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「IT業に強い税理士」とは?
「IT業に強い」税理士を探しているにも関わらず、インターネットで調べると単に「ITツールを使える税理士」だの「クラウド会計に対応している税理士」だのばかり出てきて、「そういう意味じゃないんだけど…」と感じている方もいるのではないでしょうか。
ITツールを使える、クラウド会計に対応している、といった要素は今の時代、何の特徴でもありません。
税理士はIT業界の人間でもなければエンジニアでもありませんので「IT業界に精通している」と言うとおこがましいのですが、弊所では「IT業に強い」=「IT業界構造をある程度理解している」「IT業界特有の税務会計を使える」と定義しています。
受託開発か自社開発か
開発形態の違い
| 区分 | 受託開発系 | 自社開発系 |
|---|---|---|
| 開発コスト | ユーザー企業が負担する | 自社で負担する |
| 売上 | ユーザー企業から受け取る報酬 | 開発したシステム等を提供して受け取る対価 |
| エンジニア | 比較的外注が多め | 自社で雇用が多め |
ひとことでIT業といっても、受託開発系なのか自社開発系なのかによって話も変わってきます。「IT業」というざっくりとした括りで理解せず、自社がどちらの形態なのかを理解することによって、自社の利益構造を正しく理解でき、事業上リスクへの準備をすることができます。
受託開発系
開発コストを発注者側が持ちます。受託開発側企業はその技術力を提供することによって、発注者側から報酬を受け取り、それが売上げとなります。一般論として、日本は自社開発系IT企業よりも受託開発系IT企業(「受託システム開発」と「システム運営受託」を担う受託開発系ベンダー)の方が多いと言われています。
繁忙・閑散が受託状況によって変わるため、必要なIT人材を外部から調達(外注)する(開発を委託する)ことが多いという特徴があります。一般的に、社内エンジニア:外注エンジニア=3:7程度と言われていますが、最近はSESの方が活発で、純然な受託開発業務を新規で受注することはハードルが高い場合も。
ちなみに、受託開発系の中にも、いわゆる「一次請け(元請け)」と「二次請け(下請け)」「三次請け(下請け)」などがあり、この辺りは建設業と似ています。
自社開発系
開発コストを自社で持ちます。自社で開発したシステムやアプリをそのままユーザーへ販売・提供し、その代金が売上げとなります。
GoogleやMicrosoftなどの大手が自社開発系としてメジャーどころですが、個人エンジニアでアプリを個人で開発してリリースしている事業者もおり、そのような方々も分類上は自社開発系です。
IT業における契約形態
請負契約や準委任契約
ユーザー企業⇔ITベンダー間の契約の場合、請負契約となることが多いでしょう。
ただし、ユーザー企業と直契約するITベンダーとなればかなり上流の方になりますので、数としてはあまり多くはありません。ITベンダー⇔協力会社などの契約の場合、準委任契約となる場合が多いと考えられます。
一般的に、前者の場合報酬は契約で請負代金を定め、後者の場合は工数などに応じて報酬を決定する形が見られます。
契約書ひな型
IPA公式サイトにモデル取引・契約書のひな型や注意事項が掲載されています。
元勤務先が顧客となるケースでは、取引先が契約書のひな型を用意してくれることも多いかもしれませんが、そうでない場合は有益な情報ですので目を通しましょう。
ただしこれをそのまま使うと個別性が反映されなくなるため、最終的には弁護士等の法務分野の専門家へ相談すべきです。
フリーランスエンジニアの場合
個人事業主のフリーランスエンジニアの場合、自分で契約書のひな型を弁護士等と相談して準備して、契約内容を発注元と交渉して…という方はほとんどいませんが、自営業として活動する以上必要最低限のことは学んでおくべきです。
以下のサイトには有益な情報が掲載されていますので読んでおくと良いでしょう。
IT業における売上計上時期
目的物引渡し日 or 役務提供日
原則
法人税法上、以下の日の属する事業年度の益金(≒税法上認められる収益)の額に算入するのが原則です。
- 目的物の引渡し日
- 役務の提供の日
特例
ただし、以下のようなケースにおいては、それぞれに応じた事業年度の益金の額に算入します。
- 会計ルールに従って、目的物引渡し日や役務提供日に近接する日の属する事業年度において収益経理した場合⇒収益経理した事業年度
- 収益経理はしていないが『近接する日』の属する事業年度において申告調整した場合⇒申告調整した事業年度
この「引渡し日」「役務提供日」「近接する日」とサラッと書かれていますが、これらの日が一体いつを指すのかという点がポイントであり、一番難しいところです。
根拠
