フリーランスエンジニアの個人事業税は非課税?BIG4出身税理士が解説。

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フリーランスエンジニアとして活動していると、ある年突然「個人事業税」の納税通知書が届いて驚いた、という方は少なくありません。

「エンジニアは個人事業税がかからない」という情報をネットで見かけたことがある方もいるでしょう。しかし、この情報は半分正しく、半分は誤解を招く表現です。

この記事では、個人事業税の制度の仕組みと、フリーランスエンジニアが課税対象になるかどうかの実際の判断基準について解説します。

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目次

個人事業税

個人事業税とは

個人事業税は、地方税法で定められた特定の事業(法定業種)を営む個人事業主に対して課される地方税です。所得税や住民税とは別に、都道府県が個別に課税する税金であり、確定申告とは異なる手続きを要する場合があります。

個人事業税は、すべての個人事業主が課税対象になるわけではありません。地方税法で定められた「第一種事業」「第二種事業」「第三種事業」のいずれかに該当する事業を営んでいる場合にのみ、個人事業税が課されます。

課税の対象となるかどうかは、前年(1月1日〜12月31日)の事業所得を基準に判定されます。

事業所得が一定額(事業主控除額)を超えた場合に、その超えた部分に対して税率を掛けた金額が課税されます。

個人事業税の計算式

個人事業税の金額は、以下の式で算出されます。

(事業所得 − 各種控除 − 事業主控除290万円)× 業種ごとの税率 = 個人事業税額

事業主控除額は年間290万円です。年の途中で開業・廃業した場合は、事業を行った月数に応じて控除額が調整されます。

業種ごとの税率一覧

区分税率主な業種(一部)
第一種事業5%物品販売業、製造業、運送業、請負業、印刷業、出版業、写真業、飲食店業、不動産貸付業、代理業、仲立業 など
第二種事業4%畜産業、水産業、薪炭製造業
第三種事業5%
(一部3%)
医業、歯科医業、弁護士業、会計士業、税理士業、デザイン業、コンサルタント業、不動産鑑定業 など
※あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業は3%
個人事業税|仕事と税金|東京都主税局

上記の70業種に該当しない事業(たとえば原稿執筆や講演を主とする文筆業など、地方税法上の業種区分に明確に該当しない業務)については、個人事業税の課税対象外となります。

第一種事業

第一種事業は、いわゆる「営業」に類する業種が中心です。

物品販売業、保険業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、電気供給業、土石採取業、電気通信事業(放送事業を含む)、運送業、運送取扱業、船舶定係場業、倉庫業、駐車場業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業、飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、両替業、公衆浴場業(一部除く)などが含まれます。

フリーランスエンジニアの業務で該当する可能性があるとすれば「請負業」です。

第三種事業

第三種事業は、主に一定の資格・免許等に基づいて営まれる業種、いわゆる「自由業」が中心です。何かしらの専門性が求められる職業がここに区分されるようです。

  • 医業
  • 歯科医業
  • 薬剤師業
  • 獣医業
  • 弁護士業
  • 司法書士業
  • 行政書士業
  • 公証人業
  • 弁理士業
  • 計理士業
  • 社会保険労務士業
  • コンサルタント業
  • 設計監督者業
  • 不動産鑑定業
  • デザイン業
  • 諸芸師範業
  • 商品検査業
  • 計量士業
  • 土地家屋調査士業
  • 印刷製版業

フリーランスエンジニアの業務で該当する可能性があるとすれば、「コンサルタント業」「デザイン業」であると考えられます。

納付時期と納付方法

個人事業税は、前年(1月1日〜12月31日)の事業所得に基づいて課税され、原則として翌年の8月と11月の2回に分けて納付します。確定申告を行った場合、その情報が都道府県税事務所に共有されるため、個人事業税の申告書を別途提出する必要は基本的にありません。ただし、確定申告をしない場合(所得が少なく所得税の申告義務がない場合など)は、都道府県税事務所に個人事業税の申告書を直接提出する必要があり、提出期限は毎年3月15日です。

納付方法は、各都道府県から送付される納税通知書を用いた窓口・金融機関での納付に加え、コンビニ払い、口座振替、ペイジー、クレジットカード、スマートフォン決済アプリなど、複数の方法が用意されているのが一般的です。

