創業期の経営者の中には、「赤字決算だと金融機関から評価されないのではないか」「少しでも利益を出した決算書にしたい」と考える方もいます。しかし、決算書は単に黒字・赤字を見るためのものではありません。
金融機関は、利益の金額だけではなく、その利益がどのような取引や経営活動によって生じたものなのか、数字に一貫性があるのかを確認しています。
一時的に利益を増やすために実態と異なる処理を行うことは、将来的に会社の信用を大きく損なう可能性があります。
今回は、創業期の赤字との向き合い方と、なぜ少額の粉飾でも発覚するのかについて解説します。
\ 契約前にサービス内容や料金を確認! /
創業期の赤字は即座に金融機関評価を下げるわけではない
創業直後の赤字は、珍しいものではありません。創業期には、売上が十分に確保できていない一方で、以下のような支出が先行します。
- ホームページ制作費
- 広告宣伝費
- 採用費
- システム導入費
- 店舗や設備への投資
これらは将来の売上を作るための投資であり、その結果として赤字になることがあります。金融機関が確認するのは、「赤字になったかどうか」だけではありません。
重要なのは、
- 赤字になった原因を経営者が把握しているか
- その原因に対する改善策があるか
- 今後利益を出せる事業計画になっているか
という点です。
例えば、創業初年度に広告費を積極的に投入した結果として赤字になった場合、その広告投資によって翌期以降の売上増加が見込めるのであれば、合理的な赤字と判断される可能性があります。
反対に、赤字を避けるために事実と異なる利益を作ることは、金融機関が評価する「経営者の管理能力」や「会社の信用」を損なう原因になります。
税金を多く払っているからOKではない
「費用を減らして利益を増やすのではなく、税金を多く払う方向の処理なら問題ないのではないか」と考える方もいます。これは多くの創業期経営者が陥り勝ちな誤りです。しかし、粉飾かどうかを判断するポイントは、税金の金額ではありません。
実際の会社の経営成績や財政状態と異なる決算書を作成しているかどうかが重要です。
例えば、以下のような処理は利益を増やす方向になります。
- 実際には発生していない売上を計上する
- 売上の計上時期を前倒しする
- 実在しない在庫を計上する
- 費用を本来計上すべき期間から除外する
これらの処理をすると、結果として法人税等の負担は増えることがあります。しかし、それは「正しい決算書」ではありません。金融機関は、その決算書をもとに融資判断を行います。
つまり、税金を多く払っているかどうかではなく、「金融機関に対して実態とは異なる財務情報を提示したかどうか」が問題になります。
また、粉飾によって一時的に融資を受けられたとしても、本来の収益力や資金繰りが改善されるわけではありません。
むしろ、後になって数字の修正が必要になった場合、金融機関から「以前提出された決算書は信用できない」と判断されるリスクがあります。
- 「税務署目線の話」と「金融機関目線の話」を混同しない。
信用は積み上げに時間がかかり失うのは一瞬
創業期の会社にとって、金融機関からの信用は重要な経営資源です。創業直後は、過去の決算実績が少ないため、金融機関は決算書、試算表、資金繰り状況などから会社の状態を判断します。
その際に重要になるのが、数字そのものだけではなく、数字の信頼性です。例えば、赤字であっても、
- 赤字理由を説明できる
- 問題点を把握している
- 改善策を実行している
会社であれば、金融機関は事業の将来性を含めて判断します。
一方で、利益額をよく見せるために不自然な処理を行っていることが判明すると、利益以上に大きなマイナス評価になります。信用は毎年の正確な決算や経営実績によって少しずつ積み上がります。
しかし、一度「決算書の数字を信用できない」と判断されると、回復には時間がかかります。
決算書の複数の数字から粉飾の痕跡は確認される
粉飾は、単純に利益だけを見ると発見されないように見える場合があります。しかし、複式簿記というものは、必ず最後は辻褄が合うようにできているため、粉飾をおこなうと必ずその痕跡が残ります。
金融機関は決算書を総合的に確認しています。例えば、以下のような点です。
- 売上増加に対して売掛金が過大になっている
- 利益が出ているのに現預金が増えていない
- 在庫が事業規模と比較して異常に増加している
- 利益率が同業他社と比較して不自然に高い
- 前期と比較して特定の科目だけ大きく変動している
利益は会計処理によって一定程度変動させることができます。
しかし、売上・資産・負債・キャッシュフローなど、決算書全体の数字を長期間にわたって自然に整合させることは容易ではありません。
また、税務申告書や帳簿などとの関係から、不自然な点が確認されることもあります。
赤字の金額より赤字になった原因が重要
経営において重要なのは、赤字を隠すことではなく、赤字の原因を分析することです。同じ赤字でも、その内容は大きく異なります。例えば、
- 創業時の先行投資による赤字
- 人材採用による一時的な赤字
- 売上減少による赤字
- 利益率低下による赤字
では、金融機関から見た意味は変わります。金融機関が知りたいのは、「赤字になった会社かどうか」ではありません。「なぜ赤字になったのかを経営者自身が理解し、改善できる会社なのか」という点です。
正確な決算書を作成し、その数字をもとに経営改善を行うことが、結果的に金融機関からの信用につながります。
よくある質問
ご自身の会計や税務について、「自分の場合はどのように進めるべき?」とお悩みの方は、まずは弊所サービス内容をご確認いただき、無料WEB面談をご予約下さいませ。
\ サービス範囲や料金を契約前に確認! /
当サイト内の情報をご利用を以て、以下へご承諾とさせて頂きます。
- 当サイト内の情報は正確性等を高めるよう努めておりますが、その内容に対して何らかの保証をするものではございません。
- 当サイト内の情報(第三者から提供された情報も含む。)をご利用頂いたことにより損害等が生じた場合でも、当サイト管理者は一切責任を負いかねます。
- 当サイト内のコラムは弊所の私見です。
- 当サイト内のコラムはその執筆時点における法令等の情報に基づき整理したものです。必ずご自身で最新の法令等の情報をご確認下さい。
- 当サイト内の情報の無断転載等は固く禁じます。
