個人で開業した行政書士の方から、「行政書士の報酬には源泉徴収がないと聞いたが本当か」「開業して間もない時期でも税務調査は来るのか」というご質問をいただくことがあります。
この記事では、2026年最新版として法改正も踏まえ、源泉徴収の扱い、必要経費の考え方、個人事業税、税務調査への備えなどを整理します。開業して数年以内の方を想定した内容です。
個人の行政書士の開業届出
開業届と青色申告承認申請書
個人で本業として活動を開始する場合、所轄税務署へ開業届と青色申告承認申請書を提出します。
青色申告とは、一定の方法で帳簿をつけて申告することで、所得金額の計算上いくつかの特典を受けられる制度です。承認を受けるには、原則としてその年の3月15日までに申請書を提出します。1月16日以後に開業した場合は、開業の日から2か月以内が期限です。
この期限を過ぎると、その年は青色申告を選べません。開業直後の忙しい時期に忘れやすい手続きですので、開業届と同時に出してしまうのが確実です。
「個人事業の開業等届出書」は、「事業の開始等の事実があった日の属する年」分の確定申告期限までに、提出すればよいことになりました。
都道府県への事業開始等申告書
税務署への開業届とは別に、都道府県税事務所へ「事業開始等申告書」を提出する必要があります。後述する個人事業税の課税に関わる届出です。
税務署への届出だけで完了したと考えている方が少なくありませんが、提出先が国と都道府県で分かれている点に注意してください。
行政書士報酬に源泉徴収がない理由
源泉徴収の対象になる士業とならない士業
行政書士が受け取る報酬は、原則として源泉徴収の対象になりません。所得税法が源泉徴収の対象として列挙している士業のなかに、行政書士が含まれていないためです。ただし、扱う業務によっては源泉徴収が必要になることもあります。
建築関係の書類作成で例外となるケース
行政書士が行う業務のすべてが対象外というわけではありません。
たとえば建築基準法に定める建築に関する申請や届出の書類作成は、建築代理士の業務に含まれるものとして扱われます。この場合は源泉徴収の対象となり、支払った側には支払調書の提出義務も生じます。
建設業や不動産関連を主な取扱分野にしている場合、自分の受任案件がこの例外に当たらないか、一度確認しておくと安心です。
源泉徴収がないことで生じる納税資金の注意点
源泉徴収がないということは、報酬を満額で受け取れる一方で、所得税を前払いしていない状態でもあります。
会社員時代は毎月の給与から所得税が差し引かれ、年末調整で精算されていました。行政書士として独立すると、この仕組みがなくなり、1年分の所得税を確定申告のときにまとめて納めることになります。
- 納税資金を使いこんでしまい、納税時期に資金不足に陥った。
行政書士が源泉徴収する側になる場面
自分が報酬を受け取るときだけでなく、支払うときの立場も押さえておく必要があります。
原則として、個人事業主のうち、給与を支払っていない人は「源泉徴収義務者」に該当しません。ひとりで事務所を運営している段階では、たとえば税理士や司法書士に報酬を支払う場合などです。
一方、補助者やスタッフを雇って給与を支払い始めると、状況が変わります。給与の支払いについて源泉徴収義務者となり、それにともなって税理士報酬などの支払いについても源泉徴収と納付が必要になります。人を雇う際は、給与支払事務所等の開設届出書の提出とあわせて、この点を確認してください。
この判断が難しい場合もあるため、必要に応じて税理士へも相談しましょう。

行政書士の必要経費として認められる支出
| 経費計上可能 | 経費計上が困難 |
|---|---|
| ・行政書士会費 ・事務所の家賃や水光熱費 ・業務専用PC ・名刺や職印作成費 ・広告チラシ代 | ・同期との食事代 ・スーツ代 ・私的要素のある交際費 ・プライベートでも使用するスマホ代で按分できないもの |
家事関連費(事業とプライベート両方の要素が混在する経費)は、按分が必要と言う話は有名ですが、よくある誤解として、「客観的に明確に按分できているとはいえないもの」も経費計上してしまうケースです。
