2024年以降に消費税インボイス登録。中小企業や新規開業個人事業者は?

当ページのリンクには広告が含まれています。

本コラムは以下のような方を対象としています。

  • 2024年以降に事業を開始する個人事業主
  • 2024年以降に法人を設立する経営者

2023年後半、散々話題になったインボイス制度ですが、ほとんどは2023年中にインボイス登録をする人たちを対象とした話が中心でした。

このコラムでは2024年に入ってから登録する場合の話を中心に解説しています。

目次

免税事業者が期中で登録するケース

最短で約2週間後をインボイス登録日できる

個人事業者だった場合で仮定しますが、

  • 2024年に入った時点では免税事業者であり、
  • しばらく免税事業者として過ごしていたが、
  • 2024年の途中でインボイス登録をすることになった

というようなケースです。

この場合、申請日から15日以降の日にインボイス発行事業者になる(&課税事業者選択届出なしで課税事業者になる)ことになります。「15日以降」なので20日後とか、30日後とかにしても大丈夫です。

「15日以降の日っていつ?土日は?祝日は?『申請日』も含めて数えるの?」となると思うので↓の国税庁サイトに載っている「登録希望日(EXCEL/200KB)」に申請日を入力して確認しましょう。

申請手続|国税庁 (nta.go.jp)

課税選択届出書の提出は不要

インボイス制度導入以前は、課税事業者となるためには「課税事業者選択届出書」の提出が必要でしたが、しばらくの間は暫定措置として、インボイスの登録申請書の提出を以て課税事業者となれます。

令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中において、令和5年 10 月1日後に登録を受ける場合には、適格請求書発行事業者の登録申請書に登録希望日(提出日から 15 日以降の登録を受ける日として事業者が希望する日)を記載することで、その登録希望日から課税事業者となる経過措置が設けられています(28 年改正法附則 44④、改正令附則 15②、基通21-1-1)。
したがって、この経過措置の適用を受けることとなる場合は、登録希望日から課税事業者と
なり、登録を受けるに当たり、課税選択届出書を提出する必要はありません

国税庁HP『消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A』問7 より抜粋

通知が来なくても希望通りになる

ちなみに、「インボイス発行事業者となる日」は最短で2週間後ですが、税務署側の手続きは1ケ月程度(e-Taxの場合)要することあります。

インボイス発行事業者になると、税務署から通知がきますが、税務署側の事情で通知が来なかった場合でも、自分が希望日として記載した「15日以降の日」に登録を受けたものとされます。

また、税務署長による登録が完了した日が登録希望日後となった場合であっても、登録希望
日に登録を受けたものとみなされます(改正令附則 15③)。

国税庁HP『消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A』問7 より抜粋

2年間は免税事業者に戻れなくなる

2024年4月15日に登録され課税事業者になると、2026年12月31日まで免税事業者になることはできません

(注)1 この経過措置の適用を受ける登録日の属する課税期間が令和5年 10 月1日を含まない場合は、登録日の属する課税期間の翌課税期間から登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については免税事業者となることはできません(28年改正法附則 44⑤)。

国税庁HP『消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A』問7 より抜粋

簡易課税を選択したい場合

免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に登
録を受けることとなった場合には、登録日(令和5年 10 月1日より前に登録の通知を受けた場
合であっても、登録の効力は登録日から生じます。)から課税事業者となる経過措置が設けられ
ています(28 年改正法附則 44④、基通 21-1-1)。
この経過措置の適用を受ける事業者が、登録日の属する課税期間中その課税期間から簡易
課税制度の適用を受ける旨を記載
した「消費税簡易課税制度選択届出書」を、納税地を所轄す
る税務署長に提出した場合には、その課税期間の初日の前日に消費税簡易課税制度選択届出書
を提出したものとみなされます(改正令附則 18)。
したがって、ご質問の場合、登録日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の
適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、その課
税期間から、簡易課税制度の適用を受けることができます

国税庁HP『消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A』問9 より抜粋

「簡易課税制度選択届出書」の以下の赤いチェックマークの箇所にチェックを付けて提出すると、提出した日の属する課税期間から簡易課税を適用することができます。

記載要領にも同様の説明が書いてあるので、提出するときは熟読してから届出書を作成しましょう。

国税庁HPより抜粋

以下のように、仮に2024年12月に「簡易課税制度選択届出書」を提出すれば、2024年1月1日(登録日の属する課税期間)から簡易課税の適用を受けることができます。

なお、以下の箇所ですが、経過措置により課税事業者となったのであり、課税事業者選択届出書(第9条第4項)の提出によって課税事業者となったわけではないので、「いいえ」にチェックをつけます。

簡易課税制度選択届出書より抜粋

「第9条第4項の規定により課税事業者を選択している場合」とは、以下の通り、課税事業者選択届出書を提出した場合のことですが、

 第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除されることとなる事業者が、

その基準期間における課税売上高(一部省略)が千万円以下である課税期間につき、

第一項本文の規定の適用を受けない旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には

当該提出をした事業者が当該提出をした日の属する課税期間の翌課税期間(当該提出をした日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が千万円を超える課税期間を除く。)中に国内において行う課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、

同項本文の規定は、適用しない。

消費税法第9条 より抜粋

経過措置で課税事業者となる場合は、以下の通り、「課税事業者選択届出書の提出は不要」とはっきり書いてあります。

21-1-1 28年改正法附則第44条第4項《適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置》の規定により、適格請求書発行事業者の登録開始日(一部省略)が

