
ネット記事の多数が誤っている
誤っている記事
従業員のいない個人事業主で源泉徴収が必要な場合
従業員のいない個人事業主でも、以下のようなケースでは源泉徴収が必要です。
参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
さらに、上記を詳細に見ると、源泉徴収すべきケースは少なくありません。例えば、1の原稿料や講演料についての支払いには、次のような判断があります。
参考:No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき|国税庁
個人事業主でも源泉徴収は必要?源泉徴収票の作成方法や所得税の計算を解説 | マネーフォワード クラウド確定申告
個人事業主で従業員を雇っていない場合は源泉徴収不要!
源泉徴収義務者になるのは、原則として「給与や報酬を支払う者」です。従業員を雇用していない個人事業主は、給与支払い自体がないため源泉徴収義務もありません。また、家事使用人が2人以下であれば、その給与についても源泉徴収は不要と国税庁が示しています。したがって、文字どおり“一人親方”スタイルで事業を営む場合、通常は源泉徴収の手続きから解放されます。
個人事業主で従業員はいないが必要な場合
従業員がいなくても、弁護士・税理士・デザイナーなど専門家へ報酬を支払う際には源泉徴収が必要になるケースがあります。これらの報酬は「報酬・料金等の源泉徴収対象」と定められており、支払い側が10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%)を差し引き、翌月10日までに納付しなければなりません。つまり、外注先が法人か個人か、そして報酬が源泉対象に該当するかを確認することがポイントです。
個人事業主で源泉徴収をしなくていい場合は?必要な場合と源泉徴収票の作成方法も解説! – タックスナップメディア
- 上記以外にもありましたが、ネットで出回っている記事や大手ベンダーがリリースしている記事においても、「従業員を雇用していない個人事業主が弁護士や税理士に報酬を支払うときは源泉徴収が必要」と堂々と間違った情報が書いてある記事が散見されます。
- 源泉徴収義務は、①まず自身が源泉徴収義務者に該当するかどうか ②その支払が源泉徴収対象取引に該当するかどうか という二段構成になっていますが、①を精査していないように見えます。
- おそらく「支払者である個人が『事業者』であれば、たとえ従業員を雇用していなくても源泉徴収が必要」と思い込んでいるものと思われますが、そのような内容は条文にも通達にも見当たりません。
国税庁タックスアンサー
ただし、その報酬・料金等の支払者が個人であって、その個人が給与等の支払者でないときまたは給与等の支払者であっても常時2人以下の家事使用人のみに対する給与の支払者であるときは、ホステス等に報酬・料金等を支払う場合を除き、源泉徴収する必要はありません。
No.2793 報酬・料金等の源泉徴収義務者|国税庁
- 国税庁HPの「タックスアンサー」とは、難解かつ複雑な税法を要約してかみ砕いて解説されているページです。
- 「給与等の支払者でないとき」は源泉徴収不要、と明確に書かれているにも関わらず、なぜこのような明らかな誤りを平然とリリースしてしまうのかはなはだ疑問です。
正しい記事
ただし、これら報酬を支払う者でも 上記2-1の給与を支払う者でない場合は除外されます。
すなわち、2-1.により源泉徴収義務者でない者は、報酬等を支払っても所得税を預かる必要はない ということです。(所得税法204条2項2号)
これにも例外があり、ホステスさん等に支払う報酬については取扱いが違いますのでご注意を!!
