弊所・澁谷税理士事務所は、主に渋谷・新宿・池袋など首都圏西側地域の事業者様からご相談頂くことが多い事務所で、マネーフォワードクラウドをメインで扱っております。ITツールをフル活用し、ペーパーレス・キャッシュレスをベースにサービス展開しております。
本コラムでは新たに法人を設立する方向けの注意点を解説しています。
本コラムの対象者
- これから法人を設立しようとしている
- 現在個人事業主で法人成りを検討している
- 法人を設立して間もない
- スタートアップ企業の経営者
- 手続きは自分で調べてやるつもりだが合っているか不安
- どの手続きをどの専門家に依頼すれば良いのかよくわからない
「必要な税務上のタスク(届出や申請)を一覧でサクッと確認したい」という方は、こちらへ飛んでください。
本コラムは税務に関する部分に限定しています。ほかにも登記(司法書士へ)や社会保険(社労士へ)など、確認が必要な項目もあるためご注意ください。
相談すべき相手を間違えないように
項目 | ジャンル | 主な相談先 | 備考 |
確定申告 | 税務 | 税理士 | |
税務関連届出書・申請書 | 税務 | 税理士 | |
税務に関する判断 | 税務 | 税理士 | |
経理、会計処理 | 会計 | 公認会計士、税理士 | 最終的には自社でやることが望ましい |
法的な紛争解決 | 法務 | 弁護士 | |
就業規則 | 人事労務 | 社会保険労務士 | |
契約書チェック | 法務 | 弁護士、司法書士、行政書士 | |
定款作成 | 法務 | 司法書士、行政書士 | |
会社設立登記 | 登記 | 司法書士 | |
著作物等の権利保護 | 法務 | 弁理士 | |
会計監査 | 会計 | 公認会計士 | |
M&A | その他 | 公認会計士 | |
不動産の登記 | 登記 | 司法書士 | |
不動産の価格算定 | その他 | 不動産鑑定士 | |
許認可 | その他 | 行政書士 | |
社会保険手続き | 社会保険 | 社会保険労務士 | |
給与計算 | 人事労務 | 社会保険労務士、税理士 | 最終的には自社でやることが望ましい |
助成金の申請 | 人事労務、社会保険 | 社会保険労務士 | 顧問契約が前提になることが多い |
補助金申請 | その他 | 民間専門機関、行政書士 | |
融資支援 | その他 | 民間専門機関、税理士(一部) | |
事業の引継ぎ、引受け | その他 | 日本政策金融公庫 | テクニカルな内容は各専門家へ |
これらは一例です。また、調べる手間を惜しまなければ自社でやろうと思えばできる項目もあります。
弁護士や社会保険労務士、税理士などの専門職には「業際」というものがあります。「Aという分野に関する業務をやっていいのは『●●士』だけですよ」と法律で定められており、それぞれ、法律で定められている業務以外の仕事を引き受けることはできません。
分野ごとにそれぞれの分野の専門家に依頼する必要があります。
自力で調べるor専門家へ依頼する
時間はかかるができる項目もある
永遠のテーマですが、結論から言えば、項目によっては「自走できる人」なら自分でできることもたくさんあります。
「自走できる人」とは「専門家のアドバイスを一切受けずに」一人でゼロから調べて完結できている状態のことです。
本業と無関係の分野も含めてご自身が始めた「事業」ですので、自力で調べて、知識が増えてゆくプロセスを楽しめる人であれば、自力でやってみるのも良いことです。
自社でやることが望ましい項目
専門家に依頼できる項目でも、自社でやることが望ましい項目もあります。外部専門家が管理することが難しい項目がこれに該当します。
確定申告や法律紛争などは起きる頻度が少ないので、必要なときに外部専門家に依頼するという対応ができますが、毎月生じ、かつ、その会社の従業員(内部の人間)でなければタイムリーな事実関係の把握をすることが困難な項目(会計処理や給与計算など)については、自社で対応することが望ましいです。
自力でやる難易度
弊所は税理士事務所なので税務周辺の分野にしか言及できませんが、「自力でやる難易度」を独断と偏見で記載すると以下のような感じになります。
項目 | 自力でやる難易度 |
個人の確定申告(簡単なもの) | ★☆☆ |
個人の確定申告(複雑なもの) | ★★★ |
法人の確定申告 | ★★★ |
税務ソフト操作 | ★★★ |
税務に関する判断 | ★★★ |
経理、会計処理 | ★★☆ |
会計ソフト操作 | ★★☆ |
税務調査対応 | ★★★ |
法人設立前の段階
相談先
