められる場合もあります。納得できないときは、決められた期間内に見直しを求める手続(不服申立て)ができます。
期間内に納め終えられないやむを得ない理由があれば、当初の期間と合わせて最長2年まで延ばせる場合があります。
申請前に確認すべきこと
分割納付の申請は、6か月の期限、今すぐ納める金額、毎月の納付額の3つを、申請書を出す前に固めておく必要があります。
毎月の納付額は、今後の収入と支出の見込みから決まります。見込みが甘いと、認められた後に計画どおり納められず、取消しにつながります。反対に、生活費や事業の資金を低く見積もりすぎると、事業や生活そのものが回らなくなります。
ご自身の状況でどの条件が問題になりそうか、申請前に何を確認・準備すればよいかを整理してお伝えします。納期限から6か月の期限が迫っている方は、早めにご相談ください。
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