第二十二条の二 内国法人の資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供(以下この条において「資産の販売等」という。)に係る収益の額は、別段の定め(前条第四項を除く。)があるものを除き、その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。
法人税法より
2 内国法人が、資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて当該資産の販売等に係る契約の効力が生ずる日その他の前項に規定する日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合には、同項の規定にかかわらず、当該資産の販売等に係る収益の額は、別段の定め(前条第四項を除く。)があるものを除き、当該事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。
3 内国法人が資産の販売等を行つた場合(当該資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて第一項に規定する日又は前項に規定する近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合を除く。)において、当該資産の販売等に係る同項に規定する近接する日の属する事業年度の確定申告書に当該資産の販売等に係る収益の額の益金算入に関する申告の記載があるときは、その額につき当該事業年度の確定した決算において収益として経理したものとみなして、同項の規定を適用する。
(一部省略)
役務の提供の日
履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの
以下のようなものは、「その履行義務が充足されていくそれぞれの日」が、『役務の提供の日』に該当することとされています。
(履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの)
2-1-21の4 次のいずれかを満たすものは履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに該当する。(平30年課法2-8「二」により追加)
(1) 取引における義務を履行するにつれて、相手方が便益を享受すること。
(注) 例えば、清掃サービスなどの日常的又は反復的なサービスはこれに該当する。
(2) 取引における義務を履行することにより、資産が生じ、又は資産の価値が増加し、その資産が生じ、又は資産の価値が増加するにつれて、相手方がその資産を支配すること。
(注) 上記の資産を支配することとは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんど全てを享受する能力(他の者が当該資産の使用を指図して当該資産から便益を享受することを妨げる能力を含む。)を有することをいう。
(3) 次の要件のいずれも満たすこと。
イ 取引における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること。
ロ 取引における義務の履行を完了した部分について、対価の額を収受する強制力のある権利を有していること。
第3款 役務の提供に係る収益|国税庁
履行義務が一時点で充足されるもの
(履行義務が一時点で充足されるものに係る収益の帰属の時期)
2-1-21の3 役務の提供のうち履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの以外のもの(以下2-1-30までにおいて「履行義務が一時点で充足されるもの」という。)については、その引渡し等の日が法第22条の2第1項《収益の額》に規定する役務の提供の日に該当し、その収益の額は、引渡し等の日の属する事業年度の益金の額に算入されることに留意する。(平30年課法2-8「二」により追加)
第3款 役務の提供に係る収益|国税庁
請負の場合
大手SIerなど元請けの場合、請負契約でユーザー企業と契約していることもあるかと思いますが、その場合は原則的には「引渡し等の日」=「役務の提供の日」とされます。
(請負に係る収益の帰属の時期)
2-1-21の7 請負(法第64条第1項《長期大規模工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度》の規定の適用があるもの及び同条第2項《長期大規模工事以外の工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度》の規定の適用を受けるものを除く。以下2-1-21の7において同じ。)については、別に定めるものを除き、2-1-21の2及び2-1-21の3にかかわらず、その引渡し等の日が法第22条の2第1項《収益の額》に規定する役務の提供の日に該当し、その収益の額は、原則として引渡し等の日の属する事業年度の益金の額に算入されることに留意する。ただし、当該請負が2-1-21の4(1)から(3)までのいずれかを満たす場合において、その請負に係る履行義務が充足されていくそれぞれの日の属する事業年度において2-1-21の5に準じて算定される額を益金の額に算入しているときは、これを認める。(平30年課法2-8「二」により追加)