どこかを調べれば正解が書いてある話ではありませんので、判断がとても難しい場合もあり、個別のケースごとに精査する必要があります。
行政書士業にかかる個人事業税
行政書士業は、個人事業税の課税対象となる法定業種(第3種事業)に含まれています。所得税とは別に、都道府県へ納める税金です。
税率は5パーセントで、計算にあたっては年間290万円の事業主控除が差し引かれます。営業期間が1年に満たない開業初年度は、控除額が月割りになります。所得税の確定申告をしていれば、個人事業税について改めて申告する必要は原則としてありません。
注意したいのは、所得税の計算で使う青色申告特別控除が、個人事業税の計算では適用されない点です。所得税の申告書の数字をそのまま当てはめて税額を見積もると、実際より少なく想定してしまう場合があります。
個人の行政書士に対する税務調査
税務調査が入りやすいタイミング
開業1年目に調査が入ることは多くありませんが、可能性がないわけではありません。実務上は、開業から数年が経過し、売上や所得の推移が確認できるようになった段階で対象に選ばれるケースが目立ちます。
売上が急に増えた年、前年と比べて経費の構成が大きく変わった年、消費税の課税事業者になった年などは、税務署が内容を確認したいと考える場面です。
会社員と兼業で活動しているにもかかわらず、事業所得(青色申告)で損失を繰越などしていると、税務上は非常に危険な状態です。「開業届出書提出した=事業(青色申告)として認められた」という考え方は誤りですので注意しましょう。
調査で確認される帳簿と書類
税務調査で中心となるのは、帳簿と、その根拠となる書類です。
青色申告の場合、仕訳帳や総勘定元帳といった帳簿、損益計算書や貸借対照表などの決算関係書類、領収証や預金通帳などは、原則として7年間の保存が求められます。書類の種類によっては5年でよいものもありますが、まとめて7年で管理するほうが実務的です。
行政書士の業務に固有の点として、依頼者との委任契約書、報酬の請求書控え、依頼者から預かった実費の記録などが確認されます。売上の計上時期が業務の完了時期とずれていないか、預り金と報酬が混ざっていないかは、確認されやすい論点です。
メールやクラウド上でやり取りした請求書などの電子データは、電子データのまま保存することが求められています。紙に印刷して保管するだけでは要件を満たさない場合がありますので、開業時に保存のルールを決めておいてください。
開業1年目からできる備え
調査への備えは、特別な作業ではありません。日々の記帳を溜めないこと、事業用と私用の口座やカードを分けること、経費の判断に迷ったものはメモを残しておくことの3点で、大部分は対応できます。
とはいえ、家事按分の割合をどう決めるか、預り金をどう処理するか、消費税の課税事業者になる時期をどう見るかといった判断は、書籍やインターネットの情報だけでは決めきれない部分が残ります。開業初年度の処理は翌年以降の基準にもなるため、早い段階で整理しておくほど後の負担が軽くなります。
当事務所では、顧問契約を結ばずに単発でご相談いただけるスポット税務相談を承っています。「この経費は入れてよいのか」「今年は青色申告で問題ないか」といった具体的な論点をお持ちの方は、確定申告の時期を待たずにご相談ください。
よくある質問
ご自身の会計や税務について、「自分の場合はどのように進めるべき?」とお悩みの方は、まずは弊所サービス内容をご確認いただき、無料WEB面談をご予約下さいませ。
\ サービス範囲や料金を契約前に確認! /
当サイト内の情報をご利用を以て、以下へご承諾とさせて頂きます。
- 当サイト内の情報は正確性等を高めるよう努めておりますが、その内容に対して何らかの保証をするものではございません。
- 当サイト内の情報(第三者から提供された情報も含む。)をご利用頂いたことにより損害等が生じた場合でも、当サイト管理者は一切責任を負いかねます。
- 当サイト内のコラムは弊所の私見です。
- 当サイト内のコラムはその執筆時点における法令等の情報に基づき整理したものです。必ずご自身で最新の法令等の情報をご確認下さい。
- 当サイト内の情報の無断転載等は固く禁じます。
