事業承継がうまくいかないパターン。資産承継だけでなく経営承継も大切。

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目次

「後継者の有無」から始める

事業承継を検討する際、最初に行うべきは後継者候補がいるかどうかの確認です。後継者候補の有無によって、その後に取るべきアプローチがまったく異なるためです。

後継者候補がいる場合は、自社の経営環境と外部の経営環境を踏まえたうえで、その候補者に事業を承継させるべきかどうかを検討します。一方、現時点で後継者候補がいない場合は、中長期的に後継者を育成する仕組みを社内に構築するのか、あるいは外部人材の登用や他社への事業譲渡(M&A)によって事業を存続させるのかを検討することになります。

中小企業庁の「事業承継ガイドライン」でも、この後継者不在という課題は長年にわたり指摘されてきました。経営者の高齢化が進む一方で、後継者が決まっていない企業は依然として少なくなく、廃業や事業縮小のリスクを避けるためにも、早い段階での検討開始が推奨されています。

  • 「買手はきっとすぐに見つかるだろう」と軽視しないようにすることが大事。
  • 事業承継という選択肢を取れないこともある。

資産承継と経営承継

「事業承継」「M&A」と聞くと、資産承継の話ばかりに目がいきがちです。実際、M&A業者などの広告やPRなどの資料も見てみてればほとんどが資産承継の話ばかりです。

しかし、資産承継は事業承継における両輪の一つに過ぎず、経営承継への視点がなければそれは事業承継とは呼べません。

M&A業者や上辺だけのコンサルティングをおこなう事業承継コンサルティングの甘言に惑わされず、経営承継の計画も立てる必要があります。

  • 事業承継≒資産承継+経営承継
  • ちまたにあふれる事象承継の情報は、資産承継の話が多い。
  • 事業承継が上手くいかない大きな理由のひとつが経営承継をないがしろにしているため。

経営承継の現状分析で押さえるべきポイント

後継者候補の有無を確認したら、次に行うのが経営承継に関する現状分析です。ここでは主に次の3点を整理します。

  • 後継者候補の検討:後継者候補としての資質や、経営者としての覚悟があるかどうかを見極めます。
  • 事業の見極め:自社を取り巻く外部環境と内部環境を分析したうえで、後継者候補に事業を承継させるべきかどうかを判断します。
  • 事業承継の方向性の検討:親族内承継、社内(役員・従業員)承継、第三者承継(M&A)のいずれの方向で進めるのかを検討します。

近年は、親族内に適任者がいないケースの増加を背景に、社内の役員・従業員への承継や、第三者承継としてのM&Aを選択する企業が増えています。とりわけM&Aについては、後継者不在に悩む企業の受け皿として、各都道府県に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター」など公的機関の活用も選択肢の一つです。

ファミリーと資本政策の両面から

経営承継の方向性が固まったら、それに応じて株式などの資産承継についても現状分析を行います。資産承継の現状分析は、大きく「ファミリーに関する現状分析」と「資本政策に関する現状分析」の2つに分けられます。

ファミリーに関する現状分析

  • 相続人の法定相続分および遺留分の確認
  • 株式等の事業資産、事業外資産の評価とその推移の把握
  • 一次相続・二次相続にかかる相続税の試算

特に非上場株式の評価額は業績によって変動するため、定点観測しておくことが重要です。また、後継者以外の相続人がいる場合は、遺留分への配慮も欠かせません。

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)には、遺留分に関する民法の特例(除外合意・固定合意)が定められており、株式が分散して経営権が不安定化することを防ぐための制度として活用されています。

資本政策に関する現状分析

議決権として本来あるべき姿と、現状の株主構成との間にどの程度のギャップがあるかを把握します。

株式が親族や取引先などに分散している場合、後継者が経営権を安定して行使できないおそれがあるため、早期にギャップを可視化しておくことが求められます。

現状分析を踏まえた計画策定

現状分析の結果を踏まえ、あるべき姿を目指すための計画を、経営承継と資産承継のそれぞれについて策定します。

経営に関する計画

  • 役職・役割・権限・責任の移行スケジュールの策定
  • 後継者の育成計画の策定
  • 組織づくり計画の策定

権限移譲は一度に行うのではなく、段階的なスケジュールを組むのが一般的です。後継者の育成についても、社内でのローテーションや外部での経験、経営塾の活用などを組み合わせながら、計画的に進めることが望まれます。