(注)
1 例えば、委任事務又は準委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約している場合についても同様とする。
2 2-1-1の4の取扱いを適用する場合には、その事業年度において引き渡した建設工事等の量又は完成した部分に対応する工事代金の額をその事業年度の益金の額に算入する。
第3款 役務の提供に係る収益|国税庁
(建設工事等の引渡しの日の判定)
2-1-21の8 2-1-21の7本文の場合において、請負契約の内容が建設工事等を行うことを目的とするものであるときは、その建設工事等の引渡しの日がいつであるかについては、例えば作業を結了した日、相手方の受入場所へ搬入した日、相手方が検収を完了した日、相手方において使用収益ができることとなった日等当該建設工事等の種類及び性質、契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとする。(平30年課法2-8「二」により追加)
第3款 役務の提供に係る収益|国税庁
技術サービスの提供
主に受託系の話になりますが、設計や技術指導などの技術サービスの提供を行う場合、原則的には「それらのサービス提供が完了した日」の属する事業年度で益金算入します。
また、ITエンジニアの単価×稼働日数などで報酬が計算されるようなケースで、一定期間ごとにその金額を確定させて支払を受けるような場合は、その確定する都度、確定した金額を「その確定した日」の属する事業年度で益金算入することも。
(技術役務の提供に係る収益の計上の単位)
2-1-1の5 設計、作業の指揮監督、技術指導その他の技術役務の提供について次に掲げるような事実がある場合には、2-1-1にかかわらず、次の期間又は作業に係る部分に区分した単位ごとにその収益の額を計上する。(平30年課法2-8「二」により追加)
(1) 報酬の額が現地に派遣する技術者等の数及び滞在期間の日数等により算定され、かつ、一定の期間ごとにその金額を確定させて支払を受けることとなっている場合
(2) 例えば基本設計に係る報酬の額と部分設計に係る報酬の額が区分されている場合のように、報酬の額が作業の段階ごとに区分され、かつ、それぞれの段階の作業が完了する都度その金額を確定させて支払を受けることとなっている場合
第1款 資産の販売等に係る収益計上に関する通則|国税庁
(技術役務の提供に係る報酬の帰属の時期)
2-1-21の10 設計、作業の指揮監督、技術指導その他の技術役務の提供を行ったことにより受ける報酬の額は、その履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに該当する場合(2-1-21の7本文の取扱いを適用する場合を除く。)を除き、原則としてその約した役務の全部の提供を完了した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、2-1-1の5の取扱いを適用する場合には、その支払を受けるべき報酬の額が確定する都度その確定した金額をその確定した日の属する事業年度の益金の額に算入する。ただし、その支払を受けることが確定した金額のうち役務の全部の提供が完了する日まで又は1年を超える相当の期間が経過する日まで支払を受けることができないこととされている部分の金額については、その完了する日とその支払を受ける日とのいずれか早い日までその報酬の額を益金の額に算入することを見合わせることができる。(平30年課法2-8「二」により追加)
第3款 役務の提供に係る収益|国税庁
IT業における原価
IT業は無形の商品(=技術力)を扱う業界なので、仕入れもなく原価も生じないと思われがちですが、外部のエンジニアへの外注費は原価に該当するケースが多いです。
「原価かどうか」は事業者本人にしか分からないことなので、必ず自社で管理しましょう。
原価の管理をしていない場合、外注費の損金計上(経費計上)時期を誤ることになり、ペナルティの対象となりますので重要度が高いテーマです。
- 原価管理ができていない場合ペナルティの対象となる可能性が高い。
自社開発系IT業におけるソフトウェア計上
会計上のソフトウェアと税務上のソフトウェア
会計と税務
ひとことで「ソフトウェア」といっても会計上の話と税務上の話とで異なります。重複する部分もありますが基本的には別物ととらえましょう。
特に起業したての方に多い誤解ですが、「会計上のルール」と「税務上のルール」は別物です。混同してしまうとどこかで何らかの地雷を踏むことになるので注意しましょう。顧問税理士がいれば特段心配は不要です。
会計上のソフトウェア
| 内容 | 種類 | 具体例 |
|---|---|---|
| 契約等に基づき、第三者に対してサービスを提供する際に利用するソフトウェアを外部から購入又は自社で制作 | 自社利用のソフトウェア (収益獲得目的) | クラウド会計ソフトベンダーが提供するクラウド会計 |