関わる専門家としては行政書士、司法書士が一番多いです。
設立後のことも見据えて、設立前段階から税理士や社労士へ相談しておくとなお良しです。
決算月を決める
12月決算にする法人で、11月に設立した場合など、決算月まで時間が少ない場合、諸々の事故につながる可能性が高いです。できれば決算月まで8か月以上余裕がある状態が望ましいです。
税務上期限が決められている届出があり、「それらを提出した方が良いかどうか」の検討にも時間を要する場合があるので、ただでさえ設立当初でやることがたくさんありバタバタしている時期に、決算月を重ねるのはおすすめしません。
設立前から既に会計士や税理士、社会保険労務士などと連携済で、やるべきタスクの洗い出しができているなら別ですが、「設立したからこれから専門家を探そう」という方は要注意です。
設立タイミング
インボイス制度が始まり従来よりは減ったとは思いますが、もし免税事業者期間を長くしたいという場合、設立1期目は7月以下となるようにします。
詳細は割愛しますが、法人の設立1期目が7か月以下の場合は、消費税法上の「特定期間」に該当しなくなるためです。
資本金を決める
金額 | 影響する主な項目 |
資本金額1,000万円未満 | インボイス登録しない場合、免税事業者になれる |
資本金等の額1,000万円超 | 法人住民税の均等割 |
1億円超 | 法人事業税の外形標準課税 各種法人税法上の優遇措置適用なし |
ちなみに「資本金の額」と「資本金等の額」は似て非なるものですので、このあたりの判断は専門家の判断が必須と考えた方が無難です。
事業専用の銀行口座(予備)を準備
最近はマネーロンダリングの関係で、法人用口座の開設のハードルは上がっています。状況によっては「断られるのが当たり前」くらいの感覚でいたほうが良いかもしれません。
スムーズに口座開設できなかったときのために、法人口座でなくとも良いので事業専用に使うためのの口座を予備的に準備しておきましょう。
なお、法人の事業が、個人事業の延長線だと誤解されている方がよくいます。「プライベート用口座を使って法人の入出金に使えばいいや」のような感覚でいることは、これから法人を運営してゆく上で危ないので、個人事業から法人成りする方は、今まで自分がやっていた個人事業とは無関係ということを肝に銘じましょう。
法人設立直後の段階
相談相手
社労士と税理士と関わることとなります。
許認可を取得
以下のような業種は事業を行うにあたり許認可が必要になるため、自分がやろうとしている業種に何か許認可が必要になるのかどうかを調べる必要があります。
また、個人事業主から法人成りする場合、基本的に個人事業主時代の許認可を引き継ぐことはできませんので、法人として新たに取得する必要があるとお考え下さい。
- 飲食業
- 古物商
- 理容業、美容業
- 運送業
- 建設業
- 宅地建物取引業
- 酒類販売業
こちらのサイトでもある程度は調べることができますが、最終的には専門家や公的機関への確認が必要です。
届出や申請
提出必須な書類とそうでない書類
税務に関する届出書・申請書は、大きく分けると以下の3種類があります。
- 法的に提出義務があるもの
- 法的義務はないが提出した方がよいもの
- 法的義務はないが提出すべきかどうか検討した方が良いもの
提出必須な書類 & 提出要否の確認が必要な書類
書類の名称 | 提出必要となる場合 | 期限 | 緊急度 |
法人設立届出書 | 法人を設立した場合 | 設立登記の日以後2か月以内 | ★★★ |
法人設立・設置届出書 | 法人を設立した場合等 | 事業を開始した日から15日以内(都税の場合) | ★★★ |
青色申告の承認申請書 | 青色申告をしたい場合 | 以下のいずれか早い日の前日 ①設立の日以後3か月を経過した日 ②設立第1期目の事業年度終了の日 | ★★★ |
棚卸資産の評価方法の届出書 | 評価方法を選びたい場合 | 設立第1期目の事業年度の確定申告書の提出期限まで | ★☆☆ |
減価償却資産の償却方法の届出書 | 償却方法を選びたい場合 | 同上 | ★☆☆ |
有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書 | 算出方法を選びたい場合 | 有価証券を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限 | ★☆☆ |
定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請 | 一定の場合で申告期限の延長の特例を受ける場合 | 最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで | ★☆☆ |
