本コラムは以下のような方を対象としています。
- 進行期に補助金を受領した
- 顧問税理士が補助金の税務会計処理が分かっていない
- 顧問税理士が圧縮記帳の税務処理を分かっていない
国庫補助金等
そもそも受け取った補助金等が税法上の「国庫補助金等」に該当するのかどうかをまず判断しなければなりません。
長いので割愛しますが、圧縮記帳の対象となる国庫補助金等は以下条文に記載されているものが対象となります。
(国庫補助金等の範囲)
法人税法施行令 より
第七十九条 法第四十二条第一項(国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)に規定する国庫補助金等は、国又は地方公共団体の補助金又は給付金のほか、次に掲げる助成金又は補助金とする。
一 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)第四十九条第二項(納付金関係業務)に基づく独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の同条第一項第二号、第三号及び第五号から第七号までに規定する助成金
二 福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律(平成五年法律第三十八号)第七条第一号(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の業務)に基づく国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成金
三 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法第十五条第三号(業務の範囲)に基づく国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成金(外国法人、外国の政府若しくは地方公共団体に置かれる試験研究機関(試験所、研究所その他これらに類する機関をいう。以下この号において同じ。)、国際機関に置かれる試験研究機関若しくは外国の大学若しくはその附属の試験研究機関(以下この号において「外国試験研究機関等」という。)又は外国試験研究機関等の研究員と共同して行う試験研究に関する助成金を除く。)
四 特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(令和二年法律第三十七号)第二十九条第一号(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の業務)に基づく国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成金
五 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法第十五条第十五号に基づく国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の供給確保事業助成金(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)第三十一条第三項第一号(安定供給確保支援法人の指定及び業務)に規定する助成金をいう。第九号において同じ。)
六 独立行政法人農畜産業振興機構法(平成十四年法律第百二十六号)第十条第二号(業務の範囲)に基づく独立行政法人農畜産業振興機構の補助金
七 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法(平成十四年法律第百八十号)第十三条第二項第一号から第三号まで(業務の範囲)に基づく独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の補助金
八 日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律(平成十年法律第百三十六号)附則第五条第一項第一号(機構の行う会社等への助成金の交付等の業務)に基づく独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の助成金のうち財務省令で定める使途に充てられるもの
九 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構法(平成十四年法律第九十四号)第十一条第一項第二十五号(業務の範囲)に基づく独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構の供給確保事業助成金
十 日本たばこ産業株式会社が日本たばこ産業株式会社法(昭和五十九年法律第六十九号)第九条(事業計画)の規定による認可を受けた事業計画に定めるところに従つて交付するたばこ事業法(昭和五十九年法律第六十八号)第二条第二号(定義)に規定する葉たばこの生産基盤の強化のための助成金
IT導入補助金についてはHPに以下のようなリリースがあります。親切ですね。
サービス等生産性向上 IT 導入支援事業事務局にて実施しております「サービス等生産性
よくあるご質問 | IT導入補助金2024
向上 IT 導入支援事業」は国からの補助金を原資として、サービス等生産性向上 IT 導入支
援事業事務局から補助対象者に交付されるものであり、法人税法第 42 条及び所得税法第 42
条に規定する国庫補助金等に該当します。
会計上の処理の一例
直接減額方式
補助金受領時
現金預金 | 1,000,000 | 国庫補助金収入 | 1,000,000 |
資産取得時
機械装置 | 3,000,000 | 現金預金 | 3,000,000 |
仮払消費税 | 300,000 |
決算整理仕訳(1年目)
固定資産圧縮損 | 1,000,000 | 機械装置 | 1,000,000 |
減価償却費 | 200,000 | 機械装置 | 200,000 |
決算整理仕訳(2年目)
減価償却費 | 400,000 | 機械装置 | 400,000 |
積立金方式
補助金受領時
現金預金 | 1,000,000 | 国庫補助金収入 | 1,000,000 |
資産取得時
機械装置 | 3,000,000 | 現金預金 | 3,000,000 |
仮払消費税 | 300,000 |
決算整理仕訳(1年目)
減価償却費 | 300,000 | 機械装置 | 300,000 |
繰越利益剰余金 | 1,000,000 | 圧縮積立金 | 1,000,000 |
圧縮積立金 | 100,000 | 繰越利益剰余金 | 100,000 |
決算整理仕訳(2年目)
減価償却費 | 600,000 | 機械装置 | 600,000 |
圧縮積立金 | 200,000 | 繰越利益剰余金 | 200,000 |
税務上の処理
要件
- 清算中の法人でないこと
- 一定の経理をしていること
- 固定資産の取得や改良に充てるための国庫補助金等を貰っている
- 交付された事業年度においてその交付目的に適合した固定資産を取得又は改良している
- その事業年度終了時までにその補助金の返還不要が確定している
細かく言えば上記要件に当てはまっていない場合でも、圧縮記帳が認められるケース(特別勘定を設定するケース)がありますが、本コラムでは割愛します。
税務上認められる費用
「国庫補助金等の返還不用額」≶「資産の取得や改良に充てた額」でいずれか小さい方です。
この金額を超えて会計上費用していたら、その差額は税務上は否認(所得に加算する調整)されます。
税務調整のやり方
直接減額方式
取得したのが減価償却資産だっとします。土地のような非減価償却資産の場合はまた別の調整方法になります。
区分 | 期首① | 減算② | 加算③ | ④期末 |
減価償却超過額 | 50,000 | 50,000 |
この50,000の算出方法は以下の通りです。
①圧縮超過額:会計上圧縮額1,000,000 - (「国庫補助金等の返還不用額」≶「資産の取得や改良に充てた額」のいずれか小さい方)
②税務上の償却限度額:(本来の取得価額 - 圧縮による損金算入額) × 償却率 × ●か月/12か月
③(会計上償却額200,000 + ①) - ② = 50,000
積立金方式
区分 | 期首① | 減算② | 加算③ | ④期末 |
機械圧縮積立金積立 | △1,000,000 | △1,000,000 | ||
機械圧縮積立金積立超過額 | 50,000 | 50,000 | ||
減価償却超過額 | 20,000 | 20,000 |
①積立超過額:会計上積立額1,000,000 - (「国庫補助金等の返還不用額」≶「資産の取得や改良に充てた額」のいずれか小さい方) = 50,000
②税務上の償却限度額:(本来の取得価額 - 圧縮による損金算入額) × 償却率 × ●か月/12か月
③会計上償却額300,000 - ② = 20,000
圧縮記帳の種類
根拠 | 圧縮記帳の種類 | 特別償却 特別償却準備金 との併用 | 特別控除
法人税法 | 国庫補助金等 | ○ |
法人税法 | 保険差益 | ○ |
法人税法 | 交換 | ○ |
租税特別措置法 | 買換え | × |
租税特別措置法 | 収用等 | × |
租税特別措置法 | 特定交換 | × |
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