| 社内において業務を効果的・効率的に遂行するために利用されるソフトウェアを外部から購入又は自社で制作 | 自社利用のソフトウェア (費用削減目的) | 社内で使用する給与計算ソフト |
| 製品マスターを制作し、これを複写したものを不特定多数のユーザー向けに販売又はライセンス販売する取引 | 市場販売目的のソフトウェア | アップルストアで販売している自作アプリ |
| 特定のユーザーに対してソフトウェアとしての一定の機能を有する成果物が給付の対象となるような取引 | 受注制作のソフトウェア | SIerが開発を請け負う業務システム |
税務上のソフトウェア
税法上は明確に定義が見当たりません。一般的には会計上の考え方に依拠するものと考えられます。
税法上の無形固定資産として償却
減価償却
税務上、ソフトウェアは無形固定資産(減価償却をおこなう資産のひとつ)に該当します。利用目的に応じて耐用年数(償却=費用化してゆく期間)が異なります。
| 利用目的 | 耐用年数 |
|---|---|
| 複写して販売するための原本 | 3年 |
| 研究開発用のもの | 3年 |
| 上記以外のその他のもの | 5年 |
中古の場合
車両などを中古取得した場合、耐用年数の算出のしかたが特殊です(「中古簡便法」と呼ばれます)。が、ソフトウェアのような無形固定資産(別表第三)の場合、中古簡便法は使用できません。
(一部省略)
二 次に掲げる資産(別表第一、別表第二、別表第五又は別表第六に掲げる減価償却資産であつて、前号の年数を見積もることが困難なものに限る。)の区分に応じそれぞれ次に定める年数(その年数が二年に満たないときは、これを二年とする。)
(一部省略)
減価償却資産の耐用年数等に関する省令第3条 より
税会不一致
「自社利用のソフトウェア」については税務と会計とで明確に異なる点があります。
| 将来の収益獲得or費用削減の確度 | 会計 | 税務 |
|---|---|---|
| 確実 | 資産計上 | 資産計上 |
| 不明 | 費用計上 | 資産計上 |
| 不確実 | 費用計上 | 費用計上 |
IT業の創業融資
日本政策金融公庫の国民生活事業
起業する方が融資を申し込む場合はまずは日本政策金融公庫の国民生活事業へ行くのが一般的です。
公庫は以下の3つの事業から成っていますが、『中小企業事業』は『中小』といっても規模がある程度大きい事業者を対象としているところです。初めての方は国民生活事業に行きましょう。
- 国民生活事業
- 中小企業事業
- 農林水産事業
創業計画書を作る
公庫HPでひな型が入手できますのでどのような項目があるのか必ず目を通し一度は自作してみてください。
普通に生活していれば創業計画書を作る機会などないので1次ドラフトは拙い内容になっても大丈夫です。それを専門家等にチェックしてもらいブラッシュアップしてゆけばOKです。
ソフトウェア開発業の記入サンプルもあります。
融資申し込みの際は創業計画書とは別で、計画内容を説明するための補強材料となりうる資料があればそれも提出できます。以下、具体例です。
- 開発したアプリのダウンロード実績の分かる資料
- 受託したorする見込みの案件リストをExcelなどでまとめたもの
- 顧客との業務委託契約書のコピー
経歴と数字は重点的に
創業融資は直近の決算書が存在しないという点において通常の融資申し込みと異なります。
そうなると融資する側が着目する主なポイントとしては、実績に基づいて数字作りがされているか、経営者本人はいままでどのような職歴を積み上げてきたのか(それが起業にリンクしているか)、といった項目になります。
そのためこの2つについては『語れる』内容にできるようにしましょう。
利率が有利になるかも
年齢によっては利率が有利になる場合もあります。
事業者としての立ち振る舞いを
起業するということはご自身が自営業(事業者)になる、つまり『BtoB』『BtoC』でいうところの『B』の方になるということです。当たり前ですが公庫の担当者との面談をドタキャンする、当日リスケする、面談に遅刻する、といった一般消費者(『C』)であるからこそ黙認されるような行動をとることは論外です。まだ事業者としての自覚が芽生えていない方は要注意。
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まとめ
身も蓋もないですが、結局のところ実際の個々の状況を精査・分析しなければなりません。
国税庁HPなどに状況別に個別具体的な進め方の正解が一覧で掲載されているなどはありません。税理士と一緒に個別具体的な状況を整理し、丁寧に進め方を検証してゆく必要があります。
ご自身の会計や税務について、「自分の場合はどのように進めるべき?」とお悩みの方は、まずは弊所サービス内容をご確認いただき、無料WEB面談をご予約下さいませ。
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