インストラクターの仕事は、スタジオに雇用される、スタジオと業務委託契約を結ぶ、自分で生徒を集める、という3つの形が混在しやすい職種です。同じ「レッスン1本いくら」でも、契約の形と実態によって税金の計算方法も、経費にできる範囲も変わります。
この記事では、働く形態ごとの税金の違い、会社員や他の仕事と兼業している場合に確定申告が必要になるライン、業務委託で経費が少なくなりやすい理由を整理します。
働く形態で変わるインストラクターの税金
スタジオに雇用されている場合
雇用契約を結んで働く場合、受け取るお金は給与です。毎月の給与から所得税が源泉徴収され、年末に勤務先が年末調整をして精算します。
仕事に必要な道具は基本的に、勤務先が用意してくれるため、経費計上という概念はありません。勤務先側の経費として計上されているためです。
雇用契約の従業員の場合、「給与所得控除」という概算経費のようなものがあり、十分な恩恵を受けている状態です。
スタジオと業務委託契約を結んでいる場合
業務委託契約でレッスンを担当する場合、受け取るお金は報酬です。年末調整の対象にならないため、1年分の収入と経費を自分で集計し、確定申告で税額を計算します。
レッスンの場所も器具もスタジオのものを使い、生徒の募集もスタジオが行っているケースでは、自分の財布から出ていく支出がほとんど発生しません。経費として計上できるものが少なく、収入がほぼそのまま所得になる形になりやすい働き方です。
この形態で注意すべきは、立派な個人事業主(自営業)であるにも関わらず、ご自身のことを会社員だと誤認してしまう方が非常に多いという点です。業務委託であっても、雇用されていないのであれば、それは立派な自営業です。自営業は全てが自己責任の世界ですので、間違っても業務委託元(発注者)に依存することが無いようにしましょう。
自分で生徒を集めて教えている場合
レンタルスタジオやオンラインで自分の生徒を集めて教える場合も、受け取るお金は報酬(売上)です。確定申告が必要になる点は業務委託と同じです。
一方で、会場のレンタル料、予約システムの利用料、広告費、マットやリングなどの備品を自分で負担するため、経費として計上できる支出の範囲は広がります。
業務委託と異なる点は、ご自身のブランドで顧客を集めているという点です。生き残るのが難しい反面、誰かに依存せずに活動しているため自由度が増します。
契約書の名称ではなく実態で決まる給与と報酬の区分
契約書のタイトルが「業務委託契約書」でも、働き方の実態が雇用に近ければ、支払われたお金は給与として扱われます。区分がはっきりしない場合は、次のような点を総合的に見て判断することとされています。
- レッスンを他の人が代わりに担当できるかどうか
- 業務にあたって指揮監督を受けているかどうか
- 提供した役務について報酬を請求する権利があるかどうか
- 業務に使う材料や用具の提供を受けているかどうか
レッスンの内容や時間帯が細かく指定され、代講を自分で手配できず、器具もすべてスタジオのものという状態であれば、実態は雇用に近づきます。給与と判定されると、経費を差し引く前提そのものが変わるため、契約形態は最初に確認しておきたい部分です。
兼業でレッスンをしている場合に確定申告が必要となるライン
勤務先が1か所の場合
会社員として1か所から給与を受け取り、年末調整を受けている人は、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。ここでいう所得は、レッスンの報酬から経費を引いた後の金額を指します。
勤務先が2か所以上の場合
2か所以上から給与を受け取っている人は、年末調整を受けなかった給与の「収入金額」と、給与以外の「所得金額」を合計して判定します。
複数のスタジオでシフトに入りながら別のスタジオと業務委託契約を結んでいる場合、給与と報酬が混在するため、判定を間違えやすい形です。
住民税の申告
20万円以下で所得税の確定申告が不要になった場合でも、住民税の申告は別に必要です。所得税の20万円のラインは住民税には適用されないため、申告先の市区町村の案内を確認してください。
事業所得と業務に係る雑所得の分かれ目
レッスンの報酬が事業所得になるか業務に係る雑所得になるかは、その活動が社会通念上、事業と呼べる程度で行われているかどうかで判定します。加えて、取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、原則として業務に係る雑所得として扱われます。
事業所得と認められれば、青色申告の各種特典を受けられ、赤字が出たときに他の所得と通算できます。業務に係る雑所得ではこれらの扱いを受けられないため、収入の規模が小さいうちほど、帳簿を残しているかどうかが結果を左右します。
業務委託のインストラクターに経費が少なくなりやすい理由
スタジオが負担している支出
スタジオ所属で業務委託契約を結んでいる場合、レッスン場所の賃料、水道光熱費、マットやマシンなどの器具、予約システム、集客の広告費は、多くがスタジオ側の負担です。
自分が支払っていない支出は、当然ながら自分の経費にはなりません。
自分が負担している支出
自己負担で発生しやすいのは、スタジオまでの交通費、レッスンで着用するウェア、資格の登録料や更新料、養成講座の受講料、業務用の携帯電話料金などです。
ただし、ウェアのように私生活でも使えるものは、業務のためであることを説明できるかどうかで判断が分かれます。
家事関連費の按分
自宅でオンラインレッスンや事務作業を行っている場合、家賃や通信費のうち業務に使った部分を経費にできることがあります。
経費にできるのは、業務の遂行上必要であり、その必要な部分を明らかに区分できる場合に限られます。面積や使用時間など、割合の根拠を説明できる形にしておくことが前提です。
レッスン報酬から源泉徴収されているときの精算
業務委託の報酬から10.21%が差し引かれている場合、それは技芸やスポーツなどの教授・指導の報酬として源泉徴収されているものと考えられます。源泉徴収の対象になる報酬・料金の範囲は法令で定められており、支払う側に徴収の義務があります。
差し引かれた金額は、確定申告で1年分の税額を計算し、源泉徴収された金額のほうが多ければ差額が還付されます。経費が少ない働き方であっても、各種控除を差し引いた結果として還付になるケースは珍しくありません。
契約形態の確認、事業所得か雑所得かの判断、経費にできる範囲の線引きは、いずれも契約書と実際の働き方を突き合わせないと結論が出ません。ご自身がどのケースに当たるか整理しきれない段階でも、当事務所のスポット税務相談で1回完結のかたちでご確認いただけます。
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