令和8年度の地域別最低賃金は、答申の段階で全国加重平均が1,177円となり、昨年度から56円の引き上げとなったようです。発効日は都道府県ごとに異なり、2026年10月1日から12月2日までの間に順次切り替わります。
このコラムでは、従業員を雇用している中小企業の経営者に向けて、発効日までに確認しておきたい賃金の項目、最低賃金を下回っていた場合の取り扱い、同じ時期に始まる社会保険の加入対象拡大、賃上げの負担を抑える助成金と税制を整理します。
\ 契約前にサービス内容や料金を確認! /
令和8年度の最低賃金改定の内容
全国加重平均1,177円への引き上げ
答申された改定額の全国加重平均は1,177円で、昨年度の1,121円から56円の引き上げです。47都道府県のすべてで、54円から65円の引き上げが答申されました。
56円という引き上げ額は、昭和53年度に目安制度が始まって以降で2番目の高さにあたります。最も高い額は1,280円、最も低い額は1,085円です。
都道府県ごとに異なる発効日
発効予定日は2026年10月1日から12月2日までの間に分かれており、すべての地域が10月1日から新しい金額になるわけではありません。自社の事業所がある都道府県の発効日を個別に確認する必要があります。
複数の都道府県に事業所がある場合は、事業所ごとに金額と発効日が変わります。答申された金額は、関係する労使からの異議申出の手続を経たうえで、都道府県労働局長が決定します。
発効日までに確認すべき自社の賃金
月給制・日給制の従業員の時間額換算
最低賃金の確認は、時給で働く従業員だけの話ではありません。月給制の場合は、月給を1か月平均所定労働時間で割った金額を、適用される最低賃金額(時間額)と比べます。
日給制の場合は、日給を1日の所定労働時間で割って比べます。基本給が日給制で手当が月給制というように支払形態が混ざっているときは、それぞれを時間額に換算したうえで合計して比較します。
最低賃金の計算に含められない賃金
最低賃金の対象になるのは、毎月支払われる基本的な賃金だけです。実際に支払われる賃金から、次の賃金を除外したものが比較の対象になります。
・臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
・時間外割増賃金、休日割増賃金、深夜割増賃金
・精皆勤手当、通勤手当、家族手当
給与明細の総支給額では最低賃金額を上回っていても、これらを除くと下回る場合があります。支給項目ごとに仕分けをしたうえで確認してください。
派遣社員に適用される最低賃金
派遣社員には、派遣元ではなく派遣先の事業場の所在地の最低賃金が適用されます。派遣元の会社が別の都道府県にあっても、判断の基準になるのは派遣先の地域です。
派遣元として社員を送り出している場合は、派遣先ごとに適用される金額と発効日を把握しておく必要があります。
締め日と発効日がずれる月の給与計算
新しい最低賃金は発効日以後の労働に適用されるため、給与の締め期間の途中に発効日が入る月は、発効日の前と後で単価を分けて計算します。
たとえば月末締めの会社で発効日が10月1日であれば、10月分の給与から新しい単価になります。一方、20日締めの会社であれば、9月21日から9月30日までと、10月1日から10月20日までを分けて集計することになります。
給与計算ソフトの単価を入れ替える日付を間違えると、後から差額の支払いが必要になります。締め日と発効日の関係は、給与計算の担当者と事前に共有しておくと安全です。
\ 契約前にサービス内容や料金を確認! /
最低賃金を下回っていた場合の取扱い
最低賃金額より低い賃金は、労使が合意していても法律上は無効となり、最低賃金額と同額を定めたものとみなされます。そのため、差額を支払う義務が残ります。
また、地域別最低賃金額以上の賃金を支払わない場合には、罰則として50万円以下の罰金が定められています。「知らなかった」「本人が納得していた」といった事情は、支払い義務を免れる理由にはなりません。
発効日を過ぎてから気づくと、対象となる従業員全員について、さかのぼって差額を計算し直すことになります。発効日前に確認しておくほうが、結果的に手間は少なくて済みます。
2026年10月に重なる社会保険の加入対象の拡大
賃金要件の撤廃
2026年10月1日から、短時間労働者が社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入するかどうかの判断要件のうち、月額賃金8.8万円以上という賃金要件が撤廃されます。いわゆる「年収106万円の壁」として意識されてきた要件です。施行期日は政令で定められました。
撤廃後は、週の所定労働時間が20時間以上であるかどうかが主な判断基準になります。最低賃金の引き上げで時給が上がると、同じ勤務時間でも月額賃金が上がるため、就業調整をしていた従業員の働き方にも影響します。
自社が対象になる時期
賃金要件の撤廃で直接影響を受けるのは、現時点ですでに短時間労働者への社会保険適用が義務づけられている事業所と、労使の合意により任意で適用している事業所です。
企業規模の要件そのものについては、10年をかけて段階的に縮小・撤廃される予定とされています。自社がいつ対象になるかによって、対象者の洗い出しや従業員への説明を始める時期は変わります。
\ 契約前にサービス内容や料金を確認! /
賃上げの負担を抑える助成金と税制
業務改善助成金
業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金を50円以上引き上げ、あわせて生産性向上に役立つ設備投資などを行った中小企業・小規模事業者に対し、その費用の一部を助成する制度です。令和8年度は最大600万円が助成上限とされています。
令和8年度の申請期間は、令和8年9月1日から、申請する事業所に適用される地域別最低賃金の発効日の前日または同年11月30日のいずれか早い日までです。
注意が必要なのは引き上げの時期です。地域別最低賃金の発効に対応して賃金を引き上げる場合、発効日の前日までに引き上げを完了している必要があり、発効日当日に引き上げたものは対象外とされています。
中小企業向け賃上げ促進税制
中小企業向け賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、前年度より給与等の支給額を増やし一定の要件を満たした場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から差し引ける制度です。
令和8年度税制改正を経た現行の制度は、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度が対象とされています。控除しきれなかった金額を翌年度以降に繰り越せる措置もあるため、赤字の年度に賃上げを行った場合でも検討の余地があります。
最低賃金の引き上げは、給与計算の実務だけでなく、社会保険料の負担や法人税の見込みにも同時に影響します。
\ 契約前にサービス内容や料金を確認! /
よくある質問
ご自身の会計や税務について、「自分の場合はどのように進めるべき?」とお悩みの方は、まずは弊所サービス内容をご確認いただき、無料WEB面談をご予約下さいませ。
\ サービス範囲や料金を契約前に確認! /
当サイト内の情報をご利用を以て、以下へご承諾とさせて頂きます。
- 当サイト内の情報は正確性等を高めるよう努めておりますが、その内容に対して何らかの保証をするものではございません。
- 当サイト内の情報(第三者から提供された情報も含む。)をご利用頂いたことにより損害等が生じた場合でも、当サイト管理者は一切責任を負いかねます。
- 当サイト内のコラムは弊所の私見です。
- 当サイト内のコラムはその執筆時点における法令等の情報に基づき整理したものです。必ずご自身で最新の法令等の情報をご確認下さい。
- 当サイト内の情報の無断転載等は固く禁じます。
