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税理士が「税理士がいた方が良い理由」を語るとポジショントークになってしまいますが、我流で進めて帳簿がカオス状態になってゆき結局あとで修正申告が必要になりペナルティと追加税理士報酬が発生した、といったことになるリスクがあります。本コラムでは税務顧問が必要な理由を解説しています。
本コラムの対象者
- 税務顧問業務の内容がいまいち分からないという方
- 税務顧問サービス=記帳代行+確定申告 と理解されている方
- クラウド会計を始めて導入する予定の方
- ご自身で記帳している方 or するつもりの方
- マネーフォワードクラウドユーザーの方
- ITに抵抗が無い方
クラウド会計を使うと…
2工程ある
右側の枠がクラウド会計のシステム内だとイメージしてください。
要点としては以下の2ステップに分かれているという点です。
①取込み・インポート
②記帳
クラウド会計を使いこなせば①については自動化されます。が、②において専門知識を用いたチェックが必要になります。
「①が完了した状態」=「記帳完了」ではなく、「①②が完了した状態」=「記帳完了」です。
自動仕訳機能
クラウド会計には自動仕訳機能というものがあり、ソフトに対して正しく指示(設定)を出していれば自動で仕訳が計上されます。
つまり②もある程度は自動化できるということです。
ただ、この指示(設定)は定期的にメンテナンスをする必要があり、誤ったままの状態だと誤った仕訳が自動で量産されてしまいます。
『会計』と『税務』
「事実関係の整理」は、誰とどういう取引条件で、いくらで何をやり取りしたのか、などの情報を、根拠となる証拠資料に基づいて整理することです。
「税務」と聞くと「確定申告書の作成」(いちばん右)を真っ先にイメージする方が多いのではないでしょうか。
実際には税務に関する検討は、真ん中の「仕訳の計上」の時点で同時におこなう場合がほとんどです。
つまり、日々の会計処理を作る際に会計目線だけでなく税務の目線でチェックしなければ思わぬ落とし穴にはまるかもしれません。これが税務顧問が必要な理由の1つです。
この「税務の目線」がどのようなことを指しているのか、以下で例を挙げます。
事例1
前提
ビルの管理会社が、共益費を毎月定額で各テナントから受領しており、そのお金を使ってそのビルの水光熱費や清掃代などを支払うとします。
会計
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
普通預金 | – | 550,000 | 預り金 | – | 550,000 |
税務の視点を一切無視するのであれば、テナントからお金を受け取ったときこのような仕訳でも良いかもしれません。
水光熱費などを支払うときは以下のようにします。
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
預り金 | – | 440,000 | 普通預金 | – | 440,000 |
税務
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
普通預金 | – | 550,000 | 賃料収入(共益費) | 課税10% | 550,000 |
しかし、消費税法上はこれは課税売上です。そのため上記のようにしなければなりません。
「これは消費税法上は課税売上だな」と気付けるかどうか、です。単に記帳ができるだけでは税務の視点が欠けている決算書(会計書類)ができてしまいます。
その決算書に基づいて確定申告書作成をすると、誤った前提からは誤った結論しか出てこないため、申告自体も間違うこととなります。
事例2
前提
主要な取引先を接待したとします。
会計
借方科目 | 消費税 | 借方金額 | 貸方科目 | 消費税 | 貸方金額 |
接待交際費 | 課税10% | 220,000 | 未払金 | – | 220,000 |
接待したときにお店などから受け取った領収書や予約表などの証拠資料と突合し、たしかに存在した取引であることが確認できれば上記の仕訳で問題ないでしょう。
税務
会計処理自体はそのままでOKですが、税務の目線からはたとえば以下のようなチェックが必要です。
そしてチェック結果を数か月後の確定申告に備えて管理しておく必要があります。顧問税理士もおらず期中から自社で管理ができていない場合、申告業務を依頼する税理士から追加質問が来ますが、過去の取引に遡って確認してゆくという無駄な作業が生じることになります。
- 法人税法上の『飲食費』(辞書的な意味ではなく)に該当するか?
- 法人税法上の『交際費等』(辞書的な意味ではなく)に該当するか?
- 法人税法上の『接待飲食費』(辞書的な意味ではなく)に該当するか?
- 参加者1人当たりの支出額はいくらか?
事例3
以下のコラムで紹介しているケースも会計(簿記)の知識だけでは仕訳を作ることができない例です。
税務目線が無い場合、単に「雑収入」に計上して終わり、としてしまうリスクがあります。
事例4
こちらも消費税法を理解していなければ会計処理が作れない例です。
税務の視点(どのような取引が税法上の「対価の返還等」に該当するのか)が無ければ誤った会計処理を計上してしまうリスクがあります。
事例5
最近は様々な業種で業務委託導入が流行っていますが、これも導入時に税務上の論点を洗い出しておかなければ誤った認識のまま誤った会計処理を量産し続けることとなってしまい、数年後にそのツケが回ってくるリスクがあります。
事例6
事業で使用する資産を売却したりなど、数年に1回はあると思いますが、そのような場合も税務会計目線がなければ誤った仕訳を会計ソフトに登録するリスクがあります。
会計ができているだけではNG
本コラムで伝えたかったことは、ご自身では「記帳ができている」「同じ取引しか出てこないから会計処理を作るのも簡単」と思っていても、実際には税務の視点では誤った会計処理を計上してしまっている、という危険があるという点です。
誤った会計処理が量産されてゆき帳簿がカオス状態になってしまうと、「マイナスに陥っている状態をゼロ地点に戻す」という膨大な工数が生じるため、そもそもそれを受任する税理士が見つからないという事態になる可能性もあります。
普段からこのように、税務の目線で会計処理を作る(一般的に『税務会計』と呼ばれます)ためのアドバイスをもらえるのが税務顧問というものの役割の1つです。
参考元情報
テナントから領収するビルの共益費|国税庁 (nta.go.jp)
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