フリーランスへ。300万円超でもNG?事業所得と業務に係る雑所得

個人事業一本で生計を立てている方は別ですが、副業が一般的になった時代で、給与所得を得ながら副業をやったり、メインの収入源が別でありながら副業をしたり、という方も増えています。

ただ、何でもかんでも事業所得として認められるわけではないため、自分が得ている収入の所得区分が何なのかの判定を誤らないようにする必要があります(本来雑所得に該当するものを勝手に事業所得として申告すると調査があった際に指摘される可能性も)。

目次

判定方法

千葉県大多喜町のHPに掲載されているフローチャート図を掲載します。

【事業所得を申告するみなさまへ】事業所得と業務に係る雑所得の区分の明確化について/大多喜町公式ホームページ

このチャートはとてもよくまとめられています。「売上300万円超で帳簿等を保存してれば事業所得でOK!」のような詰めがアマアマな情報もネット上でたくさん散見されますが、一番大事な「社会通念による判定」(「事業所得と認められる事実があるか(※2)」の箇所)についてもきちんと触れられているからです。

フローチャート図 (PDFファイル: 52.3KB)

社会通念による判定

通達や国税庁説明資料

「社会通念による判定」の根拠は以下です。

35-2 次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。(平元直所3-14、直法6-9、直資3-8、令4課個2-21、課資3-10、課審5-13改正)

(1) 動産(法第26条第1項《不動産所得》に規定する船舶及び航空機を除く。)の貸付けによる所得

(2) 工業所有権の使用料(専用実施権の設定等により一時に受ける対価を含む。)に係る所得

(3) 温泉を利用する権利の設定による所得

(4) 原稿、さし絵、作曲、レコードの吹き込み若しくはデザインの報酬、放送謝金、著作権の使用料又は講演料等に係る所得

(5) 採石権、鉱業権の貸付けによる所得

(6) 金銭の貸付けによる所得

(7) 営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得

(8) 保有期間が5年以内の山林の伐採又は譲渡による所得

(注) 事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
 なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。

法第35条《雑所得》関係|国税庁 より

具体的にどんな判定のしかたをするのかについては以下があります。

3 本通達の(注)の前段では、「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」という取扱いを明らかにしています。
この社会通念による判定について、最判昭和 56 年4月 24 日では、「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」と判示しています。
また、東京地判昭和 48 年7月 18 日では、「いわゆる事業にあたるかどうかは、結局、一般社会通念によって決めるほかないが、これを決めるにあたっては営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無、自己の危険と計算における企画遂行性の有無、その取引に費した精神的あるいは肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無、その取引の目的、その者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点が検討されるべきである」と判示しています。
したがって、その所得を得るための活動が事業に該当するかどうかについて、社会通念によって判定する場合には、上記判決に示された諸点を総合勘案して判定することとなります。

国税庁資料より

4 本通達の(注)の後段では、「その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が 300 万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。」としています。
事業所得と業務に係る雑所得の区分については、上記の判例に基づき、社会通念で判定することが原則ですが、その所得に係る取引を帳簿書類に記録し、かつ、記録した帳簿書類を保存している場合には、その所得を得る活動について、一般的に、営利性、継続性、企画遂行性を有し、社会通念での判定において、事業所得に区分される場合が多いと考えられます。

 
(注)その所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存している場合であっても、次のような場合には、事業と認められるかどうかを個別に判断することとなります。
① その所得の収入金額が僅少と認められる場合
例えば、その所得の収入金額が、例年、300 万円以下で主たる収入に対する割合が 10%未満の場合は、「僅少と認められる場合」に該当すると考えられます。
「例年」とは、概ね3年程度の期間をいいます。
② その所得を得る活動に営利性が認められない場合
その所得が例年赤字で、かつ赤字を解消するための取組を実施していない場合は、「営利性が認められない場合」に該当すると考えられます
「赤字を解消するための取組を実施していない」とは、収入を増加させる、あるいは所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合をいいます。

 
他方で、その所得に係る取引を帳簿に記録していない場合や記録していても保存していない場合には、一般的に、営利性、継続性、企画遂行性を有しているとは認め難く、また、事業所得者に義務付けられた記帳や帳簿書類の保存が行われていない点を考慮すると、社会通念での判定において、原則として、事業所得に区分されないものと考えられます。
ただし、その所得を得るための活動が、収入金額 300 万円を超えるような規模で行っている場合には、帳簿書類の保存がない事実のみで、所得区分を判定せず、事業所得と認められる事実がある場合には、事業所得と取り扱うこととしています。
(注)令和2年度の税制改正では、業務に係る雑所得について、前々年の収入金額が 300 万円を超える場合には、取引に関する書類の保存を義務付ける改正が行われたところです。
本通達の「収入金額 300 万円」については、上記の改正において、収入金額 300 万円以下の小規模な業務を行う方について、取引に関する書類の保存を求めないこととされたことを踏まえたものです。

国税庁資料より

具体例

判示で述べられている、社会通念による判定のための各項目の具体例を独断と偏見で整理します(あくまで弊所私見ですのでこれに従えば問題ない、という意味ではありませんのであしからず)。

判定項目具体例
営利性・有償性ビジネスとして収益獲得のために活動している
継続性・反復性継続して繰り返しその商売をおこなっている
自己の危険と計算における企画遂行性会社を退職してそのビジネスに全振りしている、
そのビジネスのために借入をしている、
料金プランやサービスメニュー、契約書などを作成している
精神的・肉体的労力1日の大半をそのビジネスのために費やしている
人的・物的設備人を雇用している、
仕事道具をそろえている、
仕事用の事務所を用意している
取引の目的事業として成り立たせるため(既存収入の足し、ではなく)に活動している
社会的地位医師免許を有している、
弁護士登録をしている
生活状況そのビジネスで生計を立てている、
他にメインとなる収入源がない

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