経費としての取り扱い

個人事業税は、所得税や住民税とは異なり、全額を必要経費として計上できます

会計上は「租税公課」という勘定科目で処理します。経費として計上するタイミングには注意が必要です。個人事業税は「納付した年」の経費として計上するため、前年分の事業所得に対して当年の8月・11月に納付する個人事業税は、当年分の経費として処理することになります。

「その年の所得にかかる税金だからその年の経費になる」という誤解をしないよう留意してください。

地域によって課税されたりされなかったり

個人事業税の性質が悪いところは、業種の認定基準が、都道府県によって異なるという点です。「実際の業務内容がどの業種に該当するか」という個別の認定は、各都道府県税事務所の判断に委ねられています。

つまり、同一の業務内容であっても、住んでいる都道府県によって判定が分かれるケースが生じます。たとえば、事業内容も取引先も変わっていないにもかかわらず、引っ越しただけで、今まで課税されていなかった個人事業税が課税されるようになる、という状況もあり得るということです。

同じ業種・同じ業務内容であっても、自治体ごとに判断が割れるという点は、個人事業税という制度の構造上の特殊さといえます。これは法律上の業種定義が抽象的であることに加え、実務上の認定が現場の税務担当者の裁量に依存している部分が大きいためです。

個人事業税のお尋ねが来ることも

oshigotononaiyou.pdf

個人事業税に係る業務実態について、自治体から上記のような質問書がくることがあります。来た場合は客観的事実に基づいて粛々と対応しましょう。

フリーランスエンジニアは非課税?

「請負業」?

 「請負」とは、当事者の一方(請負者)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを内容とする契約をいい、民法第632条《請負》に規定する「請負」のことをいいます。なお、同法第648条の2《成果等に対する報酬》に規定する委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約する契約は「請負」には該当しません。

この「請負」は、完成された仕事の結果を目的とする点に特質があり、仕事が完成されるならば、下請負に出してもよく、その仕事を完成させなければ、債務不履行責任を負うような契約です。

請負の意義|国税庁

個人の方が行う事業が、次の(1)から(4)の要件をすべて満たす場合は、「請負業」として個人事業税の課税対象となります(注意)。

(1)仕事の完成を目的とした契約に基づき収入を得ていること
(2)資本的経営を行っていること
(3)仕事の計画及び遂行について独立性を有すること
(4)危険負担を有すること

個人事業税の請負業について – 神奈川県ホームページ

準委任契約で業務受託として活動するフリーランスのエンジニアが、上記に該当するような「請負」に該当するような業務を受託することはほとんどないと思われます。IT業界において、請負契約を受託するのは大手のSIerが大半ではないでしょうか。

弊所で過去にある自治体に照会をかけたところ、「契約内容により請負契約かどうかも確認はするが、総合判断で決める」のような回答を得たこともあります。

この理屈が成立するならば、民法上の「請負」に該当しなかったとしても、自治体税務課が勝手に「請負である」と恣意的に決めていいことになってしまいますので、何を言っているのかよく分かりませんが、請負契約かどうかだけでなく、他の要素も見る、との趣旨のようです。

「コンサルタント業」「デザイン業」?

該当するケースは多くないと思われますが、ITやAIに関するコンサルティングをおこなっている、フロントエンドエンジニアでありUIのデザインをおこなっているなどの場合、第三種に該当する可能性もあります。

自治体によって判断が異なる

第14 請負業
【定義】
請負業とは、その事業が通常請負契約によって行われるものをいいます。
大工、左官、とび職等の建設業をされている方は、所得税の申告において事業所得(営業)
として申告がある場合は、請負業に該当します。
【業種の主な例】
(1) 土木、建築関係
土木建築業(大工、左官、とび職、塗装工、植木造園、畳工等)
(2) 加工関係
染色、表装経師、陶器絵付、眼鏡枠磨き、自動車点検設備、製本
(3) その他のサービス業務
清掃、ビル管理、警備、医療保険事務、通関、翻訳(翻訳作家を除く)、新聞の広告
折込、廃棄物処理、キーパンチャー、プログラマ、システムエンジニア(常駐 SE の
うち、準委任契約(システムやソフトウェア等の保守管理)により事業を行う場合
はコンサルタント業に該当)