資産に関する計画

ファミリーに関する計画では、株式等資産の評価推移を踏まえた「移転方法」「納税方法」「分割方法」の3つの視点から検討を行います。資本政策に関する計画では、あるべき姿と現状とのギャップを埋めるための承継・集約方法や、そのための資金調達・納税方法を検討します。

資産承継の実務では、暦年贈与や相続時精算課税制度の活用、種類株式・信託の活用、事業承継税制(法人版・個人版)による納税猶予・免除制度の利用など、複数の選択肢を組み合わせて検討することになります。事業承継税制については、特例承継計画の提出期限や適用期限などの制度要件がたびたび見直されているため、実際に活用を検討する際は、必ず中小企業庁や顧問税理士に最新の要件を確認してください。

承継計画は実行しながら修正する

経営承継・資産承継それぞれの計画を策定したら、それに基づいて各種施策を実行に移します。

ただし、事業承継は一度計画を立てれば完了するものではありません。業績の変化、税制改正、後継者の成長度合いなど、計画策定時には想定していなかった要素が実行段階で必ず出てきます。

そのため、策定した計画の内容は固定的に捉えず、状況の変化に応じて都度見直しながら実行していくことが不可欠です。事業承継は短くても5年、長ければ10年以上を要する取り組みであり、定期的に現状分析からやり直す姿勢が結果的に承継の成功確率を高めます。

  • 走りながら軌道修正してゆく。

FAQ

事業承継の全体像は?

後継者候補の有無の確認に始まり、経営承継・資産承継それぞれの現状分析、計画策定、実行というプロセスを経て進みます。

資産承継ではどんなことをやるの?

法定相続分や遺留分、株式評価、相続税、議決権構成など、法務・税務にまたがる専門的な検討が必要になります。

そのため、早い段階から税理士・弁護士・事業承継の専門機関など、複数の専門家を交えて進めることが望ましいといえます。

まずなにから始めればいい?

100人の売手がいれば100通りの状況が存在するため、簡単に何かフォーマットに当てはめられる話ではありません。

承継時期がまだ数年先であれば、まずは自社の経営環境と株主構成の棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか。

また、中小企業庁のHPに掲載されている『事業承継診断シート』も記入してみましょう。

M&A仲介業者にサポートをお願いするときに注意すべきことは?

ニュースにもなっていたので見たことがある方も多いと思いますが、本当に信頼できる業者なのかどうかを見極めることです。

今後の動向は未定ですが、M&A仲介という仕事は資格不要です。経営やM&Aの実務もまるで分からないような素人でもやろうと思えばできてしまうという恐ろしい実態がありました。参入障壁も低いため、全くM&Aに明るくなく、別事業を営んでいる事業者でもサイドビジネスとしてM&A仲介業をおこなっているケースもあります。

ほとんど詐欺に近いものもあるので実績と信頼のある業者を選びましょう。M&Aにおいては「厳しいことを言わない業者」「セールストークしか言わない業者」は全て疑ってかかるくらいがちょうどよいでしょう。

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この記事を書いた人

澁谷 修平のアバター 澁谷 修平 税理士

■事務所概要■
【名称】澁谷税理士事務所
【取扱業務】税務、会計、経理体制構築支援、クラウド会計導入支援、電子帳簿保存法対応支援、創業支援、資金繰り支援、政治資金監査
【サービス提供地域】東京及び埼玉、千葉、神奈川を中心としてオンラインにて全国対応
【インボイス登録番号】T8810003064837

■資格・認定■
税理士(150781)
政治資金監査人(6390)
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マネーフォワードクラウド経理財務領域マスター検定
マネーフォワードクラウド会計アドバンスド検定
マネーフォワードクラウド請求書検定
マネーフォワードクラウド経費検定
GMOあおぞらネット銀行創業支援パートナー

■所属■
東京税理士会
東京商工会議所
稲門会

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