事前確定届出給与に関する届出書 | 事前確定届出給与を支給する場合 | 設立の日以後2月を経過する日 | ★★★ |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 納期の特例の適用を受けたい場合 | 特になし (原則、提出した日の翌月に支払う給与等から適用) | ★★☆ |
特別徴収税額の納期の特例に関する承認申請書 | 納期の特例の適用を受けたい場合 | 特になし (納期限未到来の月から適用開始) | ★★☆ |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書 | 同上 | 開設の事実があった日から1か月以内 | ★★★ |
適格請求書発行事業者の登録申請書 | インボイス登録する場合 | なるべく早く | ★★★ |
消費税簡易課税制度選択届出書 | 簡易課税制度を適用したい場合 | 事業を開始した日の属する課税期間の終了の日まで (設立第1期目の場合) | ★★☆ |
消費税課税事業者選択届出書 | 課税事業者となる場合 | 同上 | ★★☆ |
消費税の新設法人に該当する旨の届出書 | 新設法人に該当することとなったとき | その事由が生じた場合速やかに | ★★☆ |
e-Taxの開始(変更等)届出書 | 電子申告をするつもりである場合 | なるべく早く | ★★☆ |
eLTAXの利用届出 | 電子申告をするつもりである場合 | なるべく早く | ★★☆ |
ダイレクト納付利用届出書 | キャッシュレス納付する場合 | なるべく早く | ★★☆ |
ネットで調べると、「法人設立届出書」や「青色申告の承認申請書」「適格請求書発行事業者の登録申請書(通称:インボイス登録申請書)」などの話は出てくると思いますが、実際には検討すべき書類はこれだけあります。
「緊急度」は弊所の独断と偏見による基準ですので、事業者の状況によって変わることもあります。
役員報酬
議事録作成
一般的には、設立日から3ケ月以内に臨時株主総会を開いて、そこで役員報酬の金額を決定します。
このときの議事録は必ず必要になるので残しておきます。
事前確定届出給与に係る届出書
もし事前確定届出給与を支給する場合は、設立日以後2か月以内に、事前確定届出給与に係る届出書を提出します。
ただし、事前確定届出給与の制度は、素人がコントロールするには難易度が高いので、あまりおすすめはしません。
最初は事前確定届出給与の制度は使わず、毎月支給する通常の役員給与だけにとどめておくことをお勧めします。
課税事業者or免税事業者
インボイス発行事業者(課税事業者)となる場合
なるつもりであればやることはシンプルです。以下に詳細を解説しています。
免税事業者になれる場合
「期首資本金額が1,000万円未満である法人」を新設した場合、基本的には2期目までは免税事業者となれます。
1-4-6 法第9条第1項本文《小規模事業者に係る納税義務の免除》の規定の適用があるかどうかは、事業者の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であるかどうかによって判定するのであるから、例えば、新たに開業した個人事業者又は新たに設立された法人のように、当該課税期間について基準期間における課税売上高がない場合又は基準期間がない場合には、納税義務が免除される。
ただし、新たに開業した個人事業者又は新たに設立された法人が次のいずれかの規定の適用を受ける場合には、当該課税期間における納税義務は免除されないことに留意する。(平9課消2-5、平13課消1-5、平15課消1-37、平22課消1-9、平23課消1-35、平25課消1-34、平28課消1-57、令2課消2-9により改正)
なお、適格請求書発行事業者における法第9条第1項本文の適用関係については、1-4-1の2による。(1) 個人事業者
(一部省略)
(2) 法人
イ 法第9条第4項の規定の適用を受ける法人
ロ 法第9条の2第1項の規定の適用を受ける法人
ハ 法第11条第3項又は第4項《合併があった場合の納税義務の免除の特例》の規定の適用を受ける法人
ニ 法第12条第1項又は第2項《分割等があった場合の納税義務の免除の特例》の規定の適用を受ける法人
ホ 法第12条の2第1項《新設法人の納税義務の免除の特例》の規定の適用を受ける法人
へ 法第12条の3第1項《特定新規設立法人の納税義務の免除の特例》の規定の適用を受ける法人
