「100万円未満の絵画を購入すると節税になる」と聞いたことがある方もいるかと思います。
何とも耳障りの良い情報ですが、当然、税務の世界では適用要件というものがあるため、聞きかじった情報だけで実行してしまうとしっぺ返しを食らうことになります。
本コラムでは、2026年4月施行の最新の税制改正の内容も盛り込んで、コンプライアンス体制をきちんと整えたうえでおこなうアート節税を現役税理士が解説しています。
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絵画などアートがなぜ節税になる?
原則として、100万円未満など一定の要件を満たすと、たとえば応接室などに飾る絵画やアート作品の購入代金が、必要経費または損金になります。
一見、ぜいたく品のように見えるものが事業経費になるため、「100万円未満の絵画を購入すると節税になる!」と珍しいテクニックであるかのように言われます。
「100万円未満」であれば何でもOKというほど簡単な話ではないため、実際に実行するためにはきちんと適用要件を満たしているかどうかを確認しなければなりません。
平成27年1月1日前に取得したアート作品の場合、取扱いが変わります。本コラムでは、平成27年1月1日以後に取得するアート作品のみに限定して解説しています。
アート節税の要件
事業の用に供していること
当然ですが、社長個人の趣味でプライベートで購入した美術品や絵画、アート作品はすべて経費になりません。事業に使用していることが大前提です。
そのため、たとえば、応接室に飾る、自社ビルのエントランスに飾っているなどの事実関係が必要になります。ご自身で「これは事業に使っている」と主観的に主張するだけでは無意味で、だれがどう見ても、そのアート作品が事業に使われていることがわかる客観的事実が必須です。
- 応接や来客が無い業種である。
- 自宅兼事務所の玄関に飾っているだけ。
- バーチャルオフィスである。
アート節税の100万円基準
| 取得価額 | 価値の減少 | 事業経費 |
|---|---|---|
| 100万円未満(原則) | する | |
| 100万円未満(例外) | しない(時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなもの) | |
| 100万円以上(原則) | しない | |
| 100万円以上(例外) | する(時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの) |
100万円以上でも減価償却できるもの
- 会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として取得されるものであること。
- 移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること。
- 他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。
たとえば上記のすべて(いずれか、ではなく)を満たすアート作品は、たとえ100万円以上であったとしても、減価償却により事業経費化することができるとされていますが、見ての通り、そうそう満たせるような要件ではなく、一部の特殊な業種にのみ適用されるものです。小型のアート作品であれば、ほぼ間違いなく「移設することが困難」ではありません。
上記は一例ですので、上記に該当しないものであっても、「時の経過により価値減少することが明らか」だという説明できるのであれば、理論上は減価償却できる可能性もゼロではありません。
ただ、税務のように厳しく客観性を追求される分野では「減少することが明らか」を説明するのはほぼ不可能ですので、実務上は100万円以上の場合は、高確率で減価償却(経費化)できないと考えておいたほうが良いでしょう。
アート作品の価格ごと税務処理の違い
10万円未満
取得価額が10万円未満のアート作品は、一括で事業経費にすることができます。
この取得価額は、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します。例えば、応接セットの場合は、通常、テーブルと椅子が1組で取引されるものですから、1組で10万円未満になるかどうかを判定します。
10万円以上20万円未満
この金額レンジであり、かつ、税法上の「一括償却資産」に該当する場合、3年に分けて少しずつ償却(経費化)することができます。この税制を選択した場合、後述の固定資産税(償却資産)の課税の対象にはなりません。
20万円以上40万円未満
一定の要件に該当する事業者は、一括で償却することができます。ただし、この税制を選択した場合、後述の固定資産税(償却資産)の課税の対象になります。
従来は、「30万円未満」でしたが、2026年4月~は「40万円未満」になり、一度に償却できる減価償却資産の範囲が広くなりました。
40万円以上100万円未満
一括で償却はできませんが、減価償却によって少しずつ経費化することができます。
100万円以上
前述の通り、原則として、事業経費にすることはできません。売却するときにもし市場価値がつく場合、収入として計上され課税されることになります。
この場合、事業経費にもできず、売却して課税されるため単に節税目的で高価なアート作品を購入することは悪手といえます。そういったアート作品は趣味としてプライベートで購入すべきものです。
固定資産税(償却資産)も生じることも
アート作品にも固定資産税(償却資産)が課せられることがあります。法人税の節税ばかりに捉われ、他の税目ではどのような扱いになるのかという視点が欠けてしまわないように注意しましょう。
償却資産に該当するものの合計の課税標準額150万円未満の場合には、結果的に課税されないこともありますが、仮にそうだとしても、申告そのものはおこなう必要があります。
付随費用によって100万円以上となるケース
「取得価額100万円未満かどうか」は付随費用も含めて判定します。アーティストや画商側が、購入者側の節税のために作品価格を90万円台で設定しているようなケースもありますが、付随費用を含めた場合、結果的に100万円以上となってしまうこともあります。
この付随費用かどうかの判定も困難を極めることがあるため、自己判断はしないようにしましょう。専門家への相談をせずに進めてしまった結果、「100万円未満として事業経費計上できると考えていたが、購入後、いざ決算申告のタイミングで税理士に精査してもらったところ、税務上は100万円以上となることが発覚し、経費計上できなくなった」ということもあります。
- アート作品単体の価格しか見ていない。
よくある質問FAQ
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