令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中である適格請求書発行事業者の登録がされた場合には、

当該登録開始日から当該課税期間の末日までの間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、法第9条第1項本文《小規模事業者に係る納税義務の免除》の規定は適用されないのであるから、

当該課税期間において免税事業者である事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けようとする場合には、登録申請書のみを提出すればよく、課税事業者選択届出書の提出を要しないことに留意する。

(注) 28年改正法附則第44条第4項の規定の適用を受け、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者は、当該登録を受けた課税期間の翌課税期間以後の課税期間についても法第9条第1項本文の規定の適用はないこととなる。
 なお、当該事業者(適格請求書発行事業者の登録を受けていないとすれば、同項本文の規定の適用がある事業者に限る。)は、登録開始日の属する課税期間が令和5年10月1日を含む場合、法第57条の2第10項第1号《適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める場合の届出》に規定する適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書を提出し、当該登録の取消しを受けることで、法第9条第1項本文の規定が適用されるが、登録開始日の属する課税期間が令和5年10月1日を含まない場合、登録開始日の属する課税期間の翌課税期間から登録開始日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、同項本文の規定は適用されない。

消費税基本通達より抜粋

新設法人や新規開業個人事業者の場合

事業開始課税期間から登録&課税事業者となる

2024年に入ってから新設された法人や、新たに開業した個人事業者については、2024年1月1日からインボイス発行事業者として登録され、かつ、課税事業者となる(課税選択届出不要)ことができます。

※ 免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合、経過措置により、課税選択届出書の提出を要せず、課税事業者となることができます(一部省略)。この場合においても、登録申請書に「課税期間の初日から登録を受けようとする旨」を記載することにより、事業を開始(設立)した課税期間の初日に遡って登録を受けたものとみなされ、課税期間の初日(登録日)から課税事業者となります。

国税庁HP『消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A』問11 より抜粋

従来も、新設法人や新規開業個人事業者は、「事業を開始した日の属する課税期間」に「課税事業者選択届出書」を提出すれば、「事業を開始した日の属する課税期間」から課税事業者になることができましたので、この点についてはインボイス制度導入前と同じです。

簡易課税について

なお、インボイス制度導入前より、「事業を開始した日の属する課税期間」中に「簡易課税制度選択届出書」を提出していれば、提出した課税期間から簡易課税の適用を受けることができますので、もし1年目から簡易課税にしたいのであれば、2024年12月31日までに提出すれば2024年1月1日から簡易課税適用となります。

(一部省略)当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間(当該届出書を提出した日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が五千万円を超える課税期間及び分割等に係る課税期間を除く。)については、第三十条から前条までの規定により課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、これらの規定にかかわらず、次に掲げる金額の合計額とする。この場合において、当該金額の合計額は、当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。

消費税法第37条 より抜粋

インボイス登録自体は難しくないが…

インボイス登録申請書はA4の様式が2枚です。情報量も多くないのでそれ自体は難しくありません。

しかし、問題は「インボイス登録するとそのあとどうなるか」「2期目以降にどのような影響があるのか」「自身のビジネスに照らし合わせるとどうするのが良いのか」「簡易課税が絡んでくるとどうなるのか」等など、「内容面の」検討事項がたくさんあるという点です。

これらを非税理士業界の方々が判断するのは結構大変なので、税理士へ相談することをおすすめします(ちなみに税理士ですら、このような相談が来た場合、結構本腰を入れて内容を精査するのでそれぐらいは複雑です)。

参考元情報

0022012-012.pdf (nta.go.jp)

01-01.pdf (nta.go.jp)

その他参考コラム

お問合せ

澁谷税理士事務所は、主に渋谷・新宿・池袋・練馬など首都圏西側地域の事業者様からご相談を受けることが多い、練馬駅近くの事務所です。オンラインにて全国対応もしております。

マネーフォワードクラウドなどのオンラインツールをフル活用し、ペーパーレス&キャッシュレスを目指してサービス展開しております。

主に創業支援や小規模な事業者(年商約数百万円~5億円規模、人員1名~100名規模)向け税務顧問を取り扱っております。

ご紹介の無い方でもまずはお気軽にお問合せ下さいませ。

公認メンバー
創業支援パートナー
弥生会計アドバイザー

コラムに関する免責事項

当サイト内のコラムの内容をご参照・ご活用等された場合、以下に掲げる内容についてご同意頂いたものとみなさせて頂きますので必ずご一読下さい。

  • 当サイト内のコラムの内容については正確性等を高めるよう努めておりますが、その内容に対していかなる保証をするものでも御座いません。
  • 当サイト内のコラムに記載された情報(第三者から提供された情報も含む。)をご利用頂いたことにより損害や不利益等が生じた場合でも、当サイト管理者は一切責任を負いません。
  • ご自身の税務等に関するご判断に際しては、最終的には必ずご自身の顧問税理士等へご相談の上、ご自身の責任においてご判断下さい。
  • 当サイト内のコラムは簡潔さに優先順位を置いておりますので、一定の情報は割愛させて頂いております。
  • 当サイト内のコラムはその執筆時点における法令等の情報に基づき整理したものです。
    法令等は日々改正されるものであり最新の法改正等の内容が未反映となっている場合もあるため、必ずご自身で最新の法令等の情報をご確認下さい。
  • 当サイト内のコラムはあくまで当サイト管理者の私見であり、他の専門家と解釈が相違する場合も御座います。
  • 当サイト内のコラムは予告なしに変更や更新、削除されることが御座います。
  • 当サイト内のコラムに記載された情報の無断転載等は固く禁じます。
目次