これから教室を開こうとしている方が、税金の面で最初につまずきやすいのは「何を、いつまでに出すのか」と「月謝をどう申告するのか」「何が経費になるのか」などです。
この記事では、開業時に提出する届出、月謝を売上に計上する時期、自宅を教室にする場合の経費と家事按分、消費税とインボイス登録の判断、そして見落としやすい個人事業税まで、空手教室を運営する個人事業主の目線で順番に整理しました。
開業前の準備段階で読んでいただくことを想定した内容です。
空手教室・道場で関係する3つの税金
空手教室・道場を個人で運営する場合、関係する税金は所得税、消費税、個人事業税の3つです。
このうち開業直後から必ず向き合うことになるのは所得税で、消費税と個人事業税は一定の規模を超えてから関係してきます。
所得税は、月謝などの収入から必要経費を差し引いた利益に対してかかります。
消費税は、2年前の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかや、インボイス登録をするかどうかで納税義務が決まります。個人事業税は都道府県が課す地方税で、後述する事業主控除290万円を超える所得が出たときに納めます。消費税は特に複雑ですので、自己判断は通常おこなわず、税理士と相談しつつ進めます。
つまり、小規模なうちは所得税だけを押さえておけば足りるケースが多く、教室が大きくなるにつれて消費税と個人事業税が視野に入ってくる、という順番になります。
開業時に提出する3つの届出
| 主な書類 | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで | 所轄税務署 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 青色申告しようとする年の3月15日まで※1 | 所轄税務署 |
| 事業開始等申告書 | 事業開始の日から15日内※2 | 自治体 |
- ※1 その年の1月16日以後、新たに事業を開始等した場合には、その開始等の日から2か月以内。
- ※2 東京都の場合。
青色申告の承認申請書は期限が特に厳格です(他がどうでも良いという意味ではありませんのでご注意を)。原則はその年の3月15日まで、ただし1月16日以後に開業した場合は、開業の日から2か月以内が期限になります。
青色申告を選ぶと、複式簿記で記帳し期限内に申告することを条件に、令和8年分では最高65万円(e-Taxまたは電子帳簿保存を使わない場合は55万円、簡易な記帳の場合は10万円)を所得から差し引けます。法改正により、75万円控除も創設が予定されていますが、こちらは要件は厳しめです。

空手教室・道場の売上に計上する時期
教室の月謝
教室業のような業態は、一般的には、「役務提供(無形の専門サービスを提供)」になります。
人的役務の提供による収入金額は、「役務の提供を完了した日」に計上するのが原則とされ、期間の経過に応じて報酬を受け取る特約や慣習がある場合は、その期間に対応する分をその都度計上することとされています。
教室の月謝は、月ごとの指導に対応する対価ですので、原則としてその月が属する年の売上になります。仮に、11月に翌年3月までの5か月分をまとめて前払いで受け取った場合、当年の売上になるのは11月と12月の2か月分で、残りの3か月分は前受金として翌年の売上に回します。
半年分・1年分の一括払いや、入会金・年会費を設けている教室では、この振り分けが毎年発生します。生徒ごとに「いつ分の月謝か」がわかる記録を残しておくと、年末の処理が楽になります。
- 現金売上は危険なので、AirPAYやSquareなど、店舗型ビジネスに使えるキャッシュレス決済がおすすめです。
消費税も課税される
学校教育法の規定による場合は別ですが、そうでない場合、いわゆる「お稽古ごとの教室」は、消費税が課税されます。
「義務教育の学校の授業料が非課税だから、空手教室や道場の月謝も非課税だろう」と考える人は少ないと思いますが、念のため注意しましょう。
自宅の空手教室・道場で経費にできる支出
居住場所と一体
一階が、空手教室・道場で、二階に自分が住んでいる、などのケースです。
3種類の経費
| 区分 | 説明 | 経費 |
|---|---|---|
| 家事費 | 100%プライベートに係る経費 | NG |
| 必要経費 | 100%事業に係る経費 | OK |
| 家事関連費 | 家事費と必要経費の両方の側面がある経費 | 原則:全額NG 特例:区分できた部分だけOK |
- 個人事業や副業としての活動を開始すれば、生活費やプライベート経費も、必要経費として計上できると誤認している。
- 家事関連費は原則、全額必要経費に算入できず、特例として一定の場合にのみ、事業に関する部分だけ算入できるということを知らなかった。
面積で按分する方法が説明しやすいでしょう。総床面積80㎡のうち教室として使う和室が16㎡なら20%、といった具合です。光熱費は、稽古日数と1日あたりの使用時間から割合を出す方法が考えられます。いずれの場合も、按分の根拠となる面積図や稽古スケジュールを手元に残しておくことが必須です。
空手教室・道場運営で経費になりやすい支出
| 経費計上OK | 経費計上NG |
|---|---|
| ・生徒の道着(貸出する物) ・タオルや救急用品など専用の消耗品 ・広告チラシ ・ホームページ制作費 ・タイマー ・マット ・教材 ・専用電話代 ・会計ソフト代 ・第三者アルバイトスタッフ給与 | ・生徒負担の道着 ・(要件充足していない場合)親族への給与 ・自分自身の空手活動の諸経費全般 ・「単に同業者等と食事に行っただけ」の会食代 ・プライベート兼用のスマホ代で按分できないもの |
40万円未満の備品を買ったときの処理
取得価額が10万円以上の備品は、原則として資産に計上して耐用年数にわたり減価償却します。ただし青色申告をする中小企業者等には、少額減価償却資産の特例があり、一定額未満のものを取得した年に全額必要経費にできます。
税制改正により、この特例の対象となる取得価額は40万円未満(改正前は30万円未満)に引き上げられ、令和8年4月1日以後に取得して事業に使い始めた資産から適用されます。1年間に特例を使える合計額は300万円までという上限は変わりません。
また、この特例を使用しても、固定資産税(償却資産)の方は課税の対象となります。SNS等で「節税」言葉をそのまま真に受けて聞きかじっただけ知識を実践して、不要なものを購入し無駄にキャッシュアウトして手元資金を減らさないようにしましょう。本末転倒になります。
消費税とインボイス登録の判断
開業から当面は免税事業者になる理由
消費税の納税義務は、基準期間(個人事業者は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します。開業したばかりの1年目と2年目は基準期間の課税売上高がないため、原則として免税事業者になります。
その後も、前々年の課税売上高が1,000万円以下であれば免税が続きます。生徒数十人規模の教室であれば、この範囲に収まるケースが多いでしょう。
インボイス登録を検討すべきケース
インボイス(適格請求書)の登録をすると、免税事業者であっても課税事業者となり、消費税の申告と納税が必要になります。登録するかどうかは、生徒や取引先がインボイスを必要としているかで判断します。
個人の生徒から月謝を受け取る形が中心であれば、生徒側は仕入税額控除を行わないため、インボイスを求められる場面はほとんどありません。
登録すると納税と経理の負担が増えますので、取引の実態を確認してから判断することをおすすめします。
空手教室・道場にかかる個人事業税
個人事業税には青色申告特別控除の適用がないため、所得税の申告で差し引いた青色申告特別控除額を所得金額に加算して計算します。所得税では控除後の金額で判断していると、思っていたより早く課税の対象になることがあります。
税額は都道府県が計算し、原則として8月と11月の年2回、送付される納税通知書で納めます。所得税の確定申告や住民税の申告をしていれば、個人事業税の申告は別途必要ありません。
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