キャバクラ、ラウンジ、ホストクラブ、風俗などのお仕事で受け取るお金は、多くの場合「給与」ではなく「報酬」として扱われ、お店では年末調整が行われません。そのため、ほとんどの夜職の方は確定申告はご自身でおこなう必要があります。
この記事では、確定申告が必要になる収入のライン、ドレス代やヘアセット代を経費にできるか、領収書や明細がない場合の対応、昼職の勤務先や家族に知られるかどうか、保育園などの手続きで所得証明が必要になったときの扱いを整理します。
夜職は目を付けられやすい

申告漏れが高額な業種ランキングで毎年ほぼランクインします。さらに、2026年から、税務署が使うシステムにAIが実装されるため、今後はより一層、税務申告の不備などが洗い出しされやすくなることが予想されます。
夜職が確定申告必要になるライン
夜職を本業にしている場合
夜職の収入だけで生活している方は、収入から経費を差し引いた金額(所得)が、基礎控除などの所得控除の合計額を超えると確定申告が必要になります。
会社員の場合は、収入額に応じて給与所得控除が自動的に決まりますが、「報酬」で収入を得ている方には給与所得控除がなく、実際にかかった経費を差し引いて計算します。経費の額は人によって違うため、収入額だけで判定することはできません。
昼職と掛け持ちしている場合
昼の会社で年末調整を受けている方は、夜職の収入が報酬か給与かで判定が変わります。
夜職が報酬(業務委託)の場合は、収入から経費を引いた所得が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要です。
なお、20万円以下であれば所得税の確定申告は不要と言う話は国税(所得税)の話です。所得が1円でも生じている場合、地方税(住民税)の申告は別途必要です。つまり、利益が1円でも生じているのであればいずれにせよ「何かしなければならない」と覚えておきましょう。
複数の店舗や出稼ぎで収入がある場合
在籍店や出稼ぎ先が複数ある方は、すべての収入を合算して判定します。1店舗ごとの金額が少なくても、合計すると申告が必要な水準になることが多くあります。
お店ごとに支払明細の形式が違うため、月単位で明細を保管しておくと集計の手間が大きく減ります。
お店から引かれている税金
報酬から差し引かれる金額の計算方法
報酬から引かれているのは、「ホステス等に支払う報酬・料金」に対する源泉所得税および復興特別所得税です。税率は10.21%ですが、報酬の全額にかかるわけではなく、一定額を差し引いた後の金額にかかります。
計算式は次のとおりです。
(報酬の額 − 5,000円 × 計算期間の日数)× 10.21%
「計算期間の日数」は出勤日数や営業日数ではなく、報酬の計算のもとになった期間の初日から末日までの全日数です。計算期間が30日間で報酬が60万円の場合、(60万円 − 15万円)× 10.21% = 45,945円が差し引かれます。
引かれていても確定申告が必要な理由
差し引かれている金額は、税額の精算ではなく概算での前払いです。経費も、社会保険料控除や生命保険料控除といった所得控除も、一切反映されていません。
正しい税額を計算した結果、前払いした金額のほうが多ければ差額が戻り、少なければ不足分を納めることになります。経費が多い方ほど、還付になる可能性が高くなります。
夜職で経費にできる支出とできない支出
| 経費計上できる可能性あり | 経費計上できない |
|---|---|
| 仕事でしか着用しない自己負担の衣装代 送迎のない店に行くための自己負担交通費 領収書保管用のファイル代 仕事専用スマホ 性病検査料(専業の場合) 指名獲得のための研修費 | プライベートと明確に区別できないメイク代 美容整形代 ネイル代 プライベートで使用するアクセサリー代 プライベートでも使用するスマホ代 ジム代 エステ代 コンタクトレンズ代 |
お店で着用するために購入した専用ドレスは、経費になります。仕事以外では着用しないものであれば、業務との関連を説明しやすいです。
気を付けなければならないのは、美容代やネイル代などです。残念ながら、これらはプライベートでもその効果を享受しているため、100%必要経費とはいえません。プライベートと事業の両方の側面を持っている経費は「家事関連費」と呼ばれますが、客観的かつ合理的にプライベートと事業とを区別しなければなりません。しかし、「ネイル代のうち、いくらが事業部分か」を区別することは現実的に不可能ですので、このような場合は全額必要経費になりません。
- 仕事関係者と一緒にいたときに要したもの=全て必要経費、と考えている。
- ネイルなど「プライベートでもその効果を享受している支出」も必要経費にしている。
領収書や明細がない場合の対応
領収書やレシートをなくした場合
支払った事実を別の資料で客観的に(主観的はNG)示せれば、経費として認められる可能性もゼロではありません。クレジットカードの利用明細、銀行口座の履歴、店舗からのメールや予約履歴などが代替資料になり得ます。