個人事業税について | 福井県ホームページ

弊所にてある自治体に照会をかけたときは、「『システム開発』であれば専門性が求められるので通常は第三種で検討する。第三種事業の中に『システム開発』がないため、個人事業税の発生する事業区分に該当しない」とのことですが、福井県においては、公式に「請負業」に該当するとの公式情報もあります。

福井県による請負業の例示を見ると、たとえば「警備」など国税庁定義上の「請負」に該当しなさそうなものまで「請負」ということにされているなど、自治体が独自のロジックで勝手に判断しているような節もあります。

つまり、実務上の対応としては、業務実態を精査して整理し、+管轄自治体に確認する、というやり方が現実的です。

弊所でも過去に自治体に対して照会をかけた結果、結論としては「明確な答えはわからない」になります。というより、自治体の税務課職員もわかっていない(判断できない)立場です。

本来、税務には予測可能性(こう行動すればこういう結果になるはず、と納税者が予測できる状態)が担保されていなければなりませんが、そうなっていないため、何とも気持ち悪いですが、ご自身の業務実態を丁寧に整理してから該当するしないを判断するしかありません。

「エンジニア」という名称だけで非課税の判断はNG

最も注意すべき点は、「フリーランスエンジニア」という肩書きや職業名そのものが、課税・非課税を決定づける要素ではないということです。実際に、肩書・職業名だけで自己判断してしまっている方も多いのではないでしょうか。

地方税法上の業種区分は、契約形態・業務内容・対価の支払い方法といった事業の実態に基づいて判定されます。同じ「フリーランスエンジニア」という名称を使っていても、売上の発生源となっている業務の実態が異なれば、課税区分も異なります。

東京都内の場合、一般論として、業務内容が成果物の完成を直接の目的とせず、稼働時間に対して対価が支払われる準委任契約に基づくシステム保守・運用支援などは、非課税と判断される場合が多いようですが、契約形態や業務の実態によって判定が変わるため、「フリーランスエンジニア=非課税」という単純な図式は成立しません。

非課税となる業務とは別で、コンサルティングもおこなっているフリーランスエンジニアの方が、全て非課税として整理してしまい、後日ペナルティを課せられるケースもあります。

よくある質問

フリーランスエンジニアは、個人事業税が非課税になる?

東京都で、準委任契約の業務受託として活動するフリーランスエンジニアの場合は、結果的に非課税となるケースが多いようです。

ただし、必ず非課税となるわけではありません。

夏に自治体から手紙が届いたがどうすればいい?

ほとんどのケースでは、業務実態を確認するためのヒアリングです。

客観的事実に基づいて回答しましょう。「事業税を課税されたくないから嘘をつく」は絶対にNGです。

フリーランスエンジニアで個人事業税が課税されるケースは?

住んでいる自治体が「請負業」「コンサルタント業」「デザイン業」と判断するようなケースです。

結局、どうすればいい?

ご自身の業務内容を棚卸して、「この業務は〇〇だから、該当する/しない」という整理をすることです。

ご自身の会計や税務について、「自分の場合はどのように進めるべき?」とお悩みの方は、まずは弊所サービス内容をご確認いただき、無料WEB面談をご予約下さいませ。

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この記事を書いた人

澁谷 修平のアバター 澁谷 修平 税理士

■事務所概要■
【名称】澁谷税理士事務所
【取扱業務】税務、会計、経理体制構築支援、クラウド会計導入支援、電子帳簿保存法対応支援、創業支援、資金繰り支援、政治資金監査
【サービス提供地域】東京及び埼玉、千葉、神奈川を中心としてオンラインにて全国対応
【インボイス登録番号】T8810003064837

■資格・認定■
税理士(150781)
政治資金監査人(6390)
マネーフォワードクラウド公認メンバー
マネーフォワードクラウド経理財務領域マスター検定
マネーフォワードクラウド会計アドバンスド検定
マネーフォワードクラウド請求書検定
マネーフォワードクラウド経費検定
GMOあおぞらネット銀行創業支援パートナー

■所属■
東京税理士会
東京商工会議所
稲門会

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