ト 法第12条の4第1項又は第2項の規定の適用を受ける法人
(注) 個人事業者のいわゆる法人成りにより新たに設立された法人であっても、当該個人事業者の基準期間における課税売上高又は特定期間における課税売上高は、当該法人の基準期間における課税売上高又は特定期間における課税売上高とはならないのであるから留意する。
消費税基本通達 より抜粋
ただ、一定の要件に該当すると、課税事業者を強制されます。このあたりは非常に難しいので顧問税理士に相談が必須です。
消費税の簡易課税制度を選択するかどうか
設立1期目から簡易課税制度を適用したい場合、1期目の課税期間の末日までに届出書を提出する必要があります。
提出した場合、2年間は簡易課税制度が強制されます。
その他検討すべき主な項目
「会計ソフト」と「税務ソフト」
税金計算まではこのフローをたどることになりますが、真ん中で使うのが「会計ソフト」、右で使うのが「税務ソフト」です。
会計ソフトとは仕訳(会計処理)を計上するもので、残高試算表や総勘定元帳などを作成することができます。
これに対し、税務ソフト(申告ソフトとも言われます)とは、確定申告などの税務関係の書類を作成するためのソフトで、税理士業界の人間だけが使ういわば「プロ仕様の」ソフトです。
スタートアップが選定しなければならないのは「会計ソフト」の方です。
会計ソフト&給与計算ソフト選定
経理と給与計算は、税務申告と異なり、毎月生じるタスクです。
そのため、手動でExcelで管理しだすと工数が大変なことになるので、専用のソフトを導入することが望ましいでしょう。
小規模なスタートアップの場合は、以下のいずれかを選ぶと良いでしょう。
- マネーフォワードクラウド
- freee
以下の図の右側の大きい枠内がクラウド会計システムだとイメージ下さい。クラウド会計を使用すると、ソフトへの取引の取り込みがある程度自動化されて楽になります。
弊所ではマネーフォワードクラウドをメインとしており、「クラウド会計導入サポート」(スポット業務)を取り扱っております。
設備投資を行う場合
法人税法上の優遇措置
対象者
以下の全てに当てはまっているような方は、優遇措置を受けることができる可能性があります。
「一定の認定」については、士業事務所では受け付けていない場合もありますので、もし優遇措置の適用を受けたい場合は、専門機関に、事前に計画書を作成・提出している必要があります。さくっとできるものではありませんので事業者側の下準備は必須です。
- 青色申告法人である
- 中小企業者である
- 一定の認定を受けている(必要な場合)
- 新品の機械装置を取得または制作した
- 国内にある製造業や建設業など一定の業種の事業の用に供した
参考元情報
消費税法上の注意点
そもそも免税事業者になるつもりはない、という方は無関係ですが、一定の額の資産を購入すると、課税事業者を強制される期間が生じる可能性があります。
どんな設備投資をしたかは税理士側も依頼者に教えてもらわなければ分かりませんので、設備投資を検討するならそのことをご自身の顧問税理士へ共有することが大切です。
源泉徴収に注意する
現物給与に注意
従業員に毎月支払う給料から源泉徴収するのは当然ですが、従業員に対して何らかの利益(無形のものも含みます)を与えた場合、それは「現物給与」という形で課税される可能性があります。
源泉徴収漏れしがちな項目ですので要注意です。
有形だろうが無形だろうが、何らかの「利益」や「便益」を従業員に与えたなら、そこには常に「現物給与」に該当する可能性があるとお考え下さい。よく分からなければ現物給与に該当する可能性があるものは支給しない方が良いです。自分でコントロールできる場合だけにしましょう。
従業員に対しての支払だけが対象ではない
源泉徴収と聞くと、「給与から徴収するもの」という認識の方が多いと思いますが、以下のような個人の取引相手に何か支払ったときは常に源泉徴収する必要性を必ず確認すべきです。
- 弁護士、税理士、社会保険労務士、司法書士、建築士、不動産鑑定士
- デザイナー
- ライター
- イラストレーター
- 写真家
- 作曲家
- 講演の依頼先の講師
- 脚本家
- 翻訳家
- 通訳
- スポーツ選手
源泉徴収の要否は、「源泉徴収される側」の責任ではなく、「源泉徴収する側」の責任で行われるものなので、自社で「この請求に対して源泉徴収する必要があるのかどうか」を検討しなければなりません。
請求書に源泉徴収税額を記載した状態で請求書を送付してくれる取引先もあると思いますが、記載されている源泉税額が合っているのかどうかの確認も「源泉徴収する側」の責任において行うべきものだという点に注意が必要です。
