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「今までは消費税のことは気にしないでやってきたがインボイスをきっかけに課税事業者となり、仕訳をどうすればよいのかわからない」という方向けのコラムです。
本コラムの対象者
- 個人事業主の方
- いままでは自分で記帳してきたという方
- インボイスを機に消費税が出てきて戸惑っている方
税抜経理or税込経理
どちらかに統一する
税抜経理と税込経理のどちらかを自由に選択できますが、どちらかで統一するのが原則です。
消費税の課税事業者である事業者は、所得税または法人税の所得金額の計算に当たり、消費税および地方消費税(以下「消費税等」といいます。)について、税抜経理方式または税込経理方式のどちらを選択してもよいこととされています。なお、いずれの方式によっても納付する消費税等の額は同額となります。
国税庁HP『No.6375 税抜経理方式または税込経理方式による経理処理』より抜粋
2 個人事業者が行う取引に係る消費税等の経理処理につき、当該個人事業者の行う全ての取引について税抜経理方式又は税込経理方式のいずれかの方式に統一していない場合には、その行う全ての取引についていずれかの方式を適用して所得税の課税所得金額を計算するものとする。
(注)
1 不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得(以下「事業所得等」という。)を生ずべき業務のうち2以上の所得を生ずべき業務を行う場合には、当該所得の種類を異にする業務ごとに上記の取扱いによることができるものとする。
2 譲渡所得の基因となる資産の譲渡で消費税が課されるものに係る経理処理については、当該資産をその用に供していた事業所得等を生ずべき業務と同一の方式によるものとする。
3 消費税と地方消費税は同一の方式によるものとする。
国税庁HP『消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて』 より抜粋
影響を及ぼす項目の例
少額減価償却資産などの判定
9 令第138条((少額の減価償却資産の取得価額の必要経費算入))、令第139条((一括償却資産の必要経費算入))又は令第139条の2((繰延資産となる費用のうち少額のものの必要経費算入))の規定を適用する場合において、これらの規定における金額基準を満たしているかどうかは、個人事業者がこれらの規定の適用がある減価償却資産に係る取引について適用することとなる税抜経理方式又は税込経理方式に応じ、その適用することとなる方式により算定した取得価額又は支出する金額により判定することに留意する。
国税庁HP『消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて』 より抜粋
措置法に規定する特別償却等において定められている金額基準についても、同様とする。
取得価額が10万円未満の資産などは、資産計上ではなくそのまま必要経費に算入することができますが、その「10万円未満かどうか」の判定の際、税込経理を採用しているのであれば税込金額で、税抜経理を採用しているのであれば税抜金額で判定することとなります。
採用している経理方式 | 判定する際の金額 |
税抜経理 | 税抜金額 |
税込経理 | 税込金額 |
つまり、ここだけ見るのであれば、税抜経理の方が事業者にとって有利になるとも言えます。
一括償却資産の取得価額判定
取得価額が20万円未満の資産を取得した場合、一括償却ができる場合がありますが、その金額判定も税抜経理にしているのであれば税抜金額で判定し、税込経理にしているのであれば税込金額で判定することになります。
つまり税抜経理の方が有利です。
課税事業者で税込経理を採用
経費&収入に算入する時期
納税する消費税又は還付される消費税は、必要経費又は収入金額に算入されます。算入すべき時期については以下の通りです。
種別 | 納税の場合(必要経費) | 還付の場合(収入金額) |
原則 | 消費税確定申告書が提出された日の属する年 | 消費税確定申告書が提出された日の属する年 |
例外 | 未払計上した年 | 未収計上した年 |
(消費税等の必要経費算入の時期)
7 税込経理方式を適用することとなる個人事業者が納付すべき消費税等の額は、納税申告書に記載された税額については当該納税申告書が提出された日の属する年の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入し、更正又は決定に係る税額については当該更正又は決定があった日の属する年の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入する。ただし、当該個人事業者が申告期限未到来の当該納税申告書に記載すべき消費税等の額を未払金に計上したときの当該金額については、当該未払金に計上した年の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入することとして差し支えない。
(消費税等の総収入金額算入の時期)
8 税込経理方式を適用することとなる個人事業者が還付を受ける消費税等の額は、納税申告書に記載された税額については当該納税申告書が提出された日の属する年の事業所得等の金額の計算上、総収入金額に算入し、更正に係る税額については当該更正のあった日の属する年の事業所得等の金額の計算上、総収入金額に算入する。ただし、当該個人事業者が申告期限未到来の当該納税申告書に記載すべき消費税等の額を未収入金に計上したときの当該金額については、当該未収入金に計上した年の事業所得等の金額の計算上、総収入金額に算入することとして差し支えない。
