本コラムの対象者
- はじめて消費税の課税事業者になった方
- インボイス対応がよく分かっていないという方
自計化しているときは要確認
帳簿(仕訳帳など)に「この項目を記載しなければならない」という決まりがあります。
会計ソフトの機能で自動で記載されるものもあれば、されないものもあるので、自計化している事業者は内容を理解する必要があります。
売手側
対象者
以下の全てに該当する者が対象です。
- 課税事業者
課税事業者は、帳簿を備え付けて、これに取引を行った年月日、内容(軽減税率の対象品目である場合は、その旨)、税率の異なるごとに区分した金額、相手方の氏名または名称などの必要事項を整然とはっきり記載し、この帳簿の閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、事業者の納税地またはその事業に係る事務所等で保存しなければなりません(注)。
また、課税事業者(簡易課税および2割特例を選択した事業者を除きます。)が仕入税額控除および売上対価の返還等の適用を受けようとする場合には、一定の帳簿(仕入税額控除の場合は帳簿および適格請求書等)の保存が要件とされています。詳しくは、コード6496「仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」及び6497「仕入税額控除のために保存する帳簿及び請求書等の記載事項」をご参照ください。
なお、これらの記載事項を充足するものであれば、商業帳簿でも所得税・法人税における帳簿でも差し支えありません。
国税庁HP『No.6621 帳簿の記載事項と保存』より抜粋
記載事項
取引区分 | 帳簿への記載事項 |
---|---|
資産の譲渡等(特定資産の譲渡等を除く)を行った場合 | ①取引の相手方の氏名または名称、②取引年月日、③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)、④税率の異なるごとに区分した支払対価の額 |
売上返品を受けたり、売上値引きや売上割戻し等を行った場合 | ①売上返品等に係る相手方の氏名または名称、②売上返品等に係る年月日、③売上返品等の内容(軽減税率の対象品目である旨)、④税率の異なるごとに区分した売上返品等に係る金額 |
仕入返品をしたり、仕入値引きや仕入割戻し等を受けた場合 | ①仕入返品等に係る相手方の氏名または名称、②仕入返品等に係る年月日、③仕入返品等の内容(軽減税率の対象品目である旨)、④仕入返品等に係る金額 |
貸倒れが生じた場合 | ①貸倒れの相手方の氏名または名称、②貸倒れ年月日、③貸倒れに係る資産または役務の提供内容(軽減税率の対象品目である旨)、④税率の異なるごとに区分した貸倒れに係る金額 |
課税貨物に係る消費税額の還付を受けた場合 | ①還付を受けた年月日、②課税貨物の内容、③還付を受けた消費税額 |
買手側
対象者
以下の全てに該当する者が対象です。
- 課税事業者
- 簡易課税を選択していない
- 2割特例を選択していない
- 仕入税額控除又は売上対価の返還等の適用を受けようとしている
記載事項
取引区分 | 帳簿への記載事項 |
---|---|
課税仕入れ | ・課税仕入れの相手方の氏名又は名称 ・課税仕入れを行った年月日 ・課税仕入れに係る資産又は役務の内容(軽減対象資産の譲渡等である場合はその旨) ・課税仕入れに係る支払対価の額(税込) |
特定課税仕入れ | ・特定課税仕入れの相手方の氏名または名称 ・特定課税仕入れを行った年月日 ・特定課税仕入れに係る支払対価の額 ・特定課税仕入れである旨 |
保税地域からの課税貨物の引取 | ・課税貨物を保税地域から引き取った年月日(特例申告書を提出した場合は、提出日又は決定通知を受けた日) ・課税貨物の内容 ・課税貨物の引取に係る消費税額及び地方消費税額又はその合計額 |
帳簿保存のみで仕入税額控除が認められる取引 | ・「3万円未満の鉄道料金」など ・「入場料金」など ・「○○市 自販機」「A銀行B支店ATM」など |
2割特例などの適用を受ける | 「80%控除対象」「免税事業者からの仕入れ」など |
マネーフォワードクラウドの場合
通常の「課税仕入れ」だった場合を例にします。
「相手方の氏名又は名称」は「取引先」機能を使うか、摘要欄に「ABC株式会社」のように自分で記載します。マネーフォワードクラウドの場合、クラウドBoxとの連携と電子帳簿保存法の関係があるので、摘要欄に自分で記載することをおすすめします。また、ここは正式名称でしっかり記載します。相手の連絡先が明らかであるなどにより屋号を記載することは認められます。
(6) 帳簿に記載すべき氏名または名称
課税仕入れの相手方については、その「氏名または名称」を帳簿に記載することとされていますから、例えば、個人事業者であれば「田中一郎」等と、また、法人であれば「株式会社鈴木商店」等と記載することが原則です。
ただし、正式な氏名または名称およびそれらの略称が記載されている取引先名簿が備え付けられていることなどにより課税仕入れの相手方が特定できる状況にある場合には、例えば「田中」、「鈴木商店」のような略称による記載であっても差し支えありません。
また、飲食店であれば「日比谷食堂」、フランチャイズのコンビニエンスストアであれば「ABチェーン霞が関店」のような屋号等による記載であっても、電話番号が明らかであること等により課税仕入れの相手方が特定できる場合には、正式な氏名または名称の記載でなくても差し支えありません。
国税庁HP『No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項』より
「年月日」「支払対価の額」は仕訳を計上した時点で入力します。
「資産又は役務の内容」は摘要欄に「インターネット代」のように自分で記載する必要があります。
帳簿のみで仕入税額控除が認められる取引
3万円未満の公共交通機関に支払った料金などについては、「3万円未満の鉄道料金」のような文言を摘要欄に自分で記載しなければならないのでひと手間生じます。
さらに面倒なのは、ATMなどの自販機を利用した場合、「相手方の住所又は所在地」も摘要欄に自分で記載しなければなりません。
国税庁がリリースしている情報によれば、番地までは不要の様ですが、これでもけっこうな事務負担です。
8割控除など
マネーフォワードクラウドの場合は、上記のように、「80%控除」と自動で表示してくれます。
参考元情報
No.6621 帳簿の記載事項と保存|国税庁 (nta.go.jp)
No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項|国税庁 (nta.go.jp)
その他参考記事
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