ただし、領収書等が無い時点で、かなり不利な状態からスタートしていると覚えておきましょう。
現金で支払って記録が何も残っていない場合は、出金伝票に日付・金額・支払先・内容を記載して残す方法があります。ただし、客観的な記録がまったくない支出は認められませんので、日頃から保管しておくことが重要です。
お店から支払明細をもらえない場合
明細がなくても、ご自身で受取額の記録を作れば申告できます。日付ごとの受取額と、引かれた金額をメモや表に残してください。
銀行振込であれば通帳の履歴が記録になります。日払いで現金を受け取っている場合は、その日のうちに受取額を記録する習慣をつけると、後から集計できるようになります。
慎重な方の場合、受領した現金をスマホで撮影する人もいます。
昼職の勤務先や家族に知られるかどうか
昼職の会社に知られる経路
昼の会社に夜職の収入が知られる主な経路は、住民税の通知です。夜職の収入が報酬(事業所得または雑所得)であれば、確定申告書で住民税の納付方法を「自分で納付」と選択することで、夜職分の住民税を勤務先経由ではなくご自身で納める形にできます。
ただし、夜職の収入が給与として支払われている場合は、この方法を選べません。自治体によって取扱いが異なることもあるため、確実を期すなら事前に確認しておくことをおすすめします。
親や配偶者に知られる経路
扶養に入っている方は、所得が扶養の要件を超えると扶養から外れます。その結果、家族の税額が変わるため、収入があることが伝わる場合があります。
所得証明が必要になる場面への影響
保育料や入園選考の判定には、前年の所得が使われます。確定申告をしていないと所得を証明する書類が発行されず、手続きが進まないことがあります。
自治体によって取扱いは異なりますが、所得が確認できない場合に不利な区分で判定されることもあります。お子さんの預け先を考えている方は、早めに申告状況を整理しておくほうが安全です。
確定申告していない場合に起こること
申告するタイミングで変わる無申告加算税
申告をしないまま放置すると、本来の税金に加えて無申告加算税が上乗せされます。割合は、いつ申告したかによって3段階に分かれます。
- 税務署から調査の連絡が来る前に自分から申告した場合:5%
- 調査の事前通知を受けた後、調査で指摘される前に申告した場合:納める税額のうち50万円までの部分が10%、50万円超300万円以下の部分が15%、300万円を超える部分が25%
- 調査を受けて指摘された後に申告した場合:50万円までの部分が15%、50万円超300万円以下の部分が20%、300万円を超える部分が30%
同じ内容の申告でも、動くタイミングが早いほど負担は小さくなります。
納付が遅れた期間にかかる延滞税
無申告加算税とは別に、納付が遅れた期間に応じて延滞税がかかります。令和8年中の割合は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、それを過ぎた期間は年9.1%です。
延滞税は日数に応じて増えるため、放置している期間が長いほど金額が大きくなります。
夜職の確定申告で税理士に相談すべきケース
ご自身で判断がつく範囲であれば、国税庁の確定申告書等作成コーナーを使って申告することもできます。一方で、次のような場合は判断を誤ると後から追徴される可能性があるため、専門家に確認したほうが安全です。
- 過去に申告していない年があり、何年分をどう申告すべきか分からない
- 経費にできる範囲の線引きに自信がない
- 領収書や明細が残っておらず、何から手をつければよいか分からない
- 昼職と掛け持ちしていて、住民税の扱いを確認しておきたい
当事務所では、こうした個別の状況について「スポット税務相談」を承っています。「自分の場合は申告が必要なのか」「今ある資料で申告できるのか」を早めに整理しておきたい方は、お気軽にお問い合わせください。
よくある質問
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2807.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm
- https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm
当サイト内の情報をご利用を以て、以下へご承諾とさせて頂きます。
- 当サイト内の情報は正確性等を高めるよう努めておりますが、その内容に対して何らかの保証をするものではございません。
- 当サイト内の情報(第三者から提供された情報も含む。)をご利用頂いたことにより損害等が生じた場合でも、当サイト管理者は一切責任を負いかねます。
- 当サイト内のコラムは弊所の私見です。
- 当サイト内のコラムはその執筆時点における法令等の情報に基づき整理したものです。必ずご自身で最新の法令等の情報をご確認下さい。
- 当サイト内の情報の無断転載等は固く禁じます。