『消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて』より
期中
費用計上時
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
支払手数料 | 課10% | 550,000 | 現金預金 | – | 550,000 |
収益計上時
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
現金預金 | – | 880,000 | 売上 | 課10% | 880,000 |
期末決算整理
原則
仕訳なし
※原則処理の場合は、翌期に計上します。
例外
会計上の考え方としてはこちらの方がむしろ原則ですが、税務ではこちらが例外扱いとなっています。
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
租税公課 | – | 30,000 | 未払金 | – | 30,000 |
翌期(納付時)
原則
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
租税公課 | – | 30,000 | 現金預金 | – | 30,000 |
例外
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
未払金 | – | 30,000 | 現金預金 | – | 30,000 |
課税事業者で税抜経理を採用
期中
費用計上時
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
支払手数料 | 課10% | 500,000 | 現金預金 | – | 550,000 |
仮払消費税 | – | 50,000 |
税込経理との違いは、期中から、消費税分を除いた本体価格(上記例の場合500,000円)がPLに計上されるため、おおむね正しい損益が計算されるという点です。
収益計上時
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
現金預金 | – | 880,000 | 売上 | 課10% | 800,000 |
仮受消費税 | – | 80,000 |
期末決算整理
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
仮受消費委税 | – | 80,000 | 未払消費税等 | – | 29,900 |
仮払消費税等 | – | 50,000 | |||
雑収入 | – | 100 |
端数処理によってわずかに差額(上記例の場合は100)が生じるはずです。これは、以下の通達に則って、その年の必要経費又は収入金額に算入することになります。
(仮受消費税等及び仮払消費税等の清算)
6 税抜経理方式を適用することとなる個人事業者は、課税期間の終了の時における仮受消費税等の額の合計額から仮払消費税等の額の合計額(控除対象外消費税額等に相当する金額を除く。以下6において同じ。)を控除した金額と当該課税期間に係る納付すべき消費税等の額とに差額が生じた場合は、当該差額については、当該課税期間を含む年の事業所得等の金額の計算上、総収入金額又は必要経費に算入するものとする。
課税期間の終了の時における仮払消費税等の額の合計額から仮受消費税等の額の合計額を控除した金額と当該課税期間に係る還付を受ける消費税等の額とに差額が生じた場合についても同様とする。(注) 事業所得等を生ずべき業務のうち2以上の所得を生ずべき業務について税抜経理方式を適用している場合には、税抜経理方式を適用している業務のそれぞれについて、他の税抜経理方式を適用している業務に係る取引がないものとして上記の取扱いを適用するものとする。
国税庁HP『消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて』 より抜粋
翌期(納付時)
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
未払消費税等 | – | 29,900 | 現金預金 | – | 29,900 |
簡易課税を適用しているとき
以下の記事で解説しています。
免税事業者の場合
免税事業者の場合、そもそも税込経理しか許されません。
5 消法第9条第1項本文((小規模事業者に係る納税義務の免除))の規定により消費税を納める義務が免除される個人事業者については、その行う取引について税抜経理方式で経理をしている場合であっても、2((税抜経理方式と税込経理方式の選択適用))にかかわらず、税込経理方式を適用して所得税の課税所得金額を計算することに留意する。
国税庁HP『消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて』 より抜粋
消費税認識の管理
消費税計算をおこなうためには、普段の取引について、消費税認識を正しく処理することが大前提です。
これをExcelなどで手動で管理するのは非現実的ですので、会計ソフトの導入を検討しましょう。
マネーフォワードクラウドのようなクラウド会計ならある程度は作業が楽になります。
参考元情報
No.6513 簡易課税制度の適用と経理処理|国税庁 (nta.go.jp)
消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて|国税庁 (nta.go.jp)
No.6375 税抜経理方式または税込経理方式による経理処理|国税庁 (nta.go.jp)
その他参考コラム
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