従業員いない個人事業者が税理士に報酬を払ったら、源泉徴収は必要か | 小篠(おざさ)会計事務所のblog
- 上記の小篠先生のブログ記事では、法令に基づいた正確な情報発信をされていますので、こちらもご参照下さい。
源泉徴収義務者にならないケース
源泉徴収義務者とは?個人事業主が支払うケース・支払わないケース | クレジットカードの三井住友VISAカード
- 雇用しているのが常時2人以下の家事使用人のみ
- デザイナーなどに業務を外注しているが、従業員を雇用していない
- こちらの三井住友カードさんの記事も正しいですね。
個人事業主が源泉徴収義務者にならないケース
従業員を雇っていない場合、もしくは常時2人以下の家事使用人のみ雇用している場合には、源泉徴収は不要です。また、原稿料や講演料など源泉徴収の対象となる個人への報酬についても、支払者が源泉徴収義務のない個人である場合には、源泉徴収は必要はありません。
個人事業主は源泉徴収と関係がある?源泉徴収票の作成を簡単にする方法も解説 | Credictionary for Business | 中小企業様・個人事業主様向けお役立ちビジネスコラム
- セゾンカードさんの記事も正しいですね。
源泉徴収が必要な場合とそうでない場合
給与所得の源泉徴収義務者に該当 | 報酬等の支払先 | 一定の外部の個人に支払う報酬 |
---|---|---|
該当する | 個人の士業やデザイナー等※1 | 源泉徴収が必要 |
該当しない | 個人の士業やデザイナー等※1 | 源泉徴収は不要 |
該当しない | 個人のホステス等 | 源泉徴収が必要 |
- ※1 源泉徴収対象となる個人は他にも無数に存在します。
給与所得の源泉徴収義務者かどうか
原則
(源泉徴収義務)
所得税法第204条
第二百四条 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
- 個人事業主が外部の個人(弁護士や税理士、デザイナーやカメラマンetc.)に報酬を支払う際は、支払時に源泉徴収しなければなりません。これが原則です。
源泉徴収しなくていい場合
2 前項の規定は、次に掲げるものについては、適用しない。
所得税法第204条
一 (一部省略)
二 前項第一号から第五号まで並びに第七号及び第八号に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第百八十三条第一項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの
- 「給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人」(=給与等を支払っている個人)以外の個人(=誰にも給与等を支払っていない個人)が、個人の士業やデザイナー等に報酬などを支払う場合、この義務は課されません。ここがポイントです。
- つまり、その個人事業主が「給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人」(=給与等を支払っている個人)ではない場合、たとえ個人の士業やデザイナー等に報酬などを支払う場合でも、源泉徴収はしなくていいということです。
- 税理士でもここの認識を誤っている人がいます。
給与等について源泉徴収すべき場合
(源泉徴収義務)
所得税法第183条
第百八十三条 居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
2 法人の法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員に対する賞与については、支払の確定した日から一年を経過した日までにその支払がされない場合には、その一年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する。
(源泉徴収を要しない給与等の支払者)
第百八十四条 常時二人以下の家事使用人のみに対し給与等の支払をする者は、前条の規定にかかわらず、その給与等について所得税を徴収して納付することを要しない。
以下のいずれかに該当している=「給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人」ではない=個人の士業やデザイナー等に報酬を支払う際は源泉徴収不要、という結論になります。
- 「給与等の支払いをする者」ではない
- 「常時2人以下の家事使用人のみに対し給与等の支払をする者」である
給与等を支払っているが源泉徴収する税額がないとき
(報酬、料金等に係る源泉徴収義務者の範囲等)
204-5 法第204条第2項第2号に規定する「第183条第1項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人」には、実際に徴収して納付する税額がない者も含まれることに留意する。この場合において、法第204条第1項各号に掲げる報酬、料金等の支払をする者が当該個人に該当するかどうかは、当該報酬、料金等を支払うべき日の現況により判定する。
〔共通関係〕|国税庁
- ちなみに。支払っている給与等が極端に低額だったりすると、源泉徴収税額は生じないこともあります。
- そのような場合は、「給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人」に該当することになります。
- つまり、個人のデザイナーや士業等に報酬を支払うときに源泉徴収しなければなりません。
「給与等」って?
(給与所得)
所得税法
第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
- そもそも「給与等」って何でしょうか。
- ざっくり言えば、従業員に対して、雇用契約(正社員やアルバイト、パート、派遣問わず)に基づいて支払うものです。
- 外部の第三者である個人に支払うお金は「報酬」であって「給与等」ではありません。
実務上源泉徴収するケースもある
源泉徴収事務は非常に煩雑かつ難解です。小規模な事業者の場合、「これは源泉徴収必要かな?いや、不要だったかな?」と考える時間自体が無駄で、本業に悪影響を及ぼすこともあると思われます。ある意味、脳死で「ぜんぶ源泉徴収必要!」というスタンスを取ってしまえば、まるで鬼の首を取ったかのように税務当局からネチネチ言われるリスクもなくて楽ということです。
そのため、「自分が事業者として活動している以上は、個人に報酬を支払うときはとりあえず源泉徴収しておく」という方針をとる個人事業主もいるでしょう。または顧問税理士からそのようにレクチャーされることもあるかもしれません。
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