「源泉徴収される側」に押し付けることはNG
所得税法上、以下のようになっており、源泉徴収義務者(会社)が源泉徴収ミスした場合は、源泉徴収義務者が最後まで責任を負うことになります。「もともと自分が負担する税金ではないし、源泉徴収される側(お金を受け取る側)にまかせればいい」という理屈は通用しません。ペナルティも源泉徴収義務者(会社)に課せられます。
(源泉徴収義務者)
第六条 第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等の支払をする者その他第四編第一章から第六章まで(源泉徴収)に規定する支払をする者は、この法律により、その支払に係る金額につき源泉徴収をする義務がある。
所得税法より抜粋
(源泉徴収に係る所得税の徴収)
第二百二十一条 第一章から前章まで(源泉徴収)の規定により所得税を徴収して納付すべき者がその所得税を納付しなかつたときは、税務署長は、その所得税をその者から徴収する。
所得税法より抜粋
従業員10人未満なら
源泉所得税したお金の納付は原則毎月生じます。
マンパワーが少ない会社にとってはこの事務負担は大きいですが、もし自分の会社が従業員10人未満なら、特例があり、年に2回に納付回数を減らすことができます。
印紙税に注意
基本的に50,000円以上なら必要
会社を設立したばかりだと自分が「印紙を貼る側」になるイメージが沸かず納付漏れにつながる可能性が高いです。
印紙を使う頻度が多い業種の場合、毎回毎回、顧問税理士に確認するわけにもいかず、また、税理士もあくまで外部専門家なので依頼者本人から連絡がなければ「そもそも印紙が必要な取引が生じたのかどうか」の把握すらできない場合もあります。印紙は日々の取引に密接に関わっているため、自分自身で「どういう場合に印紙が必要か」を把握しておかなければなりません。
一番メジャーなのは、50,000円以上の領収書に貼る印紙です。
契約書にも必要
自分の取引先と契約書を取り交わすときにも印紙の必要性の検討が必要です。
ただ、「印紙が必要かどうか」「必要ならいくら貼ればいいのか」の判断も答えが明確に白黒つけられるわけではなく結構大変ですし、いちいち紙で製本して郵送して…というやり方も時代に逆行していますので、電子契約を導入するのも1つの方法です。電子契約の場合、印紙は不要となります。
消費税の表記に注意
印紙税の金額決定の基礎になる金額は、税込と税抜とで変わってきます。
請負契約書への記載の仕方(表記)を例にします。
表記 | 対象となる金額 | 印紙税 |
請負金額1,100万円のうち、消費税額等100万円 | 1,000万円 | 1万円 |
請負金額1,100万円(税抜価格1,000万円) | 1,000万円 | 1万円 |
請負金額1,100万円(消費税額等10%を含む) | 1,100万円 | 2万円 |
請負金額1,100万円(税込) | 1,100万円 | 2万円 |
電子取引に係る請求書の保存義務
一番最初にすべきことは、2024年1月1日から義務化された「電子取引データの保存」の対応です。
以下の記事で詳細を解説しています。
まずは「事務処理規定」を作成しましょう。すぐに作れます。
インボイス対応
やるべきこととしては、挙げればキリがないので詳細は割愛しますが、まずは「自分が発行する請求書」をインボイス要件に則るようにしましょう。
「法人会」の説明会へ参加してみる
法人会という団体が定期的に新設法人向けの説明会を行っています。
新設法人がやらなければならない税務上のタスクについて説明してくれます。
怪しげな団体ではなく、税理士や税務署の担当者が講師として説明してくれる無料の会なので、是非活用しましょう。
その他参考コラム
参考元情報
C1-4 内国普通法人等の設立の届出|国税庁 (nta.go.jp)
C1-17 定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請|国税庁 (nta.go.jp)
C1-23 事前確定届出給与に関する届出|国税庁 (nta.go.jp)
個人住民税と特別徴収について | 個人住民税の特別徴収推進ステーション | 個人住民税 | 東京都主税局 (tokyo.lg.jp)
No.7124 消費税等の額が区分記載された契約書等の記載金額|国税庁 (nta.go.jp)
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