「創業期は税務調査が来ない」という考えは誤解です。
特に、個人事業からの法人成り、個人事業時代の確定申告の未了、個人から法人への資産売却があるケースでは、設立初年度であっても確認の対象となり得ます。
本コラムでは、創業期の税務調査対策について執筆しています。
目次
創業期でも税務調査の対象となる代表的なケース
個人事業からの法人成り
法人成り初年度は、個人事業時代の資産・負債の引継ぎ処理が必ず発生するため、通常の新設法人よりも確認事項が多くなります。
棚卸資産や減価償却資産を法人へ引き継ぐ際の対価設定、売掛金・買掛金の整理、消費税の課税事業者判定などは、個人の確定申告と法人の申告内容を突き合わせた際に不整合が生じやすい項目です。
個人事業時代の確定申告の未了
法人設立前の個人事業について確定申告を行っていない場合、その未了分は法人の税務調査とは別に、所得税・消費税の無申告事案として把握される可能性があります。
国税庁は無申告者に対する調査を継続的に実施しており、消費税の無申告者に対する1件当たりの追徴税額は過去最高水準で推移していることが公表資料からも確認できます。
個人から法人への固定資産売却
個人が事業用の車両や設備、不動産などを法人へ売却する場合、その対価は原則として時価で設定する必要があります。時価の2分の1未満の価額で法人へ譲渡すると、実際の売却額ではなく時価によって譲渡所得の収入金額を計算する規定が適用されます。
例えば時価1億円の資産を4,000万円で法人へ売却した場合でも、譲渡所得の計算上は1億円で売却したものとして扱われます。
また、著しい低額譲渡や無償譲渡は、消費税法上もみなし譲渡として時価課税の対象となる場合があります。
次世代システムKSK2稼働による調査環境の変化
KSK2の概要と稼働時期
国税庁は現行の国税総合管理(KSK)システムを刷新し、次世代システム「KSK2」への移行を進めています。国税庁が公表する「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-」では、「課税・徴収の効率化・高度化等」を施策の柱の一つに掲げており、KSK2はこの方針を実現するための基盤システムと位置付けられています。
報道では、KSK2は令和8年(2026年)9月を目途に本格稼働する予定とされていますが、機能ごとのリリース時期を段階的に調整する検討も進められており、正式な稼働日程は国税庁の公式発表で確認する必要があります。
創業期の法人に求められる対応
KSK2そのものは申告・納税情報を一元的に管理するデータ基盤であり、AIが自動的に税務調査を実施する専用システムではありません。
一方で、国税庁は実地調査の対象選定に既にAIを活用していることを公表資料で明らかにしており、税目を横断してデータを参照できる基盤が整うことで、この選定の精度が今後さらに高まることが見込まれます。
創業期の法人においても、個人事業からの引継ぎ処理や資産の売買価格など、データの整合性が確認されやすくなる項目については、これまで以上に正確な記帳と根拠資料の保存が重要になります。
創業期のよくある質問
創業期でも税務調査は来る?
来るときもあります。少なくとも、「創業期だから来ないはず」という考えは誤りだと言えます。
国税庁は税務調査の選定基準や、設立から何期目の法人が優先されるかといった情報を公表していません。赤字法人や小規模法人は調査の優先度が下がる傾向があるとされることもありますが、これは公表された統計に基づくものではなく、基準として扱うことはできません。
法人成りに伴う資産の引継ぎや、個人事業時代の申告状況に不整合がある場合は、設立初年度であっても確認の対象となり得ます。
個人から法人へ資産を引き継ぐときは?
引き継ぐ資産ごとに時価を把握したうえで、売買・現物出資・賃貸のいずれの方法で引き継ぐかを決定し、その根拠資料を保存しておくことが重要です。なお、時価の把握は客観性が大事なので自己判断するのは危険です。必ず専門家へ相談しましょう。
不動産など時価の算定が難しい資産については、不動産鑑定士など専門家による評価を取得しておくと、後日の確認にも対応しやすくなります。
法人成りしたときは税務調査は来る?
法人成りをしたことのみを理由に、初年度に必ず税務調査が行われるという公表基準はありません。
ただし、個人事業時代の申告内容や資産の引継ぎ処理に疑問点がある場合は、通常の新設法人よりも確認される可能性が高まると考えられます。
法人成りに伴う資産の引継ぎや、個人事業時代の申告状況の整理は、金額の設定や処理方法を誤ると、法人設立後の税務リスクにつながります。
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